「私がこの洞窟の奥深くに身を置いて…もう何年になるかはわかりません。それほどまでここに訪れてくれる人はいませんでした。」
「それでも何度かここの洞窟に訪れてくれる人はいたのです…が、その人はここへ来るまでの道のりの途中にいた魔物達と次々と契りを交わし、夫婦となっていくのです。」
「運よくその魔物達を乗り越えた人も中にはいました。しかしこの洞窟私がおもっている以上に厄介なものなのですよ。」
「来る途中に二手に分かれているところがあったでしょう?それも二回。」
「一番初めの分かれ道は、片方はここへと通じていますがもう片方にはあのバフォメットのすべる魔女達が集会を開く広場へと通じているのです。」
「そちらへ進んでしまった方は彼女達の虜となって二度とこの洞窟から、あの集会場から出てきません。」
「魔女達と仲良くにゃんにゃんして過ごしていることでしょう。腹立たしいですね。」
「二番目の別れ道。それの片方はここへ通じていますが、もう片方にはあのドラゴンの巣窟へと通じているのですよ。」
「そちらへ進んでしまった方は…残念ながら生きてはいません。皆、ドラゴンの餌食となってしまいました。」
「ここに住むドラゴンはそれは強く、伝説的でありとても獰猛…。だから滅多に人も寄り付きません。」
「そのせいか、この洞窟内へ足を踏み入れるものは数少ない。」
「それどころかこの最深部まで到達してきてくれる人はいない。」
「友達であるジャイアントアントの女王に作ってもらったこのダンジョンですが、なんなのでしょうね?」
「もはや一種の嫌がらせですよ。」
「ここまで誰も通さないくらいに難易度上げてくれなんて頼んでないのにこれですよ!」
「他の魔物娘達も勝手に住みついて。」
「そのおかげで何度期待を裏切られ訪問者を持っていかれたことか…。」
「…あの子とは仲良くやっていたはずなのですが…嫌われてでもいたのでしょうか?」
「だからこんな嫌がらせじみたダンジョンをプレゼントしてきたのでしょうか…今となってはわかりません。」
「ですが!」
「今の今まで待ち続けたかいというのがありました!」
「来る日も来る日も待ち続けた意味がありました!」
「一人淋しく眠り、幾度枕を濡らしたことか…!」
「それでも私はただ待ち続けるしかなかったのですが!」
「今日、この日!」
「あの難しすぎるダンジョンを全て乗り越えて来てくれた!」
「あなたという存在に、たった一人の選ばれた者に出会えたのですから!」
「待ちに待ったこの瞬間を!」
「心待ちにしていたこのときを!」
「ようやく迎えることができました!」
「だから!」
「私はあなたへこの言葉を送ります!」
「私の気持ち全てを乗せたこの言葉を!」
「私と!」
「子作りしてもらえませんでしょうか!?」
「遠慮します!」
オレこと黒崎ゆうたは目の前の女性に向かって大声で、ハッキリと、お断りの返事を返した。
まったくわけがわからないっ!
こんな薄暗い洞窟を抜けて、洞窟には不釣合いな豪華な扉を開けてきたと思えばここはいったいどこなんだ!?
この異常なほど広く豪華な生活感の溢れた部屋は何だよ?
目の前にいる奴は何だよ!?
見た目オレよりか年上、それも二十代中盤あたりの女性。
髪の毛はサラサラ。しかし目透き通るような綺麗な緑色。
染めて出るような色じゃない、自然な美しさ。
…でもなんか、その髪に混じって蛇がいる。それも二匹。
それに肌の色は……これ、人の色じゃない。
薄い青がかった肌の色をしている。
額には何かの紋様。
自身の肌から感じるピリピリとした空気。
その感じる空気は師匠に挑んだときに感じたことのある、絶対的な実力の差。
それがただ立っているだけで感じさせられる。
そして、一番目を引いたのは―
「…蛇、ですか?」
「ええ、蛇ですよ。」
下半身が蛇だった。
しかも先っぽ動いてるし。
…これはもうコスプレの類で済ませられないよな。
これにより目の前の女性に向かって言えること、それは―
―人外。
それ以外に言いようがない。
でも、あえて別の言い方が当てはまる。それすなわち―
―美女。
それもかなりの。
10人中10人が、いや100人中100人が口を揃えて美人というくらい。
それくらいに彼女は綺麗で美しかった。
普通ではない髪の色が魅力的で。
人とは違う肌が魅惑的で。
下半身が蛇だというのにそれが逆に彼女の美しさを引き立てる。
こんな美女に言い寄られれば頷くのが当たり前なんだろうけど。
…でもさ!
初対面で名前も知らない人にいきなりの告白だよ!?
ないだろ。ないわ!なさすぎる!!
「初対面で告白はどうかと思うんですけどね…?」
「恋や愛には時間など関係ありません!」
どーんと胸を
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