出会い

「それじゃあアイラ、パパとママはお仕事に行ってくるからね。」

「いってらっしゃいパパ。」

「ゴメンねアイラ、お引っ越してすぐなのにひとりでお留守番させて…………」

「大丈夫だよママ。」

「アイラ!週末は家族でバーベキューしよう!家族水入らずでのんびりと楽しもうな!」

「わぁい、楽しみ。パパ大好き。」

「それじゃあ行ってくるわねアイラ、愛してるわよ。」

「私もよママ、いってらっしゃい。」

ガチャッ!
バタンッ!

「……………本でも読もうかしら……」




平日の昼間
家の庭にある大きな石に腰掛けて、静かに難しそうな本を読むひとりの少女がいた。
彼女の名前はアイラ、7歳
母親譲りの綺麗なピンク色の長い髪をしており、それを後ろでまとめた大きなポニーテールが特徴の、可憐で可愛らしい少女だった。

「……………………」
ペラッ
「……………………」
ペラッ
「……………………」

ガサゴソッ!
バッ!
「おい!お前!」

孤独な時間を満喫するアイラの元に、塀をよじ登ってひとりの少年が現れた。

「ん?きみだぁれ?」

ぱっと見ではアイラと同じか少し下に見えるくらいの小さな男の子だった。

「僕はモルトだ!
将来!このレスカティエで1番強い勇者になる!予定のモルト様だ!」

「……………レスカティエで1番の勇者に?モルトくんが?
へぇ〜……………」

「そうだ!僕はこのレスカティエで1番の勇者に!いいや!世界で1番の勇者になるモルト様だ!」
ドヤァッ!!
「そしてお前!噂ではお前は勇者の娘だそうだな!」
ビシィッ!!

「……………うん…………
うちのパパはとっくの昔に現役は引退したけど、確かに元勇者だよ?」

ニヤッ!!
「へへへ!やっぱりそうだったのか!!」

「な、なによ……………」

「よし!それじゃあ勝負だ!勇者の娘!このモルト様の偉大なる夢への第一歩にしてやるぜ!」
ブンブンッ!!

手に持った木の棒を振り回してモルトは言った。

ムッ!
「……………ねぇ、さっきからその勇者の娘って言い方止めてくれない?
私はアイラよ!アイラ!」

「アイラ?………………アイラ!へへっ!アイラ!」

「……………なによ?」

「よーし!勝負だ!アイラ!僕が勝ったらアイラを家来にしてやる!」
ポイッ!
コロンッ!!

そう言うとモルトは持っていたもう一本の木の棒をアイラの足元に投げた。







「………………まぁいいけど…………」

アイラは、モルトが投げた木の棒を拾い、構えた。

「いくぞぉぉぉおおお!!うぉりゃぁあああ!!」
バッ!!

「………………………」
シュッ!


カシュッ!
ポコッ!


モルトの闇雲に突撃しながらのめちゃくちゃに振り下ろされた一撃を軽く避けたアイラは、そのままモルトの頭に優しく一撃を叩き込んだ。

「……………うぐっ!」

「え?」

「うわぁぁぁぁぁん!!!」
ポタポタポタッ!!

「えぇ?も、モルトくん!?な、泣いちゃうの?」

「い、今のはまぐれだぁ!たまたまだぁ!
アイラ!もう一回!もう一回勝負だぁ!次こそ僕が勝つ!勝ってやるんだぁ!!」

「…………………」


ポコッ!
ポコッ!
ポコッ!


「うわぁぁぁぁぁん!!!」
ポタポタポタッ!!

(よ、弱い…………)

「覚えてろ!この暴力女!野蛮女!勇者女!」

「……………勇者女?」

「明日また勝負だ!明日こそはボッコボコのギッタギタのズッコンバッコンにしてやるからな!覚えてろー!!
じゃあまた明日!」
バタンッ!

(あ、モルトくん家が隣だったんだ……………)




~ 次の日 ~

ポコッ!

「うわぁぁぁぁぁん!!!」


~ 次の日 ~

ポコッ!

「うわぁぁぁぁぁん!!!」




~ また次の日 ~

ポコッ!
ポコッ!
ポコッ!

「うわぁぁぁぁぁん!!!」
ポタポタポタッ!!

「ほら!モルトくん!泣かないの!男の子でしょ!?
ほら!お肉焼けたわよ!!」

「ぐすっ!うるさいうるさぁい!アイラからもらったものなんて!」
モグモグ
「……………美味しい!!」

「飲み込むのが早い!もっと良く噛んで食べなさい!」
ポコッ!

「うわぁぁぁぁん!!」
ボタボタボタッ!!



「いやぁホントにすいませんねぇリベットさん (モルトの父親の名前) バーベキューの準備手伝ってもらって!
ホントにありがとうございます!助かりました!」

「はっはっは!!良いんですよ!フィディックさん! (アイラの父親の名前) お隣さん同士仲良くしましょうよ!
それに!いつの間にか子供たちはとても仲が良くなってたみたいですし!」

「………………はっは
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