出発前日、シルクのテントにて。
二人分入れる大きなローブを縫っている亭拉とシルクが旅の準備をしている。
テイラ「お前の荷物は着替えだけで良いのか?」
すでに生半可な馬車では運べない重量の荷物になっている亭拉に対してシルクの荷物は数着の着替えのみである。
シルク「はい、必要な物は全てテイラ様が持っていますから。」
シルクは微笑みながらそう答えるが、寂しさを隠せないでいる。
シルク「両親はもう何年も前に亡くなりましたし生まれてからほとんど本を読むことしかしていません、荷物がないのではなく持っていけるものがないのです。」
テイラ「俺ならここにある本を全部持っていくくらいできるぞ?」
テイラには住み慣れたばしょを離れると言う事がどれ程寂しいかが良くわかるだけに(主にジジイのせい)少しでも思いでの品を持っていかせようとする。
しかしシルクはそんな亭拉の思いを見透かしたかのように静かに答える。
シルク「寂しくはありません、私にはテイラ様が居ますから。」
ここまで言われると最早言い返すことはできないと、亭拉はローブを縫う作業に戻る。
ラミー「話は聞かせてもらっ「聞くな!」あべしっ!」
沈黙をブチ破りいきなりテントに乱入してきた長に空のコーヒーカップ(金属製)をぶつける亭拉。
長の乱入と亭拉の突然の暴挙にあたふたするシルクを他所に、長は魔物ゆえの頑丈さから額を押さえつつ話を続ける。
ラミー「っ、二人が明日出発すると聞いて今夜は宴を開くことにした。」
長は目尻に涙を滲ませながら今夜の宴の説明をする。
そう言えば昨日リネンが出発予定日を聞いてきた気がする。
ラミー「夫と相談した結果、近々発表しようと思っていた重大事項とお前たちの披露宴を兼ねて宴を開こうと言うことになったんだ。」
この長は思った以上に人が良いと言うか面倒見が良いと言うか…
テイラ「はっ?披露宴?」
ちょっと待て、道案内を紹介してもらっただけのはずが何故結婚することになっているんだ?
ラミー「何をいっているんだ?ラミアに自ら【巻き付き】を求め名前まで与えたんだ、コレは立派なプロポーズだろう?」
アレ〜?この人何故心底意味がわからないって顔してるんだ。
完全に周囲に取り残された亭拉と違い、シルクは即状況を理解し話に加わってくる。
シルク「町長様、テイラ様はあくまで『教会の騎士』なんですから魔物の私との結婚は後々問題になります、それに私はテイラ様のお側にいられるだけで十分ですから。」
ラミー「そう言えばそうだったか、しかし年頃の娘を結婚もしていない相手と旅に出すことはできない、『教会の騎士』であればなおさら町民が不安になる。」
やっぱり忘れてたよこの妖怪ノロケヘビ。
しかし長の言うことも一理ある。
『教会の騎士』が『町の魔物娘』を連れ出した。
この文面だけ見れば教会に誘拐されたととられてもおかしくない。
この町の者なら差ほど大きな混乱にはならないだろうが、話を聞いた他の魔物が奪還のために攻撃を仕掛けてくるかもしれない。
並みの魔物の10や20など驚異になどならないが、【人に害をなす魔物】以外との戦闘は【神託】に反するし俺自身あまり魔物を傷つけたくはない。
ラミー「だからこの町を出るに当たって形だけでも夫婦の契りを結んでもらうことになる。」
どうやら長としても譲ることはできないようだ。
テイラ「はぁ、わかったよ好きにしてくれ。」
長と話をしながらも二人用ローブを縫い終えた亭拉は逃げるようにテントを出ていく。
シルク「あ、テイラ様!」
後を追おうとするシルクを手で制し、話を続ける長。
ラミー「すまんな、我が儘を言ってしまって…」
少し強引すぎた自覚が有ったのか、長はすまなさそうに言葉をかけると亭拉の後を追うようにテントを出る。
ラミーが商業地区に行くとカフェで(と言ってもオープンテントに日除けを付け足してテーブルと椅子を置いたもの)でコーヒーを飲みながら新聞を読んでいる亭拉を見つける。
此方に気付いているにも関わらず新聞から目線をはずさない亭拉を無視してテーブルの向かいに座る。
椅子を退け、とぐろを巻いた自分の下半身に腰掛けると真っ直ぐに亭拉を見つめ話始める。
ラミー「私はシルクの両親、私の妹夫婦が病で倒れてからずっとあの子の世話をしてきたんだ、だからあの子は私の娘と言っても過言ではない。」
相変わらず新聞から目を話さないが、新聞を読むと言うより眺めているだけのようだ。
ラミー「シルクが五歳の頃、ジパングから病人を抱えた商隊が訪れ町総出で看病したことがある。
しかしその病気はジパング固有の物だったらしく各地から知識、物品が集まるこの町でさえ治療法や特効薬が存在せず町にも多くの犠牲者を出した。」
そこまで聞いて亭拉は顔を新聞に向けたまま目線だけを
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