女王とあなたとオレと王 後編

「ゆうた、これ持ってよ。」

「ゆうた、これ作ってよ。」

「ゆうた、マッサージして。」

「だああああああああ!!何だよ何なんだよ!!何様のつもりなんだよ!」
オレは双子の姉に向かって叫んでいた。
「何さ何だよ!お前は何様!?王様かおい!!」
「…何さ急に喚きだして。」
それに対する双子の姉の対応。
思いっきり冷ややかというか…動じないというか…。
とにかく自由でオレよりも偉いという態度をとっていた。
「毎回オレに命令すんのやめろよ!オレはお前の従者か!?しもべか!?」
「…何を言い出すかと思えば…そんなことわかってんでしょ。」
そう言って凛としていった言葉はオレの記憶の中に残っている。
たぶん、一生オレの記憶に刻まれ続ける。

「下僕。」

その言葉を聞いてオレは思った。
コイツはとんでもない暴君だと…。
オレにしか振るわないその命令。
オレにしか下さないその規制。
徹底しているその行動が。
全てが暴君。
コイツダメだ…。
コイツが実際に王なんかになったらとんでもない暴政するぞ。
きっと国終わるぞ…。
オレが王になるならこんなダメな暴君にはなりたくはないな…。
そんなことを思いながらもオレは双子の姉の腕を取り、マッサージをしていた、とある日常の一コマ。

今日も早く帰って飯の用意しなきゃ…。
今日親は帰ってきたっけな?
帰ってこなかったっけ?あれ?姉ちゃんは大学行ったままだっけか?
それよか今日は…確か卵の特売日だから早く帰ってスーパー行って…。
いつものように今日することを考えながら目を覚ます。
そして気づく。
…あ、ここ家じゃないんだった。
背に感じるは玉座の感触。
水を玉座の形にして座っているかのような感覚。
そうか…オレは別世界に来たんだっけ。
…あいつ、大丈夫かな…?
そんな心配が違和感によってかき消される。
違和感。
体の自由が利かないと気づいた。
「…ん?」
腕を動かそうとしても腕が持ち上がらない。
足を動かそうとしても足が動かない。
玉座から立ち上がろうと腰を上げても上がらない。
まるで玉座に手足が絡めとられているかのように。
腰が粘着テープでくっついているかのように。
動くことができない。
見れば腕が、足が、埋まっていた。
青い玉座に埋まっていた。
よく見てはいなかったがこの玉座もスライムのようにゼリー質でできている。
だからこそこの上質な座り心地をだせているんだ。
だけど…そのゼリーの中になんでオレの手足が埋まってる?
寝ている間に沈んだように、オレの自由を奪うように埋められている。
…何で?
「起きられましたか?」
その声はオレの正面から聞こえた。
オレの目の前。
玉座に座るオレの正面に立っているヴェロニカ女王様。
あれ?ポーラさんが部屋まで運んでくれたんじゃなかったっけ?
あれ?なんでオレは玉座に座ったままなんだっけ?
確か…急に眠くなって…。
「えっと…ヴェロニカ女王様…体が玉座から離れないんですけども。」
そう言うと彼女は微笑みながらオレの隣へ座った。
さっきのように悠然と、それでいて優雅に腰掛けた。
そのままオレの肩に手を置く。
人間とは違うひんやりとした体温が学生服越しにも感じられた。
それは服越しだというのに熱くなっているオレの体温を奪っていく。
異常なほど心地よく。異質なほど気持ちよく。
「?ヴェロニカ…女王様?」
「ユウタ様…知っておられますか?」
彼女はオレの顔のすぐ隣い顔を持っていき、呟くように言う。
ねだるかのように。
甘えるかのように。
「洞窟内で…ポーラと話しましたでしょう?私達には…王となるべき者がいないと…。」
「っ。」
話した。
とても真剣な声で。
真面目にオレを王へ勧誘してきたあの話。
「先導者なき国に未来はない。王なき王国に栄光はない。王のいない私達の先などすでに見えているようなものです。ですから…。」
ヴェロニカ女王様はオレの耳に息を吹きかけるように近づき、甘えるように言葉を発した。

「私達の王となんて下さいまし。」

「っ!」
ぞくりと背筋が震える。
耳元で呟かれた言葉が体へ染み渡っていくかのように感じられた。
まずいと、オレの中の何かが告げる。
このままいけばオレはこのヴェロニカ女王様の望むままに王へされる…。
それはまずい。
こんなオレのような一般人が王になっても国の行く先が必ず繁栄とは限らない。
むしろ衰退するほうが大きいと思う。
無論、オレの人生においてもだ。
だからこそここで断らないといけない。
女王様のためにも、オレのためにも。
この女王様が統べる王国のためにも。
「オレは…王となるべき器じゃない。」
「それはあなたが判断するものではありません。外の者が判断していくこと。王とは優しく、国の行く末を考えられるようなお方がふさわしいのです。」
顔をオレ
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