わかめちゃん前編

俺はとある街に駐屯する兵士だった。

それなりに大きな街だが、特に名産品もない。世界的に有名な人もいない。

そんな平凡で地味だが、だからこそどこにでもあるような静かで平和な街だった。

そんな平和な街の兵士、仕事は忙しくない。むしろ暇だ。実践経験などほとんどなく、見張りと訓練に明け暮れる日々だった。

それゆえに、一部の市民からは「税金の無駄使い」「穀潰しの役立たず」等々の陰口を叩かれてはいた。


が、この俺「エヴァン」はそれで良いと思っていた。

そのような悪口が向けられるのはこの街が平和そのものだから、俺たちが動かなければならないような事件が起きないからだ。

そんな事件は無い方が良いに決まっている。

この街に危機が迫った時に、本当にヤバい事件が起こってしまった時に俺たちが動けば良い。

俺はそう思っていた。


そして数日前

そんなヤバい事件が起きた、この街に危機が迫って来ていた。

魔物娘の大群がこの街に襲ってきたのだ。

俺は思った。

「今こそ我々兵士が立ち上がるとき!この街の守人がこの街を守るときなのだ!」


しかし、俺の目の前に広がった光景に絶望した。


次々と戦いもせずに降伏していく兵士の仲間たち。

街を守るという兵士本来の使命を全く遂行する気の無い愚の骨頂と言うべき愚かな行為、そんなことを仲間の兵士がしているのだ。


「なぜだ、、、なぜだ!我々は兵士だ!この街を守るのが使命だ!!!
リンクリート!!!フアド!!!イーゴ!!!なぜだ!なぜ戦わない!!!」

俺の問いに対して仲間たちからは


「む、無理だ、、、魔物娘のあんな大群に、、、勝てるわけ無い、、、」


「そうそう!ムリムリ!諦め!とっとと降伏するぞ!」


「あの娘かわいい!犯されたい!セックスしたい!」


その戦わない意志を宣言されたとき、気がついてしまった。

俺たちは本当に役立たずだった事を

俺たちは本当に穀潰しだった事を

俺たちは本当に税金の無駄だった事を


それを理解してしまったとき

俺の頬から涙が零れ落ち

俺の手から剣が零れ落ちた


それからの事はよく覚えていない。

なんだか早々に魔物娘に捕まった気がする。

何だか凄く気持ち良かった気がする。

何度も何度も射精した気がする。

そんな時間がしばらく続いた気がする。








「、、、、、、、、!?」


どこだ?ここ?

なんだかよくわからない所で目が覚めた。

回りを見渡して見ると、、、何もない、本当に何もない部屋で寝ていたようだ。

窓から外を覗いてみると海が見える。カモメもくわーくわーと元気に鳴いている。

その窓から遠くを見てみると海の向こうに綺麗な砂浜が見える。

なんというか、こう、、、良い砂浜だ。グレートな砂浜だ。グレートな海だ。

どうやら俺は、船か何かにのって海上にいるようだ。


そしてもうひとつ、今の俺にはどうしても気になって仕方の無い事があった。

「、、、、、なんだ、この凄く良い匂い、、、」

どこからともなく凄く良い匂いがする。

なんというか、、、そう、美味しそうな匂いだ。

食欲を注がれるような、、、そんな匂いだ。


思えば、ずっと物を食べてない、、、、、気がする。

腹がペコペコだ。餓死しそうなくらい腹がすいている。


「はらへったな、、、、、!?」


改めて部屋を見渡して見ると、ベッドの近くに机がありその机の上にはパンとスープが用意されていた。

他にも水の入ったコップと桶、ハンドタオル等が置かれている。

近くにありすぎて逆に死角になっており、先程は気が付かなかった。


「、、、、、どういうことだ、、、なんでこんなところに?、、、あ、怪しいな、、、
でも腹へった、、、」


見た目はごく普通のバターロールパンとわかめとゴマのスープ、だが死にそうな程の空腹の俺には王宮の式典に出される最高級料理に見えてしまう。

目の前に大好きな餌があるのに、飼い主に「まて」を受けていて食べられない犬はこんな気分なんだろうか、、、


「、、、、、食べて良いのか、、、でも、少なくとも俺を殺す気は無いみたいだしな、、、」

思えばそうだ。

俺を殺す気でいるんなら食事を用意したり、ベッドに寝かせたりはしないだろう。

手錠と足枷をつけて牢屋にぶちこむはずだ。

それに魔物娘は年がら年中発情し、男を犯して精奴隷にするような種族だと聞いている。

だとすると、精奴隷にされるような事はあっても殺される可能性は薄いのではないか?


いや、、、そういった理由を抜きにしても兎に角腹が減っている。もう我慢の限界だ。


「ええい!食ってやる!!!」


俺は、どうにでもなれ!精神でパンに食らいついた。

美味い。

生地に練り込まれた
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