屋台の赤提灯は夜道を照らすのみならず、客に店の存在を教える看板の役割をも果たしてくれる。
そんな広告塔たる提灯に対して、感謝しこそすれ悪意を抱いたり、ましてや粗雑に扱ったりする商人などいる筈が無いと、焼き鳥屋の屋台を引きながら武彦は考えていた。
その提灯の広告効果もあって、今夜も仕入れた鶏肉は完売。彼は今、上機嫌で軽い屋台を家に持ち帰る途中なのだった。
肉や野菜をたっぷり売りさばけて至極嬉しげな武彦だったが、風に揺られる赤提灯を見るとちょっと眉をひそめた。
この屋台を買ったときについてきた、ごく平凡な提灯。店の象徴とも呼べるそれは、紙が破れたり竹が折れたりする度に店主たる彼によって丁寧に修理されて来たが、それでも所詮は紙製品。
長年外気や雨風に曝され、全体的にかなり傷んできていた。
「もうそろそろ、換え時かねえ」
ジパングの民はモノを無駄遣いしない。壊れてしまった物でも、修理したり別の用途に転用したりして可能な限り長く使おうとするのだが、それでも限度というものはある。
五年近く蝋燭の火を囲い続けた赤い紙は、近頃いよいよ使い物にならなくなってきていた。
質素倹約こそが商人の美徳だと知ってはいても、ちょっと客が肩をぶつけたり、風に飛ばされて来た物がぶつかったりするたびに容易く壊れてしまうような提灯を無理に使うのは、ちょっと火災の危険が大き過ぎる。
木造家屋の密集するこの街を守るためにも、明日には新しい提灯を買ってきて、古いこいつにはもう暇をやろう。
寂しげに光る灯火を揺らしながら、武彦はそう考えていた。
さて、家に帰り着いてすぐに寝入ったその男。一日の疲れを癒すべく深い眠りに沈み込んでいた彼だったが、不意に強い感覚に襲われた。
じゅぷじゅぷいう音と共に与えられる、ゾワゾワした感覚。はっと目を覚まし股間の方を見ると、見たこともない少女が一心不乱に自分のものを舐めしゃぶっていた。
「な、何だ君は。誰なんだ一体」
「……? あ、御主人はま。 おひひゃいまひたか 」
唇の端に武彦のものを引っ掛けながら、上目遣いの視線を向ける少女。その身にまとう服の丈は極端に短く、胸くらいまでしかないが、それとは対照的に袖は大きくて幅が広い。
晒したお腹には明るい炎のようなものが揺らめいており、暗い室内を淫靡に照らしていた。
物の怪のものとすぐに見て取れるその炎に、武彦は反応した。
「!? その、炎は……君は、妖怪か」
「はぁい、そうですよぉ……付喪神の、亜香里でぇす。……ぅはぁむっ」
そう自己紹介した少女は、また彼の男根を咥え直し、唾液をずるずる言わせながら口唇愛撫に戻る。前髪をまっすぐ切りそろえた少女にきゅきゅっと鈴口を啜り上げられると、堪らず彼は悶えた。
「うはぁっ、ま、待て待て。なんでいきなり、こんな。夜這いか、よ、夜這いなのか」
「そんなじゃありませんよぉ。……分からないんですかぁ?」
少し機嫌を損ねた感じの美少女にそう問い詰められても、武彦には全く思い当たるフシがない。
頭に妙な飾りをつけ、髪を短く刈り揃えたそのスタイルは都の貴族たちのものに近い。が、彼女の体と足の先で燃え盛る炎や、その炎に照らされてくっきりと浮かび上がる目元の暗い影は、彼女がそんなお上品な世界の住人でないことを証明するに余りある。
だぼだぼの袖を引きずりながら、少女は未発達な身体と小さなお口で武彦をさらに気持ちよくしようとしてくれる。何もわからず、ただ唇と舌の搾精で感じさせられ続ける彼を見て、亜香里と名乗った少女はちょっと目を細めた。
「……そうですかぁ。分からないんですかぁ。もうずっと、五年くらいお仕えしていますのに。ちょっと姿が変わっただけなのに。薄情なお人……」
「五年、だと? そんなに昔から……」
思いの外長く付き合っているらしいことを告げられ、彼は驚いた。
彼女がさっき自分のこと指して言った付喪神、という単語。付喪神と言ったら確か、年月を経た道具が変化する妖怪のことである。
五年前というと、武彦がちょうど屋台の焼き鳥屋を始めたくらいの頃である。その事実と、亜香里という名を総合して武彦が導きだした答えは。
「お前、まさか……うちの提灯か!」
「はぁい♪ やっと分かってくれましたね! 提灯おばけの、亜香里でぇす♪」
ぱっと花が開いたように微笑んだ亜香里は、ご褒美のつもりなのか思い切り息を吸い込み、くわえ込んだ亀頭を両頬の内側で擦り立てた。外に張り出た敏感な所を、強く吸われながら粘膜で摩擦され、武彦はたまらずのけぞる。思わず口内射精しそうになりながらも、すんでのところで踏みとどまった彼を亜香里は満足気に見ていた。
「で、でも、なんでお前……付喪神? 妖怪になんてなっちまったんだ」
まさか亜香
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