親魔物領 佐羽都街

「ん……?」

俺が目を覚ますと、日本でよく見かける布団に寝せられていて、浴衣のような風通しの良い寝間着を着せられていた。
辺りを見回すと、そこは和室だった。

襖越しに朝日がこの部屋を照らしている。
どうやら、俺が寝ている間に夜が明けたようだ。

……中世ファンタジー全開の異世界に、どうして和室が?

「知らない天井ではあるが、とりあえず牢屋じゃないな。
何処だ、此処……?」

「此処はジパングの『佐羽都(サバト)』街でございます、マモル様」

「うわわあっ!?」

聞き覚えのある声に、俺は思いっきりビビってしまう。
そうだ。俺は昨日このアオイさんと思いっきりセックスした後、気絶したんだ。

……男として、情けない事この上無いな。

「えと、その。おはようございます。
俺の着ていた服ってどうなったんですか?」

「ああ、あれですか。
昨日、色々な意味で汚れてしまったので、我々の方で洗濯をしています。」

「スミマセン、ご迷惑お掛けして」

「……いえ、それは良いのですが。
今の状況をマモル様に説明するのに、
会って頂かなければならない方々が居るのです。
私に、付いて来て頂けますか?」

初めて会った時よりも、
アオイさんの表情が暗いような気がする。
彼女の身体を見た途端、昨日の激しい情事を思い出して、
愚息が硬くなる……という事になっても可怪しくは無いのだが、
酷く落ち込んでいて、なおかつそれを表に出すまいとしているような表情のアオイさんを見るとそんな気は起こらなかった。

「分かりました」

だが、今それを彼女に確認した所でどうこう出来る訳じゃないので。
あえて放って置こう。





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部屋を出て暫くアオイさんに付いて行くと、
少し豪華に見える部屋の前で彼女は立ち止まる。

彼女が部屋の襖を開けると、
そこには一組の男女が座っていて、俺を待ち構えていた。
2人とも着物を着ていて、片方はどう見ても黒髪黒目の「日本人」に見えた。

(……ん? 幼女?)

男女の見た目は、おじさんと幼女だった。
幼女の方は、頭に山羊のような角が、手足には獣のような体毛が生えていた。
モフモフの手足に可愛らしい着物が良く似合っている。
……この子も「魔物」か。

「この方々はこの佐羽都村の村長夫妻でございます」

「……は、はぁ」

アオイさん曰く、この2人は夫妻らしい。

……夫妻?
親子ってんならまだ分かるけども。

「こう見えて、わしらはどちらも齢70を超えとるでな。
心配は要らんぞ、異世界人殿」

「は、はい。失礼しました」

おじさんは30歳、幼女に至っては10歳位にしか見えなかったのに。
……もう、何があっても驚けなくなってきた。

「俺が、今の状況説明を受けるのにあなた方に会う必要がある……、
とアオイさんから伺ったのですけれど」

「……そうか。
正直、今の君には理解し難い事、そして耐え難い事も話すと思う。
だが今は、どうか我々の話を最後まで聞いて欲しい」

どれだけ重い話が出てくるのかは知らないが、最後まで話を聞けって事か。
良いだろう、文句をなら最後まで向こうの言い分を確認した後だ。

「……承知しました。
では、説明をお願いします」

何かの覚悟を決めたような表情と共に、3人は俺に説明を始めた。

まず、此処はジパングの佐羽都街という場所らしい。

見た目が10歳程の村長は「バフォメット」と呼ばれる魔物で、魔物の中でも最高峰の実力を持つ種族らしい。村長夫妻が若く見えるのは彼女の魔力による影響だとか。

まだ状況を飲み込めた訳では無いが、
ジパングというのは昔の日本とよく似た異世界だという事だろう。

この佐羽都街を含むジパングの国は古くから「妖怪」と呼ばれている魔物達と人が共に生きて来た「親魔物領」であり「反魔物領」の隣国の人々からは敵視されていて、いきなりの武力による攻撃を受けた事もあるそうだ。

比較的穏やかな人が多いジパング人の気質として、
戦争を仕掛けたれたからと言って、相手を殴り返して滅ぼすような事はしなかった。しかし、相手に対しての警戒を緩める事は無かった。

密偵や工作員を密かに隣国へ送っていたのだ。

そして、隣国が「異世界人の勇者を召喚する」という情報を入手した佐羽都街の首脳部は勇者召喚の妨害を工作員に命じた。
その工作員こそが「クノイチ」という種族の魔物のアオイさんとの事。
彼女ら「クノイチ」はどうやらサキュバスの亜種にあたるらしい。

アオイさんは召喚の儀を妨害する為に奔走するものの、
「異世界の勇者」を期待する騎士達による予想以上に厳戒な警備や、
他人の言った事を殆ど信じない隣国の上層部によって妨害工作は難航。

結果、
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