反魔物領地「メンセマト」が、親魔物領「佐羽都街」に対して一週間前に宣戦布告を行った。
そして予告通りメンセマトの軍は佐羽都街に対して攻撃を仕掛けようとしていた。
佐羽都街を攻める方法は大きく分けて2つ。
街の正門以外をぐるりと囲む山から侵入するか、
正門から攻撃を行うかのどちらかである。
今回メンセマトの軍は、正面からの攻撃を選んだ。
あまり卑劣な戦いが得意そうでは無いメンセマトの騎士さん達が、慣れぬ土地で山の中でのゲリラ戦を魔物娘の軍に挑む程無謀とは思えない為、俺達も正面からの攻撃に備えた。
しかし、それだけでは足りない。
俺達は事前に、メンセマトの軍が見えた時点で使者を出す事に決めていた。
向こうに交戦する意思があるのか、無いのか。
それらを確かめる為に使者を出す。
相手に敵意が全く無いのなら、攻撃を仕掛けても意味が無いからだ。
メンセマト側は、こちらに交戦の意思が無いと見るや、
一旦だけではあるが攻撃の手を止めてくれた。
多分メンセマト側の意向は、
「こちらには攻撃の意思を取り下げるつもりは無いが、話があるなら少しだけ聞いてやろう」という事だろう。
どうやら3年前に起こった戦いでも似たようなやり取りがあったらしく、
使者として向こうへ向かった魔物娘達は、誰一人として傷付く事無く帰って来た。
前回は魔物というだけで攻撃を仕掛けられたが、今回はそれを「領主が止めた」という。
これによりメンセマトの意向は、明らかに前回とは違う事が明らかになった。
向こうが攻撃の意思のみを持っていて、
こちらの話を聞くつもりが何一つ無いのなら力による衝突しか無い……が。
今、こうして俺達とメンセマトの軍が向い合っての睨み合いになっている時点で、
敵側のリーダーであるメンセマトの領主が「俺達と真っ当にぶつかる以外にも何らかの思惑を持っている」という事である。
「メンセマト側の初手は、様子見……。
お主の読み通りじゃの、軍師殿?」
「読みが当たったのは嬉しいのですが、
『軍師殿』は止めて下さい」
幸先良く読みが当たり、俺はバフォメットさんにからかわれていた。
俺は向こうがこういう動きをすると予め予想していて、
佐羽都街の皆にも一応伝えておいた。
――何故、俺がメンセマトのこういった動きを読めたのかと言えば、
3年前に、メンセマトの軍は佐羽都街の軍に対して「普通に戦って大敗を喫している」からだ。
だから、今回は「以前と同じようにいきなり普通に攻撃を仕掛けて来る事はして来ない」と予想出来た。
「本当、初っ端からアオイさんの出番にならなくて良かった」
「ええ、全くです」
もしも、メンセマト側の攻撃がどうにも止まらない場合は、
アオイさんに「分身の術」と「魔界銀炸裂爆弾」の合わせ技で、敵側の戦力を大幅に削ってもらうつもりだった。
……魔界銀炸裂爆弾の製作者であるアオオニさん曰く、魔界銀の破片を火薬の爆発によって大量に散らして「非殺傷の広範囲攻撃」を行う魔界銀炸裂爆弾は火薬にも特殊な魔力が込められたものを使用しているらしく、至近距離でブッ放しても死人は出ないとの事だ。
汎用性の高い切り札を序盤から晒す事無く、俺達はメンセマトとの交渉を始められる。
佐羽都街の軍、約300。
メンセマトの軍、約500。
こうして睨み合っているだけでも、とてつもない緊張感だ。
今でさえ辛いのだから、2つの軍が実際に衝突してしまえば俺の心は折れてしまうだろう、
バフォメットさん曰く、3年前の戦いではお互い250程度だったが、
今回の戦いでは向こうは数を増やして来たとの事。
おそらく、前回とは違ってメンセマトの戦力全てを此処へ連れてきたのだろう。
……ちなみに、こちらの数が増えているのは、元メンセマトの勇者であるハリーさんを始めとする「元メンセマト軍の戦力」が佐羽都街の軍に加入したからだ。
戦いが始まるまでの間に、ハリーさんが元同僚に声を掛けてくれたらしい。
今回は「国と国」ではなく「街と街」程度の争いであるため、極端な大規模では無い。
しかし、これだけの数がぶつかり合えば極めて高い確率で死傷者が出る。
何としてもそれは止めなければいけない。
「それでは、我々はメンセマトとの交渉を始めるのじゃ。
マモル殿、宜しく頼むぞ」
「交渉が決裂しそうだと思ったら、無理をしないでくれ。
無理をせず、君達自身の安全を最優先するんだ。
どうにもならなくなったら、皆で一緒に戦おう」
バフォメットさんとハリーさんが俺を励ましてくれた。
自分だけが全てを背負う必要は無いという安心感と、
自分に応援や心配をしてくれる皆の為に結果を残したいという気持ちが混ざり合い、
適度な緊張感となって俺の背中を押してくれる。
「…………」
アオイさんが、何も言わず俺の手を握っ
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