親魔物国 港町 シアーズ
またの名前を 水の都。
海に面する町であり、道には特殊な水路が作られている所。
なんでもこの水路は海に住む魔物たちのために町長が作らせたとかなんだとか。
そのおかげでこの街には下半身が足ではないマーメイド種でも気軽に人と交流できる町だ。
中には港で陸であるこの町に住まう魔物もいるくらい。
水路の中には店の中にまで作られているのもある。
より多くの海に住まう魔物たちに利用して欲しいという想いと商売繁盛を願ったもの。
マスターの奥さんとその娘さんのためにうちにも作られている。
そう、うち。
オレこと黒崎ゆうたはこの水の都シアーズに住んでいた。
なんともふざけた話。
あの踏切で光に包まれてたどり着いたのは海。
右も左も前も後ろも下も、全てが海のところに落ちた。
あれはふざけんなって思ったね…。
初めてあんなところに放り出されてさすがに死を覚悟したところを、オレは助けられた。
今オレが住まわせてもらっているこの家のマスター、ディラン・マーフィーさんとその奥さん、クレメンスさんの娘さん。
マリ姉ことマリンさんに。
マーメイド。
この世界における魔物という存在で二人はマーメイドという魔物らしい。
あのファンタジーな物語に登場する美しい姿。
見とれそうなその美貌に聞き入ってしまうその美声。
その持ち主にオレは命を救われた。
御伽噺やファンタジーが目の前に現れて助けられて…本当に感動したな。
揺れる蒼い長髪、煌く鱗。
まるで夢のような存在。
そんな彼女に命を助けられたがオレには勿論行くあてなんかあるはずなく。
また、こんなファンタジーな世界で住まう方法なんて知るわけもなく。
助けられて早々途方に暮れた。
通貨は違うし、時代も違う。
こんな世界になんでオレは来ちゃったかな…。
しかし、そんな絶望の中、彼女達はオレに住む場所を与えてくれた。
ディランさんとクレメンスさん、それとマリンさんはこんなオレを助けてくれた。
本当に…嬉しかった。
いやぁ…こんなファンタジーな世界でも心優しい人はいるんだね…。
泣きかけたぞ…。
まぁそんなこんなでオレは今何とか生きている。
勿論ただの大飯喰らいとして生きてるわけじゃない。
ちゃんとうちの、この店の手伝いをさせてもらってる。
この店。
『カフェバー ネ―ヴェル・メーア』で。
こんな栄えた港町の片隅で。
少し静かで小洒落たお店で。
オレは何とか生きている。
お酒も扱うこのバーで。
オレはどうにか生きている。
いろんな人と魔物と触れ合い、出会うこの町で。
磯の香りがするこの町で。
ファンタジーなこの場所で。
オレは今日も生きていく…。
―港ルート これにてはじまり―
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