とても広い空間。
入れる人数は百なんて楽に越えるくらいの広さ。
床も壁も天井もこれといった装飾のない無機質な部屋。
窓も数個しかついておらず外からは何をやっているのかわからないようにしている。
まるで隠れやすいように。
隠し事をしやすいように。
そんな空間でそんな部屋の一番前。
そこにはこの空間にいるものの注目を集めるために作られたような舞台があった。
この空間の後ろまで見渡せるようなもので。
この空間で一番目立てる場所にあった。
そして、そこの上。
この空間に比べればそりゃ狭いが…でもそれなりには広い舞台の上。
そこにオレは立っていた。
フィオナとエリヴィラ二人による求愛を何とか昼までに応え切ったオレがいた。
「はいっ、ワンツー、スリーフォー、ファイブシックス、セブンエイトっ!」
リズムを取るように手を叩いて。
それにあわせて声を出して。
まるで何かを教える先生のような姿。
それは、あながち間違っちゃいない表現かもしれない。
なぜならオレは先生のように教えているから。
ただし、それは―
「はい、そこでターン!下見るなよー!」
―ダンス。
踊って舞ってのダンシングである。
こんな世界にもダンスという概念はあるのだと感心させられた。
あっても舞とか舞踊、ダンスとはまた違ったものだと思ってた。
しかし意外とあるもんなんだな。
回ったり、ステップ踏んだり。
オレのいた世界に似ているダンス。
別々の世界といえ行き着く先は同じなのかもしれない。
魔法なんてものがあり、魔物なんてものがいても考えは似たものなのかもしれない。
そして、そのダンスを考案したのが舞台の下で踊る集団の中にいる女の子。
外見はオレよりもずっと年というくらいの姿…なのだが。
頭から角を生やした茶髪の女の子。
ヤギみたいな角である。
さらに言うと着ている服がおかしい。
ただの布を纏っているといっても過言じゃないだろう。
あまりにも露出の多い姿である。
手足にいたってはモフモフしている毛に覆われているし。
さらにその手に握っているのは鎌。
人が振り回すにも大きすぎて危険な大きさのものを軽々とまわしているのである。
そんな女の子がこのダンスの発案者で考案者。
バフォメットのヘレナ・ファーガスである。
別の言い方をすれば…なんというか…言いにくいのだが…。
オレの妻である。
フィオナ、エリヴィラと続いての、三人目の妻である。
そんな愛おしい妻が踊っている。
『ダンシング・サバト』
ヘレナいわくここ最近へレナが先導している『サバト』の入信者が減っているそうだ。
だからこれで入信者をこれ以上減らさないために、また更なる入信者を誘惑…じゃなくて勧誘するんだそうだ。
小さく幼く可愛らしい、サバトの魅力を見せ付けるそうだ。
彼女の後ろで共に踊ってくれる魔女達と共に。
魔女。
これがまたとんでもない姿。
別にヘレナ同様に露出の多い姿をしてるというわけではない。
いや、似ているところもある。
…その、幼い姿だ。
ヘレナと同じで子供の姿。
それがこの場で踊っている。
大勢で、お尻を振ったりしている。
ヘレナに合わせて、ヘレナと同じように。
この光景オレは舞台上から見ているのだが…。
いやぁ…なんといいますか…。
背徳的な光景だ。
悪いことはしていないのになぜか罪悪感を感るんだけど…。
そもそもサバトというのは幼き少女の魅力と背徳の素晴らしさを世の中に広める宗教らしい。
…危険だ。
それしか言い様がない…。
それでもそのサバトを全ているヘレナがオレの妻であるがゆえにオレはこうして駆り出されている。
愛する妻が困っているなら助けるのが夫の役目。
オレも向こうの世界にいたときにはダンスを少しばかり経験していたからそれなりには手伝えるし。
少しばかりの経験…といっても見ていただけだけど。
ついでに言うと双子の姉に嫌々付き合わされてしてたものだけど。
「はーい!そこまでー!」
オレは手を大きく叩いて皆に示す。
終わりの合図。
今日はもうこれくらいやれば十分だろうと思って手を叩いた。
皆の動きもだいぶ良くなってるし。
それにこれ以上すれば怪我に繋がりかねない。
「ユウタっ!どうじゃった?どうじゃった!?わしらのダンスは!?」
終わりの合図と共に駆け寄ってきたヘレナ。
それなりの高さのある舞台を軽々と飛んで、オレの足元へと来る。
目をきらきら輝かせて。
期待に満ち溢れた瞳をして。
手にはギラつく刃をした鎌を持ったままに。
危ないな…。
でもそれだけ自分達の踊っているダンスが気になるのだろう。
「良かったぞ。前と比べるとすごく上手くなってるし。」
「本当かのう!?」
「本当だって。」
そう言ってオレはヘレナの頭を撫でた。
角が生えているので少々撫でにくいところもあるので後ろのほうを撫でる。
フィオナにしてい
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