夕暮れ、教室に男女が二人きり。
誰もが羨む青春の1ページ。
はたから見ればそんなおいしい状況なのだろうが、今俺は非常に困惑している。
「えっと、ちょっと聞き取れなかったからもう一回初めから言ってもらってもいいか?」
こういう時、聞き返すのはマナー違反だと思ったが、俺は目の前にいる後輩のコボルト少女に聞かずにはいられなかった。
「先輩、動物好きなんですよね?」
「ああ、好きだ。」
「特に犬が好きなんですよね?」
「まあな。散歩中の犬とか見るとお腹撫で回したくなる。」
「でも先輩はペット禁止の寮に住んでいるんですよね?」
「そうなんだよ。だからペット飼いたくても飼えないんだよな。」
「だから私を先輩のペットにしてください!」
「はいストップ!」
ちくしょう聞き間違いじゃなかった!
可愛い後輩に呼び出されて『やべぇ、俺にも春が来たかもw』なんて浮かれて来てみたら、まさかペット宣言されるなんて思ってもみなかった。
捉えようによっては春なのかも知れんが・・・。
「一応聞こう。何でそこに行きついた?」
「だって私、コボルトじゃないですか!だから私なら先輩のご要望に応えられます!」
「でもお前、魔物娘じゃん。」
「でも犬ですよ!散歩だってできます!ほら、お腹撫で回してもいいんですよ!」
「そういう問題じゃねぇし。つーか床に寝るな、起きろ。」
「お手とかお座りの芸もできますよ!それに躾とかの手間もいりません!」
「いや、だから根本的に間違っているというか・・・。」
あーもう、どうしたら分かってもらえるんだか。
「でもペットだぞ?ペットって意味わかってるのか?」
「先輩、これをどうぞ。」
ん?なんだこれ?
「首輪とリードです。」
ヤバい、この娘本物だ。
「ペット扱いでも構いません!だって私、先輩のことが・・・好きですから///」
え、ここにきての告白?
悪いけどここまで暴走されてから告白されても全然しっくり来ないんだが。
「私、先輩のことが好きです。あの、私じゃ・・・だめですか?」
その台詞と上目使いは・・・ずるいだろ。
そんなのもう、断れないじゃねぇか。
「あー、俺なんかで良かったら、その、いいぞ。」
「私の飼い主になってくれるのをですか!?」
「そこは彼の方で頼む・・・。」
なんか締まらないな。
まあ、こんなのもいいかもしれない。
「じゃあ、これからよろしくってことで。」
「はい、先輩!いえ、ご主人様!」
彼氏彼女というよりは飼い主とペットって感じだが、これに幸せを感じている俺がいる。
今はそれでいいってことにしておこう。
「じゃあ帰るか。彼氏らしく、家まで送ってくよ。」
「はい!あ、首輪つけなくていいんですか?」
「ぶれないな、お前。」
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