特に運動系クラブに力を入れているわけでもなく、喧嘩や傷害事件も起こらず、何やかやと理由をつけて授業をサボろうとする輩もいないような、数ある高校の中でも進学校と呼ばれるような所では、いわゆる保健の先生に課せられる仕事は多くない。
しかし、養護教諭・霧島 恭子の場合は少し事情が違った。彼女には、特に気をつけて世話をしてやらねばならない生徒が一人いたのだ。
その生徒の名は五島 潤。生まれつき心臓が弱く、世に言う保健室登校を繰り返している生徒である。
高校入試を突破出来るだけの学力があったとしても、進学校の授業は進度が早く、きちんと授業を受けないことには落ちこぼれる一方である。そこで恭子は、空いた時間で潤に勉強を教えてやっていた。
彼女とて大卒の人間。難関大の対策などならともかく、自分の所属している学校で行われている授業の解説くらいなら難なくこなせる。
本当なら、潤のような虚弱な男子生徒を放課後まで学校に居残らせるのは良くないことなのかもしれないが、本人にも学ぶ意欲はあったし、潤の両親も息子に酷い成績を取って欲しくはないようだったので、週に何度か保健室で、英語や数学などの主要科目の個人授業をしているのだった。
今は、その「授業」がちょうど終わった所。軽い疲れを訴えた潤をベッドに寝かせると、すぐに眠ってしまった。あまり時間に余裕はないし、そろそろ起こして家へ帰らせなければならないのだが、恭子はそれができないでいた。
「はあ、はあ……! う、うぅっ……! ふ、ふふふ、キレイな寝顔……ん、あああっ!」
下着をずり下ろし、潤の寝顔を見ながら濡れたおまんこを弄くり回していたからだ。今まさに自分の顔を見ながらオナニーしている女性が居ることにも気づかずにすやすやと寝ている潤の身体は同年代の男子生徒と比べて線が細く、血色も悪いが、その儚さが恭子の保護欲と独占欲を強く掻き立てる。
保健室での個別授業は楽しいが、余り頻繁にやると怪しまれるかもしれない。日進月歩する医療技術でいずれ潤も健康になって、他の生徒達に混ざって学生生活を送るようになるのかもしれないし、そうなるのが一番良いのだと分かってはいるが、しかし自分の手から潤が離れるときのことを思うと言い様のない寂しさを覚える。
恭子は教師でありながら、教え子に恋をしていたのだ。
隠すほか無い想いを自慰で発散し、愛液で汚れた指を洗い清め終わった所で、潤が目覚めた。軽く伸びをして時間を確認すると、もう夕方。
「うわ、だいぶ寝ちゃいました。急いで帰らないと」
「そうね。もう暗いから、車に気をつけて」
「はい。それじゃあ恭子先生、さようなら」
彼女の秘めた欲望に全く気づかぬまま、何も知らない潤は帰っていった。後に残されたのは、満たされない思いを抱えた若い女。
「はあ……やっぱり駄目よねえ。教師と生徒、なんて」
保健室で多くの時間を共にしていても、二人の立場には大き過ぎる隔たりがある。潤が卒業するまで待つという手もあるが、この学校から出ていった彼とどうやって接触を保てば良いというのだ。保健の先生という立場で、学外の人間と関わる手段は限られている。
そんな物思いに耽っていると、部屋の戸を叩く音がした。恭子が入室を許可すると、一人の女子生徒が入ってくる。
現れたのはそこらの女優やタレントなど比較にもならないような、ものすごい美少女だった。
大きな胸と、それとは対照的にほっそりした腰は本来異性を誘惑するためのものではない筈のセーラー服を何倍も魅力的にしている。
長く細い両脚はまるで外国の映画女優のようだが、しかしそれよりも均整が取れている。
異国の血でも入っているのだろうか、大きな眼の中には真紅の瞳が煌き、どこか神秘的かつ非人間的な雰囲気を醸し出す。
陶磁器のように白くなめらかな肌を夕焼けで紅く染めたその少女の名を、恭子は一瞬思い出せなかった。
「(何、この子。雑誌の読者モデルか何か?)」
見覚えの無い妖しい少女の出現に虚を突かれた感じの恭子だったが、すぐに気を取り直す。小学校や中学校と違って、高校で保健教師が生徒と触れ合う機会はあまり無い。顔を知らない生徒がいたって、別段おかしくはない。
ここまで綺麗な女生徒がいたらいくら何でも記憶に残りそうなものだが、ちゃんとここの制服を着ているし部外者というわけでもないだろう。彼女はそう思うことにした。
「どうかしたの?」
「手をちょっと、切っちゃって。膿んだら嫌なので、消毒液を使わせて下さい」
出された右手の甲には確かに、鋭利な刃物がかすめたような傷があった。わざわざ保健室に寄る程の傷ではないが、女性の肌に傷跡が残る可能性を考えれば早めの治療が望ましい。真っ白で汚れない手と細く長い指を備えた、まるで芸術品のような手
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