衣服と心の原点回帰

俺は「メンセマトの領主及びその周辺に関する考察」から導き出した答え……、
「誰かを操る能力を持った者があの街に居る可能性が高い」という事を皆に伝えた。

皆は俺のブッ飛んだ仮説を100%信じてくれるまではいかなかったものの、
『メンセマトには普通じゃない何かが居る可能性が高い』という事を確信してくれたのだ。

この結果に、俺は大いに満足した。

だがしかし、皆にとっては俺の仮説など通過点に過ぎないという事を失念していた。
敵の脅威を理解したという事は「戦いを有利に進められる」という事なのだから。

戦いが始まってしまう、という事自体はどうしようも無いのだ。

「敵に関する情報を色々と聞けたし、これで心置きなく奴等と戦えるわい」

バフォメットさんが突如、自信を見せながら言った。

「今回の戦いも、正面衝突だろうしね」

バフォメットさんの言葉に賛同するように、英次さんも頷いた。

……正面衝突って何ぞ?

「ええと、どういう事ですか?」

「そうか、3年前の戦いが起こった時点で、君はこの世界に居なかったんだもんな」

訳が分からず戸惑う俺に、ハリーさんは説明してくれた。
俺が彼から教わったのは「3年前の戦い」についての詳細である。
アオイさんが、ハリーさんの説明を補足するように、当時の両軍の動きを簡単に記した資料などを持って来てくれて、彼の説明を補足してくれた。

「魔物の軍と人間の軍の力比べ、ですか。
……まあ、魔物の軍が勝ちますよね」

「3年前の戦い」を一言で表すと、
視界を遮る物の無い草原での、正面衝突……!

駆け引きもクソも無い。
むしろ綱引きという言葉が良く似合う、力と気合が真正面からぶつかる戦い……!

メンセマトの性格と佐羽都街の地形を考慮すると、
今回の戦いもそうなる可能性が極めて高いとの事。

俺は先程アオイさんの持ってきた資料を見て知ったのだが、
佐羽都街の周りの半分は山に囲まれていて、もう半分は広い草原である。

その気になれば、佐羽都街の軍が罠やゲリラ部隊をじゃんじゃん仕掛けられる敵国の山にメンセマトの軍はわざわざ入って来ないだろう。
となれば、戦いの場は残る草原のみである。

さらにハリーさん曰く……前回の戦いでは、
「我等は主神の使徒として穢れた貴様等を殲滅する」といったような口上を述べる事までしたらしく、今回もそうなる可能性は極めて高いらしい。

ただでさえ「魔物が悪である」という嘘を付きながら戦っている主神教団の軍に、
そういった感じのプロパガンダは必須なのだろう。

つまり、どう足掻いても正面衝突である。

……そして何故かは分からないが、
ハリーさんが俺に告げた「今回の戦いでもメンセマトの軍が口上を述べてから戦争を始める可能性が高い」という事が妙に引っ掛かった。

「メンセマトが佐羽都街へ、
既に宣戦布告をしてしまった以上戦争となるのは避けられない……か」

自分で自分の声を聞いて、元気が無くなっていると思った。
……それも、そうか。

戦いの方法や地形がもっと複雑なら、
諸葛亮孔明等の、俺の世界での有名な軍師の策をそのまま戦場へと放り込んで、佐羽都街の皆の役に立てたかもしれない。

しかし、それすら出来無いのならどうしようも無い。
これから戦いが始まるというのに、
俺は彼女達に何もしてあげられない。

「メンセマトにとんでも無い力を持ったヤツが居るかもしれない」という事が分かっているが故に、どうすれば良いのかが分からない事に対して余計に悔しさを感じる。

俺は勇者などでは無く唯の一般人である。
だからといって自らの歩みを止めるような事はしない……と、
ハリーさんに諭された時に決意したものの。
「戦場」で、佐羽都街の皆に対して俺が役に立てる事など無い事ぐらい分かっている。

戦いの素人である自分が戦場に突っ込んだ所で真っ先に死ぬ。
今から鍛えるにしたって、あと一週間弱という時間ではあまりにも足りない。
勇気と無謀を履き違えた所で……かえって皆に迷惑を掛けるだけだ。

今の自分では、もう皆の役に立てないという事を理解せざるを得ない。

だけども。
俺は、どうしても心配になってしまう事がある。

「―――――様」

そもそも、人間と魔物では身体能力、戦闘能力に大きな差があるとしても。
実際の戦いにでは、それが……それほど大き過ぎる差にならないように思えた。
なぜなら、魔物は人を殺そうとしないからである。
いくら戦う能力に差があろうと、魔物の側が人間を殺さぬように「手加減」をしているのではせっかくの差が埋まってしまう。

昨日の、俺が爺さんに襲われた事件だってそうだ。
アオイさんが、本当の意味で『全力』を出していれば、
そもそも、彼女が死に掛ける事は無かったんじゃないかと思う。

でも勿論、俺
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