「ん…むっちゅ♪」
「んんっ。」
「あぁ…ずるいです、フィオナさんばかり。私もキスしたいのに…。」
そう残念そうな声を出したのはエリヴィラ。
身をよじりオレにすがり付いてくるもフィオナがいるのでできそうにない。
…仕方ないな。
オレは名残惜しげながらもフィオナから唇を離してエリヴィラに重ねる。
「んっ♪」
「ふぁ…ユウタぁ…。」
そうすれば今度はこっちで残念そうな声。
これだから二人同時はきついんだ。
嬉しいは嬉しいんだけど…オレは一人しかいないのに二人同時に求められちゃ対応のしようがないじゃないか。
そうは言っても今のオレは唇はエリヴィラと重ねているが手は空いている。
二本とも腕は自由に動かせる。
だからオレはその手を使ってフィオナを抱き寄せた。
「あっ♪」
ただし、そのまま抱きしめることは出来ない。
なぜならいまだにオレの体は拘束されている。
離れないようにエリヴィラの蛇の部分が巻きついている。
それはオレを逃がさない拘束であり。
他のものを寄せ付けない守りでもある。
「…エリヴィラ?」
それに気づいたフィオナがエリヴィラを呼んだ。
しかしエリヴィラ、無視。
「ん、ちゅぴ…んんん♪」
「んんっ!」
フィオナの言葉なんて届いていないようにキスを堪能する。
フィオナのような激しさはない、優しいキス。
こちらが舌を絡めればそれに応じてくれて。
少し離して距離を置いて、また触れ合わせる。
深くはない、でも濃厚に。
激しくはない、それでも濃密に。
触れ合い、重ね、啜っては舐めあう。
エリヴィラらしい優しい口付け。
思わずオレもフィオナのことを忘れてキスを味わいたくなるほど。
このまま続けていたいと思うくらいに。
このまま甘く溶け合いたいと思うくらいに。
しかし、それを良しとしてくれるほどフィオナは我慢強くはなかった。
「ぶ〜!!」
あぁ…膨れてる。
オレの隣で膨れちゃってるよ。
まったく、子供っぽいなぁ。
そのうちいじけ出しそうな気もするんだけど。
しかしフィオナは膨れるのをやめた。
どうしたのだろう。
キスをしながら少しばかり顔を傾けて彼女の様子を伺おうとするのだが…。
「ふ、むぅ♪」
「むっ!!」
頬を手で挟まれて顔を動かすことが出来なくなった。
どうやらエリヴィラ、キスをしている最中に他に気をとられることが許せないようだ。
その気持ちはよくわかる。
でもエリヴィラ、力強い…。
意外と強い。
地味に痛いよ?
なんてことを思っていたら―
「―んんっ!?」
首筋に何か感じた。
ぬるりとした感覚を。
その感覚をオレは良く知っている。
オレから見て右首筋。
そこはある女性がよく噛んでくるところ。
血を吸うためにオレに噛み付いてくるところ。
それはヴァンパイアのクレマンティーヌ。
オレの妻の一人である。
彼女によく血を吸われながら時折舐められるのだが、それと同じ感覚だった。
首筋を血管に沿って舐められるあの感覚。
命を繋ぐ血の通り道を舐められるあの感触。
まるで命を舐められるような。
オレの存在を愛撫するような。
しかし、それをしているのはクレマンティーヌでない。
フィオナだ。
「む〜、むむ〜♪」
やわやわと甘噛みされる。
しかしその一方でたっぷりと溜めた唾液を舌の上にのせて肌に塗りつけられる。
擦り付けるように。
染み付けるように。
自分の証を残そうとするかのように。
それで終わってくれるわけもなかった。
フィオナはそこからするりと手を侵入させる。
先ほどエリヴィラがボタンを外していたからそれは容易に滑り込んできた。
するりと。
オレの胸を撫でていく。
「っ!」
ぞくりとした。
ただ肌に手が触れ、撫でられただけで。
「んちゅ、ふふ♪ユウタの体って硬くて…男らしくて、惚れ惚れする♪」
何度も見ているくせに。
何度も触れているくせに。
何度こうやって囁かれたかももうわからないのに。
それでも、やはり心躍る。
そう言ってくれる人なんていなかったし。
嬉しい。
思わずその言葉に応えたくなるくらいに。
「ふふ♪下のほうも―はぁっ♪」
いきなりフィオナの声の調子が変わった。
まるで快楽に蕩けたような声に。
「は、ぁっあ♪ユウタ、そこは…ぁっ♪」
「んー。」
まだエリヴィラに唇を離してもらえないからしゃべることはできない。
キスすることも出来ない。
だからオレがせいぜい出来ることといえばこれくらいだ。
本当なら野外でこんなことはしない。
今だけ、今回だけ。
フィオナの服は後ろが長く今の状態を見たら何をしているのかわからないだろう。
せいぜい悶えて震えてることがわかるくらい。
その服をいつも着ているのだから野外でしようと正面以外から肌を隠せているのでオレの言ったことに反しちゃいない。
でもやっぱり野外は気が引ける。
気が引ける分、調子に乗りそうになって
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