オレこと黒崎ゆうたがフィオナを前にして思ったこと。
失礼ながら…第一印象はあやかと同じものだった。
…痛々しかった。
美人なのに。
そうそう目にすることのできない、おそらく一生の中で見れるか見れないかというくらいに美人なのに。
…いや、とんでもない美人だからこそ、だろうな。
頭から角を、背中からは蝙蝠のような翼を、お尻からは尻尾を生やしている。
髪の毛は見たこともない、穢れのない真新しい雪のような白さだ。
そして瞳が赤い。
人が体に流している血のような、宝石であるルビーのような。
濁らず澱まない、透き通った綺麗な赤。
で、あの前面を大きく肌蹴ている服を着ている姿はどうみても…その…。
痴女じゃね…?だった。
でも、どうしてだろうか。
オレはその姿を初めて見たとは思えなかった。
そんな人物に会うことはなかったはずなのに。
リリムという存在を目にしたのも初めてなのに。
でも。
―フィオナという存在は知っていた、とでもいうかのように。
「へぇ〜…これはいったいどういうことなのゆうた。」
帰って早々我が麗しの暴君、絶対服従の存在である双子の姉。
黒崎あやかになぜだか顔面を鷲掴みにされていた。
細い指がこめかみに食い込んでいて…地味に痛い。
ちょっと何でこんなにピンポイントに痛いところを攻めてくるのだろう…あちょっとまった爪を立てるな爪は痛い!
あやかが怒っている原因。
それはオレがフィオナを連れてきたことだった。
今フィオナはオレの後ろで困ったようにおどおどしている。
そりゃそうだろう。
フィオナの目の前、帰って早々玄関でオレは実の双子の姉にアイアンクローを食らっているのだから。
しかもあやかの姿。
真ん中にウサギの絵が描かれているTシャツを着ている。
ちなみに下にははいていない。
そのまま、下着だ。
いくら夏だからってその格好はないと思う。
でもそれを咎めたところでこいつはやめないだろう。
いつものことなんだから。
それでよくお母さんと喧嘩するんだから。
それなのにこいつもてるんだよなぁ。
男女問わずクラスで、いやクラス外でも人気だし。
まるで皆を引き寄せる魅力でもあるみたいに。
世の中ってのはわからないもんだ。
なんて考えてる状況じゃなかった。
あまりにもラフな姿で弟の顔を鷲掴みにしている光景。
これがフィオナの今目にしている光景。
これを見て困らずにいられるのはうちの家族くらいだろうな。
「あのね、ゆうた。あたしがわざわざ自転車から降りて一人で帰ってきた意味、わかるの?」
「…それは。」
わかっている。
勿論、予想はできるしそれが正解だと思う。
だってオレはあやかの双子の弟。
今まで18年間共に生きてきた自身の片割れのような存在なのだから。
それこそ唯一無二というほどの。
…二卵性の双子だけど。
こいつのことだ。
自分から自転車を降りるなんて事は本当ならしたくはなかった。
それでもした理由。
楽な移動手段を失ってまでしたかったこと。
それはおそらく―フィオナのこと。
どうせ「そんな変な女はどっか遠くに捨ててきなさい!」と言いたかったのだろう。
そして関わりを持たずに終わらせたかったのだろう。
あの出会いを。
ただの他人として終わらせたかったのだろう。
昔からそうだ。
あやかはそういったものを嫌っている。
そういう変わったものを。
…たまには気に入ったり、特に関心を持たないようなものもあったが。
これは明らかに嫌っているときの態度。
―まるで、人には見えなかったあの女性を相手にしたときのような。
―まるで、血をすすらなければ生きていけない彼女を前にしたような。
―まるで、師匠と対峙しているかのような。
「何でよりによって連れて来てんの?」
「…仕方なかっただろ?フィオナ、行くあてがないんだからさ。」
「行くあてがないならそのままにしておけばいいでしょ?どうせどっかそこらへんにいる男を頼ってホテルにでも泊まったでしょうに!」
「馬鹿、あいつがホテルに泊まるとなるとオレも泊まることになるんだよ。」
「何で!?」
長くオレの顔を掴んでいた手を引っぺがしあやかは仕方ないとため息をついた。
本当に嫌そうな顔で。
明らかにフィオナを嫌っている様子で。
「今更追い出すわけにもいかないか。わかったよ。家に上げれば?」
「助かる。」
っていうか、なんでオレはコイツに許可を取ってるんだろう。
「フィオナ、上がっていいってよ。」
「それじゃあ…お邪魔します…。」
そう言ってフィオナは遠慮がちに家に上がる。
そのままオレのとなりに並んだ。
それを見たあやかは…。
「…。」
片眉がひくついた。
一瞬だけだったが。
あれは…そうとう来てるときの顔だったな。
ああ、そうですか、ああはいそうですか、ああ、あ〜あああそうなんですかぁ、な顔だったな。
そこ
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