魔界勇者ウィルマリナの甘美にして優美な一日

 寂しがり屋の子猫が親を呼ぶような声と、体のそこかしこに当たってくる何だか柔らかい感触で目を覚ました。
 見下ろした先、同じベッドの上で俺の身体に横から四肢を絡め、胸板に顔を擦りつけて甘え倒しているのは銀青色の短髪が印象的な美少女。元勇者にして魔界都市レスカティエの尖兵、ウィルマリナである。
 んふー、んふーと蕩けた声を出して、俺の胴に頬ずりし続けていた彼女は、すぐに抱きついていた相手の覚醒に気づいたらしい。目を見開いて俺の顔を見上げると、至極うれしそうな声で朝の挨拶をしてくれた。

「おはよ♪ ね、今日は私が、あなたを独り占めできる日なのよね?」
「ああ、そうだったな。他の女たちは、夜中まで帰ってこないらしいぞ」
「やったぁー! じゃあ日付が変わるまで、いっぱい構って、可愛がってねっ!」

 首元にむしゃぶりついて、顔にキスの雨を振らせ始めたウィルマリナは、初めて俺を独占できることに無上の喜びを感じているらしい。

 なぜ彼女が他のハーレム構成員を差し置いて俺を占有できているのか。話は数日前にまで遡る。

 その日、レスカティエは例によって例のごとく教会兵どもからの攻撃を受けていた。
 普通ならば俺や、俺の嫁達のなかで手の空いてる者が適当に迎撃し戦意を挫いた後、男に飢えた未婚の魔物たちがそれらを攫っていき防衛任務完了ということになるわけだが、その日はちょっと事情が違った。
 俺はいつものごとく朝から嫁たちを一列に並べて跪かせ、順に膣に挿入して微妙に相異なるそれらの感触を楽しんでいたわけなのだが、その列にウィルマリナだけが加わっていなかったのだ。
 別に俺とて、四六時中いつでもハーレムの全員を自分の近くに侍らせていなければ気が済まないというわけではない。
 その日の彼女の欠席も、まあ今は腹が減っていないんだろうな、くらいに思って特に気にしてはいなかったのだが、彼女の方は自分のいない間に俺が他の女とセックスするということが大いに不満だったらしい。
 なぜその朝ウィルマリナがセックスしに来なかったかというと、理由は単純。前の晩激しく犯りすぎたせいで、寝坊してしまったというのだ。
 他の女たちよりも大幅に寝過ごし、このままでは(性的な意味での)朝食を頂きそびれる、と俺の許へ急いでいるところに敵襲。精液飲むより先に敵を滅してこいと、我らが愛しき支配者、至尊の第四王女たるデルエラ様に命じられてしまい、空きっ腹を抱えて半泣きになりながら前線へ向かったのだと。

 が、ここで話を終わらせないのがレスカティエ。食事をお預けにされたウィルマリナはその餓え、悲しみ、そして身の程知らずにもデルエラ様へと武器を向けんとする教団兵への怒りを存分に振るい、いつもより多くやって来ていた征伐軍を一人残らず無力化してしまったのだ。
 もともと宗教国家だったということもあり、教団はこのレスカティエを奪還すべく、たびたび軍団を送り込んでくる。
 勿論、ただの人間であるそんな兵士共が、魔界に名だたる元勇者や天才魔女、稲荷神と化して無双の呪力を手に入れた元退魔師などに武力で叶うわけもない。
 聖地を奪回しようとする奴らの試みは、例えるならば野良犬が海に飛び込んで鮫を殺そうとするようなものであり、数の如何など問題にならず必ず失敗する運命にある。かくして、件の兵士たちは魔界都市へ攻めこんでくる端から倒され、魔物の良さをとっくりと知らされることとなる訳だ。
 最近では魔物たちの間でも「ちょくちょく教会領からに若い男がやってきては勝手に倒される、都合のいい都市がある」って言うんで、フットワークの軽い未婚の魔物娘や、魔物の中でも特に獰猛で狩りを好む奴らが伴侶を求めてレスカティエにやってきていることがあったが、それら求婚者の数が一時的にほとんど0になってしまうほど、その日のウィルマリナの活躍は目覚ましかった。
 他の女たちが旦那と遊んでいる間に、たった一人で敵の全てを退け、独身の孤独に震える若い魔物たちに夫を供給したということで、魔物と人間への惜しみない愛を注いでおられる我らが偉大なる領主様は大いにお喜びになられた。その活躍を称え、ウィルマリナの願いを何か一つ叶えてやろうとデルエラ様が仰った瞬間、彼女が返した言葉は、

「一日、私の恋人を独占したいです!」

 というものだった。

 そういう訳で、今日この城に居る俺のハーレム要員はウィルマリナだけ。他の嫁たちはデルエラ様の引率のもと、新たに魔界として生まれ変わらせるための土地を探しに行っている。
 最初はぶうぶう文句を垂れていた女たちも、デルエラ様に

「貴方たちも何か手柄を立てれば、こういう願い事をしてもいいのよ」

 と言われて、俄然やる気になった。
 報奨と功績を求めて旅立つ淫魔たちは、まるで飢えた狼の群れのようでちょっと
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