「…えいっ」
「おっと!」
家に帰ってすぐのこと。マレッサがオレへ抱きついてきた。
男性のいないこのエルフの里で彼女のように幼い子供は頼る存在が目上の女性しかいない。別にそれでも平気なんだろうが、同性ではなく異性に頼りたい部分もきっとあるんだろう。
幼いのならなおさらだ。
だからか、マレッサは基本的にオレの上にいたり、抱きついてきたりと甘えることが多かった。
「えへへ」
「…まったく仕方ないな」
抱きついてきた彼女を抱えて膝の上に載せるように椅子に座る。背を預けて可愛らしく笑うマレッサにオレも頬を緩ませた。
エルフとは言え外見や精神的に年下なんだしこれぐらいはいいだろう。今まで接することのできなかった存在が目の前にいるんだ、少し位甘えさせてもバチは当たらない。彼女の姉であるフォーリアに見つかれば大目玉を食らうだろうけど。
ぽんぽんと彼女の頭を撫でるとマレッサが学ランの裾を掴んでこちらへ体を向けてきた。対面座位みたいな体勢なのだが無邪気でまだまだ知らないことの多いマレッサにはよくわからないだろう。後後教えておくことが増えそうだ。
マレッサは学ランの裾をくいっと引っ張りまるで何かして欲しいと言わんばかりの表情で見つめてくる。
「ん?どうした?」
「えっとね、お願いがあるんだけど…」
「お願い?オレにできることならなんでもしてあげるよ」
「それじゃあね…」
ちょっぴり恥ずかしそうに顔を赤らめて彼女は言った。
「お風呂はまずいと思うんだよな…」
「えへへ」
なんて呟きながらも椅子に座るマレッサの頭を洗う手は止めない。
まさか頼まれたことが『お風呂に入ろう』だなんて驚きだ。
一度言ってしまった手前取り消すことはできないし、渋ったら渋ったでマレッサが涙目になったので仕方なくオレはここにいる。
マレッサは全裸。オレは下半身タオル一枚。
別にこれぐらいの年頃の少女になら劣情を催すわけもないので気にすることもない。
「いつもは一人で入るの?」
「ううん、いつもはお姉ちゃんが一緒に入ってくれるの」
「へぇ、それじゃあオレは別によかったんじゃ?」
「だってお姉ちゃんが頭洗うとすごく痛いから…」
「…それは……まぁ、仕方ない」
力加減なんて人それぞれ、いや、エルフそれぞれとでも言おうか。せっかく風呂に入って一日の疲れをリフレッシュというのに痛いことされちゃ嫌にもなるよな。
だからといってこんな出会ってまだ数日の男と共に風呂に入るのは危険だろうに。純粋すぎるのは無防備なのとたいして変わらない。
そんなことを考えているとマレッサが何かをしだした。
「…?」
「んしょ…うんしょ…っ」
髪を洗っているから背中を向けている状態であり、彼女が正面で何をしているのかよくわからない。身長的にこちらが高いので覗き込めるが…何をしているのだろうか。
「…」
オレの目が正しいものを見ているのならば。
オレの網膜が正しいものを映しているのならば。
マレッサは自分の胸を寄せていた。
年齢的に仕方ないにしても、膨らみもまだない胸を寄せて上げて、揉んでいる。
…何をしてんだこの子供。
「マレッサ?何してるんだ?」
「えっとね、こうすると胸が大きくなるんだって」
「…」
「お姉ちゃんが教えてくれたんだよ」
「…」
あ、ああー…あれか。いわゆる豊胸マッサージってやつか。
…どこの世界でもどこの種族でも、女性って胸を気にするんだな。
しかもマレッサに教えたのがあの厳しいエルフのフォーリアとは何とも可笑しくて思わず笑ってしまいそうになる。きっと族長ゆえに威厳ある性格だけでは足らず、それに見合った体にしたかったんだろうけど彼女が一人胸を寄せて豊胸マッサージしてるなんて想像しただけでも吹き出しそうだ。
だけど。
この少女、なんで今やってるんだ…。
オレが男だということをわかっているのか。
いや、男という存在にここまで近づくのは初めてなのかもしれない。それゆえ加減も何もわかっていないのかもしれない。
だけど、裸の少女が、オレよりもずっと年下の女の子が目の前で胸揉みだすって…男としてこれは……困るな。
「私も大きくなるかなぁ?」
「…なるんじゃ…ないの?」
…ある意味フォーリアよりも注意したほうがいい女性だな、マレッサは。
純粋無垢って時と場合によっては凶器。何を考えているかもわからないから何をされるか予想もつかない。
この少女、結構怖いかも……。
「ほら、お湯かけるぞ」
「わぁ!」
泡立った頭にシャワーで湯をかけ流していく。
現代とはまた違う仕組みで最初はシャワー一つも満足に動かせなかったがこの生活にもだいぶ慣れてきた。流石にレンジとかテレビなんてものはないし、このシャワーの原理もよくわからないが最低限生活に必需なものはあ
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