雨が多く、その上暑いこの時期は寝苦しい夜が続く。クーラーを使えば過ごしやすいが一晩中使う訳にもいかないため、結局その内には寝苦しくなる。そして、寝苦しい夜は朝に響く。
つまり、寝坊である。時計を見た男は、寝坊した自分に呪詛の言葉を吐きながら頭を抱えた。家を出る時間はとうに過ぎているが、今から会社へ向かえば何とか間に合うかもしれない。男は身支度を早々に済ませると、テレビで天気予報を見た。今日も男が住んでいる一帯は雨である。窓に目を向けると、しとしとと雨が降っているのが分かった。
「また雨か…会社、ダルいなぁ…」
そう溢しながら傘立てから傘を抜いてドアを開けると、男の目の前に傘を差したダークプリーストがいた。そして、ダークプリーストは柔和に微笑みながら魅力的な言葉を投げ掛けた。
「外は雨が降ってますし、お仕事、サボりませんか?」
サボりたいのは山々ではあるが、男も社会人である。そう簡単に会社をサボる訳にはいかない。男は傘を開くとダークプリーストの横を通り抜けようとしたが、その歩みは止められた。ダークプリーストが男のワイシャツの袖を掴んで引き留めたのだ。
「雨に濡れて風邪をひくかもしれませんよ?電車はじめじめして気持ち悪いですよ?それに、今からでは会社には間に合わないですよ?だから、サボりませんか?」
男は腕時計を見た。たしかに既に会社に間に合う時間ではない。悩みに悩んだ末、男は会社をサボることに決めた。
朝からビールを飲む男の向かいには、ビールの500ml缶を持つダークプリーストがいる。男の後に続いてしれっと上がり込んだのだ。初めは呆れた男だったが、今はまんざらでも無いのか文句を言う素振りさえ見せない。
「朝から飲むビールというのも乙な物ですね。あ、お注ぎしますよ」
グラスを満たしていくビールを見ながら、男は背徳感を味わっていた。今、上司や同僚は働いている時間だ。そうだと言うのに自分は仮病を使い、冷房が効いた部屋でキンキンに冷えたビールを美女に注いでもらっている。社会人としてあるまじき姿であるが、それが気持ち良いのだ。つまみが無くとも、その気持ちだけでビールが進んで仕方ない。
「あら、もう無くなってしまいましたね…おかわりですか?ふふ、もちろん良いですよ」
ダークプリーストは立ち上がると冷蔵庫から500ml缶を取り出して男に渡しながら言った。
「せっかくですから、テレビを見ながら飲みませんか?その方がきっと楽しいですよ」
男は頷くとビールを受け取ってソファーへ向かった。どっかりと腰掛けて大股を広げると、テレビのスイッチを入れて目ぼしい番組を探す。どの番組も程々につまらない。
「失礼しますね」
ダークプリーストはそう言うと、男の脚の間に腰掛けて男にもたれた。男は少し暑いと感じたが、ダークプリーストが特に気にしていない様なので気にしないことにした。
「あ、この映画なんてどうでしょうか?程よく下らなさそうな内容ですよ」
男はリモコンを操作してその映画の内容を見た。どうやら頭が三つある巨大鮫が人を襲う話らしい。何とも言えないチープさに惹かれた男はチャンネルを合わせると、ビールのプルタブを起こした。映画は時間的に佳境に入っているらしい。一度吹き飛ばされたが再生したのか、真ん中の頭の位置からは小さな頭が三つ程生えている。話の内容が全く見えてこない上に、B級特有の雰囲気も相まって男は乾いた笑いを漏らした。
気付けば映画は終わりが近付き、ビールも空になっていた。30分程時間を無駄にしたが、それなりの充足感はあった。次は何をしてサボり倒そうかと男が考えていると、ダークプリーストが振り向きながら言った。
「じっとテレビを見るのも疲れましたし、お昼寝をしましょう」
ダークプリーストはソファーから立ち上がると、崩れたままのベッドへ向かって手際よくベッドメイクを終わらせた。アイロンを掛けていないのでシーツに皺こそあるが、先程よりは格段に綺麗なベッドと言えよう。
「さあ、どうぞ」
促されるまま男はベッドに倒れると仰向けに寝た。アルコールが回って火照った身体に、冷えた寝具が心地好い。うつらうつらとしている男の上に、ダークプリーストがうつ伏せに乗った。その手にはエアコンのリモコンが握られている。
「温度を少し下げますね?冷房がよく効いた部屋で人肌を感じながらお昼寝…とっても自堕落で素敵な時間…」
部屋の気温は肌寒い程になっていた。それだけに、密着しているダークプリーストの体温が寝具以上に心地好い。男はダークプリーストが着ている修道服のスリットに手を入れると、柔かな尻を撫で回した。ダークプリーストは下着を履いていない。すべすべとした手触りと徐々に高まっていく体温が男の手を楽しませる。
「ぁっ…ん、ッ…ふふ、いいのですか?このまま
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