その大きさ、重さに似合わない速さで振り下ろされた木剣を、しかし紙一重で回避、同時に俺の木剣で対手の右手に刺突を仕掛ける。攻撃直後に生ずる僅かな隙を突かれ、為す術なく木剣を巻き落とされたティールの首筋に得物を当てることで俺は試合終了の合図とした。
「っと、そろそろ日も暮れるな。今日はこんなもんにするか」
「ああ。……しかし、こうしてバルファーと手合わせをするのは、私としては複雑な気分だ」
言って立ち上がるのは生まれながらの武人にして我が妻、リザードマンのティールである。
「勝負に負けることは悔しいし勝ちたいとも思う、んだが……同時に、私を圧倒する君の姿に、どうしようもなく惹かれてしまうのだよ。もっと君の戦う姿を見ていたいような、もっと君に圧倒されたいような……他のリザードマンも、こんな気持ちを抱えながら鍛錬しているんだろうか?」
小っ恥ずかしい台詞を吐かれて俺の顔が微かに赤らむが、いつものことなのでそれ程動揺はしない。こいつはいつだって率直で、自分にも他人にも嘘を吐かないのだ。
「……相手に惚れながら試合する奴があるか。勝負の最中に余計なことを考えるなんて、お前が一番嫌いそうなことだが」
「余計なことなどと言ってはいけない。君への気持ちは、私にとって武芸と並ぶほど大切な事なのだ。たとえ一時だろうと、忘れることなどできようか」
武芸者の言うことか、と半ば呆れながら、木剣や防具を袋に仕舞い帰り支度を始める。ティールも身につけた防具類を取り外し、荷物をまとめる、と、こちらに振り返りなにやら意味深な笑みを浮かべた。
「そうだ。今晩、私ともう一勝負しないか?」
「夜の稽古か?俺は別に構わんが……何故だ?何か今日の稽古に物足りないことでもあったか?」
「いや、勝負と言っても剣術のではない。古い知り合いが教えてくれたものだ」
「……剣術ではない、って何だよ?ゲームか何かか?」
「まあ、そんなものだ。詳しくは夕食後に話そう」
やけに嬉しげなティールと共に、俺は家路に着いたのだった。
風呂で昼間の汗を流し、夕食後。
いつもなら二人でいちゃいちゃしつつ子作りに励むところだが、今日は多少様子が違った。というのも、ティールの言っていた「勝負」の内容が、
「性交して、先に絶頂したほうが負け……だと……」
「ああ。とあるサキュバスが教えてくれたのだ。世の中には『セックスバトル』という戦いがあると。
直接戦闘力に劣るサキュバスは言葉巧みに人間の戦士をこの戦いに誘い込み、圧倒するという」
「色事で生身の人間がサキュバスに勝てるわけもないだろうに、男どもはなんでそんな勝負に乗るんだよ。普通に戦えよ」
「そこをどうにかするのが女の手管、ということらしい。それを聞いて私は思ったのだ。『試合ではバルファーにかなわない私だが、これなら一矢報えるかもしれない』と」
確かに、俺はティール以外に女性経験がほぼ無いし、ティールも俺以外の男を知らない。生まれ持った身体能力や積んできた鍛錬の量に左右される武芸の試合よりも平等な勝負といえなくはないかもしれないが、
「俺がイったのは隠しようもないが、お前の絶頂は割りと誤魔化しが効くんじゃないか?」
「見くびるな。仮にも勝負と名の付くもので、不正を行う私ではない」
胸を張って宣言されてしまった。こいつがそう言うならそうなんだろうが。
「……どうも反応が悪いな。
そうだ、こうしよう。勝った方は、負けた方を一日自由にできる権利が与えられる、というのはどうだ」
正直、今までのティールとの性交に特に不満を感じていなかった故この提案に今ひとつ乗り切れずにいた俺だが、これを聞いて俄然やる気が出てきた。
堅苦しい言葉遣いに違わず、私生活でも質実剛健を絵に書いたようなスタイルのティールを、一日自由にできるという。一体どんなことをして楽しませてもらおうか、そうだ侍女服を着せて、一日メイドさんとかいいんじゃないか。いつもクールで凛々しいティールが、俺の脚の間に跪いて「ご主人様、お赦しください……」とか言うのを想像しただけで股ぐらがいきり立つ。
服を脱ぎ捨て、ベッドにスタンバイして両腕を広げる。迂闊な提案を後悔させてやる。
「早速始めよう!お前の全てを俺のものにしてやる!」
「……もう、なっていると思うんだがな。乗り気になってくれたので良しとするか」
互いに裸身を晒し、唇を合わせる。いつもはゆったりと、互いを慈しみながら性感を高め合うものだが、今回はそうは行かない。既に戦いは始まっているのだ。
舌で唇を割開き、強引にティールの口腔を舐める。口蓋や歯の裏を舌先で丁寧に愛撫してやり、同時に右手で、眼下の美乳を揉みしだく。
「……ん、んんっ、ぅん……ちゅぅ、ちゅ」
「ふう……ふ」
誂えたかのよ
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