「ん……、朝か……」
宗一郎が目を覚ますともう窓の外は明るく、朝の日差しが部屋の中へ差し込んでいた。身を起こすと、昨晩のことが彼の脳裏によみがえる。そして自分がしてしまったことに、彼の胸はドクンと跳ね上がる。
――ええと、要するに、僕はフィオナに誘われて、それで、その……
「あああああ、もうぉぉぉ!」
彼女といる内に熱に浮かされたような気分になり、彼女に誘われるままに体を重ねる。もっと有り体に言ってしまうなら、セックスをした。
「何をやってるんだ、僕はぁぁ!」
昨晩の記憶が次々によみがえり、宗一郎はベッドの上で身もだえをする。ひとしきりじたばたと暴れ回り、ごろんごろんと転げ回って。どたっと言う擬音がぴったりと当てはまる、ベッドから床へのヘッドダイブをして、頭を押さえてしばし痛みをこらえる。
そこまでしたとき、宗一郎は肝心のフィオナが部屋の中にいないことに気がついた。
「あれ、フィオナ? フィオナー?」
何度か呼んでみるが、返事はない。
――まさか、夢を見てた?
宗一郎はそう思うが、それにしては彼女の体の感触が妙に生々しく体に残っている。と、部屋のドアが開くとフィオナがひょこりと顔を出した。
「ティム・アレーナ、ソウイチロ♪ ルゥ・マーマ・トルッタ!」
「マーマ?」
「イア!」
聞き返した宗一郎に、フィオナは笑顔でうなづく。
「はぁい、宗君! ただいま♪」
「か、母さん!?」
フィオナに続いて部屋に入った女性――宗一郎の母、和那に、彼は頓狂な声を上げる。
「久しぶりね、宗君♪ ちょっと見ない間に女の子を連れ込むなんて、積極的になったのねぇ♪」
「い、いや、違うんだよ。彼女は……」
「まあまあ、その話はリビングでゆっくりじっくり聞かせてもらうわ♪」
笑顔で、しかし有無を言わせぬ気配を感じさせる口調で和那は宣告する。宗一郎はがくりと肩を落とすと、楽しそうなフィオナに付き添われてリビングに向かった。
「ふぅん……。つまり彼女は空から飛んできてあなたに体当たりをした、と?」
「その、体当たりというか、そんな感じだったかな……」
宗一郎は和那にあまり目を合わさないようにしながら、質問に答える。興味深そうに彼女は聞いているものの、宗一郎にしてみれば後ろめたいどころのことではない。だからといって、もはやごまかす訳にもいかない。
――うう、ほんとにどうしよう……
「それで、宗君。あなたは言葉も通じないような女の子を家に連れ込んで、どうするつもりだったのかな?」
「連れ込むって……」
そんな言い方は、と言いかけてそんなことを言えるようなことではないと宗一郎は思い、口をつぐむ。和那の目は、そのまま黙っていることを許しはしないと彼に告げている。
「……せめて、夕ご飯を食べさせて、一晩泊めるくらいのことはしたかったんだ。それだけだよ」
「その後は、どうするつもりだったの? まさか、言葉も通じないような女の子を後は勝手にしろって放り出す気だったんじゃないでしょうね?」
「それは……!」
言いかけて、彼はふと思う。もし、フィオナを数日ここに留め置いたとて、自分はそのまま彼女を養うことができただろうかと。そもそも、宗一郎の生活費とて両親からの仕送りに頼っている状況だ。そこに一人増えれば、それだけ予算がかかるということ。
「宗一郎。お母さんたちはいつも言っているわね? 私たちが留守の間に何かあったら、きちんと相談しなさいって」
和那はじっと宗一郎を見つめる。
「これは、すぐに相談するべきことだったよ?」
「……ごめんなさい。考えが、足りませんでした」
宗一郎が謝ると、和那は表情を和らげる。
「ん、わかればよろしい。ごめんね、フィオナちゃん。彼を叱るところを見せちゃって」
宗一郎の横で居心地が悪そうにしていたフィオナにも、和那は笑顔を向ける。
「ネアラルカ。ヴィア・イムル・ネアディザダ・ソウイチロ。イ・オルシュ・コルーダ・バル!」
「あら、宗一郎は良かれと思ってしたんだから、フィオナちゃんが謝る必要なんてないわ」
「ヴィア……」
顔を曇らせるフィオナに、和那は「大丈夫」と微笑む。それを見て、宗一郎はふと疑問を抱いた。
「ねえ母さん。お互いに言ってること、わかるの? フィオナの話してる言葉って、聞いたこともない言葉だと思うんだけど……」
尋ねた宗一郎に、和那は「そうね」と頷く。
「確かに、フィオナちゃんが話してるのはこの世界の言葉じゃないわ。でもね、私達はお互いに話してることがきちんとわかるの」
宗一郎は、ぐいと身を乗り出す。
「それはどうして? まず、この世界の言葉じゃないってどういうこと? そりゃ、フィオナは見た目からして人間とは違うけど、それも関係があるの?」
「そう。フィオナちゃんは私たちが暮らすこの世界とは別に、並
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