「ワン、ツー、スリー、フォー、ファイブ、シックス、セブン、エイトっ!って感じなんだけどどうだった?」
「どうだったじゃないだろ…。いきなり人を引っ張ってきやがって。これから空手の稽古なんだよ。」
「別にいいでしょ、あんなの。それよりもこっちは明日ダンスのテストなんだから。しっかり見てダメだししてよね!」
「…だめなとこ言えばいいのか?」
「そう。できる限り言って。今日中に直さないといけないから。」
「あー…じゃ、言うぞダメなとこ。」
「うん。」
「全部ダメだと思う。」
「…ふんっ!!」
「あだっ!!?何だよ!何すんだよ!こっちは親切心でダメだししたっていうのに!」
「あんたは人の気持ちがわかってない!そんなにストレートに言う奴がある!?」
「これも一種の優しさだろ。厳しさも時として優しさだ。」
「あんたの場合は別のとこに優しさをもってこい!」
「………………うぉ。」
起きた。
なんだか懐かしい夢を見てたな。
しかもよりによってダンスの夢。
「…起きるか。」
オレはそう呟いてゆっくりと体を起こそうとした、が。
「ふみゅぅ…。」
「…。」
ああ、そうだったな。
そういえばいたなコイツ。
オレは体を起こすのを止め、胸元に抱きついている女の子を見た。
ヘレナ・ファーガス
魔女達の集会サバトの頂点であり、魔物の中でも最高位に位置するバフォメットという女の子。
その女の子が今、オレの胸元で抱きついて眠っていた。
「…。」
実をいうとあれからオレはヘレナに世話になっていたりする。
とにかくこいつを泣かした責任を取ろうと思いこいつらのダンスをともに作っていくことは決めた。
決めたがその後が問題だった。
行く場所、住む場所なし。
勿論金もない。
この世界にとばされたことにより住居へ帰ることができなくなったオレにヘレナは提案した。
「だったらわしの部屋で暮らせばよかろう。」
「あん?よかろうって…いいのかよ。」
「安心せい。わしの部屋はかなり広いし客人一人もてなすには十分なくらいじゃ。」
「そーじゃなくて、お前がいいのかって。」
「いい。」
「…女の子が男を自分の部屋に通すときは警戒とかするもんだろ。」
「何でじゃ?あ!パンツでも盗むつもりか?」
「盗まねぇよ!興味もないし!」
「つまらんのう。年頃の男はそういうものに興味があるもんじゃないのか?」
「何で年下の女の子の下着に興味を示さないといけないんだよ…。」
「むぅ…つまらん。あ!そうじゃ!」
「ん?」
「ぬしがわしの部屋に暮らす上で一つ条件がある!」
「…どんな?」
「わし専用の抱き枕となれ!」
「…抱き枕?」
「うむ!われながらいい提案じゃ!これで今日から淋しく一人寝をせんですむし、トイレに一人で行かんでもすむ!」
「…まぁ、お前が良いなら良いけどよ。オレに潰されんなよ。」
「うむ!」
というわけである。
なので、オレは今現在へレナの抱き枕になっていた。
場所はあの洞窟の広間のさらに奥。
どうやらそこが居住空間になっていたらしく他の魔女っ子達も共に住んでいる。
意外と広い。
広すぎて、そして豪華すぎる居住空間だった。
「おい、ヘレナ。朝だぞ。」
とりあえずヘレナの体を揺らし、起こす。
さっさと朝飯にしたいんだよな。
ここで出される料理全部魔女っ子達が作ってくれるんだが意外と美味しい。
それがこの世界に来たオレにとっての密かな楽しみである。
それに皆よく接してしてくれるし。
「う〜…。あと五分。」
「五分も待たない。さっさと準備して飯食いに行くぞ。」
「う〜…やだ。」
「やだって…。」
ヘレナはオレの胸板に顔を擦りつけより強く抱きつく。
モフモフの手足で。
なんか…コアラみたい。
オレの今の服は上はワイシャツ、下は学生服。
なので胸板にヘレナの感触がダイレクトに伝わる。
例えば角の硬い感触とかも…あたた、地味に痛いし硬いなコレ。
「このまま連れてってくれ。」
「…またかよ。」
「いいじゃろう?」
「…仕方ねえな。」
オレはヘレナを抱きかかえると学ランを羽織った。
前のボタンを半分までとめ、着替えを終える。
その姿を部屋にあった等身大の鏡(ヘレナがダンスを考えるときに使用)で確認する。
「…。」
何だろう。
胸の空いている部分から茶色い角と頭が出ている。
なんか…カンガルーみたい。
そんなことを考えながらヘレナの部屋を出て、顔を洗いに洗面所へと向かった。
「あ、ユウタ様!おはようございます!」
「おう、おはよう!」
廊下の向こう側から歩いてきた魔女の子に挨拶する。
礼儀正しくていい子だなぁ。
どっかの角娘とは大違いだ。
「…また、ですか?」
魔女の子はオレの胸を見て言う。
そこには後頭部と角だけとび出た茶色の頭。
「そ、またなんだよ。」
「…いいなぁ。」
…何だその視線は?
思い切り羨
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