領主との策略合戦 〜序〜

メンセマトの宣戦布告によって、佐羽都街との戦闘が始まる予定だったが。
双方がいきなりドンパチをやるつもりは無く、何らかの意思を持って此処へ来た事で、
最初っからの戦闘にはならなかった。

俺達には、メンセマトと佐羽都街が戦うべきでは無いと胸を張って言える理由がある。
それを証明するには、その原因となっているであろう領主を引っ張り出す必要がある。

その為に俺達はメンセマトの騎士であるティアさん、マーカスさんと交渉し、
領主との会話が決定したのだった。
とうとう、俺達は領主を引きずり出せたのだ。

高価そうな服の上にそのまま騎士の鎧を着た領主が歩いて着た。
かなり、こちらに来るのが面倒だといった感じである。

ヤツの様子を見る限り、何と言うか……一応形式的に鎧は着ているものの、
物理的な戦闘を自分が行うつもりは無さそうだ。
特にこれと言った証拠がある訳でも無く、俺個人の主観でなんとなくそう見えるというだけだが。

「ご足労頂きまして、ありがとうございます」

とりあえず、領主に挨拶でもしておく。
いきなり色々訪ねても、既にヤツの機嫌が悪い以上……すぐに交渉を打ち切られるかもしれない。

「下らん社交辞令はいい。
さっさと本題へ入れ……!」

言質は取った。
いきなりだが、話すしかない。

「貴方は、メンセマトの騎士さん達を洗脳していますね?」

あまりに唐突過ぎるが、本題に入れと言われればコレを言うしか無い。

「……!!」

領主は、俺の言葉を聞いて……暫くの間、表情が消えた。
そして、ふいに笑い出した。

「ククク……。
随分、面白い寝言を言うではないか」

「残念ですが、私は起きてます」

まあ、こういう反応になるよな。
今の俺を傍から見れば、タダのキチガイにしか見えないだろう。
自分がとんでもない事を言っているのは、俺自身が一番強く自覚している。

何言っているんだ、コイツは……と。
メンセマトと、佐羽都街側の事情を知らぬ者達の殆どが一斉にざわついた。

……ただ、ヤツの顔色は「全く心当たりが無い」という感じでは無かった。
全く知らないと言わんばかりにポカンとするでも無く、
俺の事を「コイツは頭がおかしいんだ」といった感じで見る訳でも無い。

むしろ「どうせそれが真実だと立証出来ないだろう」と開き直っているように見えた。
これだけでも、大きな収穫だ。

「領主樣は、命令によって他人の意思を無視して強制的に動かしている。
そういう能力を、貴方は持っている」

「何故、そう言える?」

「貴方が、こちらへ寄越した御老人が言ってましたよ?」

まずは牽制として、魔法使いの爺さんが言っていた言葉を使う。
爺さんは俺に「領主の命令では、細かな事はできんわい」と確かに言っていた

「さあ……、知らんな。
あの老いぼれをそちらへ遣わしたのは我では無い」

領主が爺さんを佐羽都街に遣わしたではない……か。
領主はそう言っているが、この事は嘘か本当かは今の所は判断出来ないな。

「それは、本当でしょうか」

「ああ、本当だ」

領主が今言った言葉が本当だとしたら、
爺さんを佐羽都街に向かわせたのは「黒幕」って事か。

何にせよ。
領主が爺さんを遣わした事を立証出来ない以上、爺さんの言葉は交渉の約には立たない。
けど俺は元々爺さんが言っていた言葉を交渉のアテにするつもりは無かった。
第一、爺さんも「それっぽい事を言っていただけ」だし。
彼の発言についてこちらもそれ程詳しく色々知っている訳では無い。

要するに、爺さんが喋った言葉は領主と話をする切欠に出来ればそれで十分である。

「まさか、それだけを理由に我々と交渉をしようというのではあるまいな?」

「いえいえ、理由は別にあります」

「スマホ、ですよ」

「……すま?
何だって!?」

爺さんの話が使えなくなった以上、こちらも次の手札を使わねばならない。
いきなりコレを出したんじゃ、あっさり反論されて潰されかねない。
だから、さっきは傭兵さん達にコレの存在を伏せて置いて貰った。

「これが、スマートフォン……。
略して、スマホと呼ばれる異世界の道具です」

俺は懐からスマホを出して領主に見せる。
スマホは、爺さんに向かってブン投げた時に壊れてもう電源が入らない。
しかし、証拠品としては十分だ。

「何だ、その割れかけた四角いのは」

「俺が異世界から持ってきた唯一の道具です。
今は壊れてもう使えませんけどね」

俺の言葉に、領主は改めて失望したと言わんばかりの表情を見せた。
異世界の道具と聞いて明るくなった表情が一気に陰る。

「そんなガラクタを我々に見せて、貴様は一体何がしたいのだ」

「今は、コレはガラクタ同然です。
しかし、コレが凄い道具でなおかつ異世界の道具であると知って頂かなけ
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