形容しがたい柔らかさとじっとり湿った感触に、染み込んでくる高い熱。絡められるのは粘質な液体であり、先で掬い上げては塗りつけるようにそれが蠢いた。ざらついた表面で磨くようにカリ首や裏筋を徹底的に擦りあげる。
「んっ……っ!」
「むっ…んん…」
誰もいない朝の教室に響く、押し殺した男の声とくぐもった女の声。日の差し込む部屋の壁際には一つとなった影があった。
腰から響く甘い快感にオレこと黒崎ゆうたは体を震わせ背中を預けた壁に爪を立てていた。硬質な表面を引っ掻くと鈍い痛みが走る。だがそれすら塗り替えてしまうほど叩き込まれる快感は強烈だった。
「ん…痛くない?」
「平気、だけど…っ」
「よかった」
短く言葉を返した彼女は再びオレのものへと口を付ける。躊躇いなんて一切なく、むしろ自分から求めるように積極的に。
薄紅色の唇をひっかけるように窄め、前後させる。口一杯に頬張っては舌を使って滅茶苦茶に擦りあげ、かと思えば労わるようにゆっくりと舐め上げる。
行為の緩急、突き刺す感触、叩き込まれる快感はどれも不規則。だからこそ飽きることなくオレはまた彼女の口の中で絶頂へと押し上げられていく。
下を見る。うちの学校指定の制服に身を包んだやや長身な女性。黒くサラサラな髪の毛は後ろで一つに縛り、理知的な眼鏡が特徴的。最近つけてきたヘアバンドの下には白いメッシュを一筋隠しているのをオレだけが知っている。鼻筋も通っているし肌も滑らか。ただし、牛乳瓶の底みたいな分厚い眼鏡のせいで瞳は見えず、感情なんて読み取ることはできそうにない。
それはこのクラス一、いや、学年トップの成績を誇る才女だった。
小鳥遊 小鞠
優等生、天才、才女、才媛、そんな言葉に相応しくテストは常に九十五点以上、学年順位はどの科目でも上位独占。全国模試をやれば上位十位以内に食い込むというまさしく天才という言葉にふさわしい女性だった。
それだけではない。陸上部所属の彼女は全国大会出場者。走ればそこらの運動部男子ですら牛蒡抜きする実力持ちときた。
まさしく文武両道。非の打ち所のない才女という存在だった。
だが神様というのは完璧を嫌うらしい。そんな非の打ちどころのない彼女も全てが全てこなせるわけではなかった。
というのも彼女は友人と呼べる同性はいない。さらには親しげに会話をする相手所か喋っているところすら見たことない。当然異性も近づきさえしない。
会話と言えば短い言葉や単語のみ。
はい。
いいえ。
無理。
明日。
帰る、等々。
一時期『一日三十文字以上喋ると死んでしまう呪い』でもかかっていると言われたほどの口数の少なさ。会話ではなくもはや応答で親しく話し込む姿なんてこの三年間見たこともない。部活をやっていたというのに話す後輩もいないらしいし、先輩もまたいない。
そんな天才が膝をついてオレのものへと口を付けている。弱みを握って強制しているわけではない。これは合意上でのことだった。
「ん、ん……我慢しないで」
「いや、できそうにもないんだけど…もう、そろそろ」
「わかった」
短い応答。普段通りに口数は少なく、どことなく行為に事務的な雰囲気すら漂ってくる。
だがそんな言葉とは裏腹に小鳥遊さんは激しく顔を前後し始めた。
唾液に塗れた肉棒が彼女の唇に擦られながら飲み込まれ、吐き出される。ちろちろと蠢く舌は敏感な裏筋やカリを執拗に擽って快感を弾きだす。
分厚い眼鏡越し故にその瞳は何を思っているのかわからない。だが頬は朱に染まり、どことなく嬉しそうに見えるのはやはり彼女がもう人ではないからだろうか。
訪れる絶頂の予感に体を離そうと小鳥遊さんの両肩を掴む。だがそれ以上の力で彼女はオレの腰に抱きついた。
「ちょっ…!」
「んっ…んんん……っ」
顔を押し付けさらに奥へと飲み込んでいく。舌に擦られ喉の奥まで収まった。うねった口内は先を強く刺激しきつく締め上げてくる。腰が砕けそうな快感を叩き込まれ咥えこまれた彼女の口内へと精液を吐き出す。舌ではなく、頬でもなく、一番奥へ流し込むように。
いや、喉の奥へと飲み込むように小鳥遊さんは顔を押し付け啜り上げる。同級生とは思えないほど積極的で、娼婦の如く淫らで、何よりも貪欲に。まるで今まで飲まず食わずでいたかのように、一心に。
「〜っ…っ!」
「んんんっ」
小鳥遊さんは口どころか回した腕すら離さない。むしろさらに飲み込もう力を込められ腰を強く抱きしめてくる。同級生とは思えない淫らな行為。精液を欲しがるその貪欲さにオレは抵抗できずに注ぎ込んだ。
「ん、ぷはっ…………ごちそうさま」
ようやく絶頂の波も引き、脈動も止まると彼女は腰から顔を離した。
冷淡で物静かな口調。それがいつものことだと知っているがやはりこんなこととは結びつかない。
口数の少ない小鳥遊さん
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