「いやだ!!!」
バーバの話を聞いたナッツはその大きな瞳に涙を浮かべながら、普段聞いたことがないような大声を上げた。
「おにいちゃんが、どこかにいっちゃうなんてイヤだ!おにいちゃんはわたしとおかあさんと3人でこの家でくらすの!」
そして飛びつくようにゴウマの腕に抱きついて、涙を浮かべながらナッツは血を吐くような勢いで声を張り上げた。
愛する人を守ろうと必死だった。
「やかましいですね。この穢らわしい牛が、、、」
ギロリッ
#8252;
「ひっ!!」
ビクッ
#8252;
「!!」
ナッツの叫び声を聞いてバーバはその目を変えた。
まるで機械のような全てを何とも思わない冷血な瞳から、すべての生物をただただ黙らせる赤くて恐ろしい瞳に変えた。
その恐ろしい目にゴウマもナッツも思わず声を失ってしまう。あまりの迫力に時間を凍らされてしまった様に固まってしまった。
「スタルフォー家の一族は私たち人間にとっては必要不可欠な高貴な血筋の人間なのです。本来ならば貴様らのような穢らわしい牛の魔物娘など一緒にいることすら烏滸がましいのです。
それにこんなボロ小屋で一生を過ごすのと貴族としての華やかな生活、どちらが幸せかなど明らかではありませんか。
お嬢ちゃんが本気でゴウマ様の幸せを考えるんでしたら笑顔でゴウマ様を送り出してあげること。それ以外の選択はありえません。」
「うぅ、、、」
その言葉を聞いたナッツは力を失い、抱き付いていたゴウマの腕からまるですがりつきようにゆっくりと崩れるように落ちてしまう。
そして床を向いてついに大粒の涙を落としてしまっていた。
「ふん、そうだな、、、」
「おにいちゃん!?」
ただただバーバの話を黙って聞いていたゴウマはついに動き出し、ゆっくりとクローゼットに向かって歩き出した。
そしてそのままクローゼットを開け、ごそごそとものを探し出した。
「うぅっ、、、ゴウマっ!!」
「ここでの生活と、貴族の華やかな生活、どっちが幸せかなんて明白じゃないか。」
変わらず廊下に伏しているデックの声を聞いて、ゴウマはボールのようなものを二つとりだした。
そしてそのひとつを、、、
バッフゥゥゥン
#8252;
「きゃあ!!ああああああああ!!くっ、、、こ、これは!?臭い玉!?」
「うぇぇ!くっさい!」
「ぐっ、、、ううう!、うっ!」
バーバに向かって投げつけた。
バーバは投げつけられた臭い玉を作り物の犬の腕で払おうとしたが、その瞬間に臭い玉が爆発し結果的に近距離での爆発を許してしまった。
目に涙を浮かべ、口を押さえながら後方に跳んで距離をとった。
ついでにナッツと動けないバーバも吐き気を起こしながら、のた打ち回り口を押さえつけた。
「バーバさん、これが僕の答えだ。
貴族になんて戻らないでこのまま僕の愛しい家族とここで生活する。それが僕の答えだ!
このまま母さんとナッツと暮らすこと!それこそが僕の一番の何にも変えられない幸せだ!」
「、、、ちっ」
バーバは舌打ちをひとつすると、驚いていた顔から鋭い仕事人への顔へと表情を変えた。そして作り物の爪から何か液状の物を染み出させた。
爪から染み出た黄色い液体は部屋の床に落ち、まるで暗黒のようなどす黒いシミを作った。
(母さんを襲った神経毒か、、、)
「ある程度の予想はしておりました。まあこうなってしまっては仕方ありませんね。無理矢理でも連れて行きます。貴方の血筋は決して絶やしてはならないのです。」
「無理矢理!?」
「まぁ、そう来ると思ったよ、、、これだから貴族ってのはイヤなんだ、、、ふん!!!」
ポイッ
#8252;
バッフゥゥゥンッ
#8252;
ゴウマは取り出していたもうひとつの臭い玉を廊下の窓から外に向かって投げ捨てた。
地面にあたった臭い玉はそのまま外で爆発した。
「?、、、いったい何を?」
「バーバさん、今外に向かって投げたのは、魔物娘を怯ませる激臭タイプの臭い玉じゃない。その逆の魔物娘を惹き付ける芳香タイプの臭い玉だ。
もう間もなくしたら、この街に残ってる魔物娘たちがこの臭いに引き寄せられてここに集まって来るぞ。」
「、、、くっ!?」
「、、、なあ、大量の魔物娘が集まってくる、そんな中で抵抗する僕を連れて無事に帰れるかな?、、、バーバさんだけで早く逃げた方がいいんじゃないかな?
それでも僕のことを連れて帰るっていうんなら、、、僕も腹をくくってあなたと闘う!!!」
「、、、、、、」
4人の間に静かな沈黙が流れた。
そして、、、
「、、、本日はこれにて失礼します!」
そう言い残すとバーバは窓から跳び出して、ものすごい速さで兵士寮から
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