魔王軍第三魔術部隊円卓会議

 定例の黒ミサを終え、普段ならば既に無人となっているであろう廃屋の一室。一般の魔女たちが全員帰宅するのを確認し、魔宴の長、背徳の黒山羊たるバフォメットは、厳かに、その場に残った魔女たちへ宣言した。

「これより、魔王軍第三魔術部隊円卓会議を開始する」 

 物々しい名前に相応しく、会議の出席者たちは何れも見た目こそ幼い少女たちであるが、サバト内で、いや魔界全土でも名の通った実力者たちである。
 
「今回の議題は予め通達したとおり、『魔界における貧乳派の発言力拡大』である。
 各人それぞれの活動結果を報告せよ」

 魔界には様々な種類の魔物娘たちが住んでいる。いずれは人間界にも住むことになるのであろうが、その魔物娘たちの間でもヒエラルキー、序列といったものは存在する。人間と比べて個人主義的性向が強い魔物娘ではあるが、いずれ魔王が世界を獲る日に向けて、組織としての強さ、横のつながりをこのバフォメットは求めていた。
 そもそも、ヴァンパイア、サキュバス、エキドナ、デュラハンといった所謂大物は、巨乳から普乳が大半である。一方、貧乳がデフォルトの魔物娘となると、ミミックだのアリスだのピクシーだの、まるで頼りにならなさそうな種族ばかりである。もし魔族が巨乳陣営と貧乳陣営に分かれて争った場合、貧乳陣営としては非常に苦しい戦いを強いられることになろう。幼女のための世界を目指すサバトの主としては、看過できない状況である。 

「まずは……ミスカ。ダークエンジェルと接触し《堕落した神》の一柱とコネクションを得る手筈だったが、どうなった」

 名前を呼ばれた魔女は起立し、バフォメットの方を向いて話し始めた。やはり一見初潮前の女の子にしか思えないが、これでも魔女たちの中でトップクラスの魔力を持つ、バフォメットの副官と言える存在である。

「報告します。私は接触したダークエンジェルと折衝を繰り返し、上級堕天使との会見をセッティングするところまでこぎつけました。
 しかし、数日前、パイプライン役のダークエンジェルと会見予定の上級堕天使が共に失踪。連絡が取れなくなりました」
「万魔殿に篭った、か」
「恐らくは」

 淡々と報告してはいるが、バフォメットは彼女の心痛を察して余りあった。魔物娘の中でも一際快楽主義的なダークエンジェルとの交渉だけでも骨を折るのに、一方的に連絡を絶たれたのでは、怒りの持って行きどころすら奪われた形だ。

「分かった。ご苦労だったな、ミスカ。今回のことは決してお前の手落ちではない。相手が悪かっただけのことだ」
「お心遣い、感謝致します。
 それと、ダークエンジェルと並行してダークプリーストの一体とも接触しようとしていたのですが、こちらも駄目でした」
「駄目、というと?」
「ダークプリースト、奴らは私たちの味方になどなりません……明らかに、敵です」
「ばいんばいんのたゆんたゆんだったか」
「ばいんばいんのたゆんたゆんでした」
「そうか……」

ミスカが着席し、次の魔女をバフォメットは指名した。

「東方のジパング地方を視察にしてきたのだったな、セイレム。報告せよ」

言われて立ち上がったのは、極東の剣士を「兄」に持つという魔女セイレム。ミスカと同じく、あまり抑揚の無い話し方で報告を始める。

「お兄ちゃんのツテを頼ってジパングに渡り、現地の魔物娘数体に接触いたしました。
 しかし、我々の同盟者となりそうな種族は見つかりませんでした」
「やはりか……」
「ジョロウグモや稲荷のような大物は軒並巨乳。カラステングの一体にロリ体型の持ち主がいたので共闘の話を持ちかけてみたところ、風で吹っ飛ばされました」
「分かった。長旅ご苦労だったな。しばらく骨を休めるといい」
「ありがとうございます」

 その後、砂漠の魔物と接触した者の報告や、海の魔物と対話した者の報告などがあったが、何れも収穫があったとは言いがたいものであった。
 一通り報告を聞き終え、バフォメットは少し躊躇うような素振りをした後、口を開いた。

「やはり、外部に援軍は期待できないか。ならば、我々を強くするほかあるまいな。
 プランBを実行に移す。総員傾注せよ」

 魔女たちの雰囲気が明らかに変わった。プランBのBとはバフォメットの頭文字であり、サバト全体で行われる作戦行動であることを意味する。決して「あ? ねぇよそんなもん」などと言ってぞんざいに扱ってはいけないものなのである。

「巨乳陣営の得意とする、ある技を盗み、我らのものとする。このスキルをマスターすれば、より一層効率的に人間を誘惑できる様になるはずだ」
「その技とは、一体」
「ぱいずり、というものだ。
 乳房で陰茎を挟んで、しごくらしい」

 魔女たちがざわつき、口々に質問を投げかけてくる。

「乳房のでかさが売りの奴ららし
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