優しきクノイチのファインプレー

さっきまで話して分かった事実から見出した推測をアオイさんに伝えた。
「貴方が、一度以上メンセマトで記憶操作を受けている可能性が高い」と。

「な……何を……言ってるんですか、マモル樣?」

アオイさんが、青ざめた顔で、意味が分からないと言わんばかりに俺へ問い返す。
そりゃそうだ。
いきなりこんな事を言われたら誰だって混乱するに決まっている。

ただ、それでもアオイさんの表情が青ざめているのは、
アオイさんには何らかの心当たりがあるのだろうか。
それとも、俺に心外な事を言われて混乱しているだけだろうか。

それを確かめる為にも、今は話を進めねばならない。

「俺は、これからアオイさんにいくつか質問をします。
貴方にとって不快となるような事も聞くでしょう。
ですが、俺は決してアオイさんを責めようとしている訳じゃありません」

「は、はあ……?」

俺が突拍子も無い事を言っても、段々2人は驚かないようになって来た。
自分の喋った事を嘘と疑わぬアオイさんとバフォメットさん。
……色々な意味で普通じゃない事を喋っているという自覚がある以上、こういった感じで話を聞いてくれるのは本当に助かる。

「質問は構わないのですが、
まずはマモル樣がそう思うだけの理由を、話して下さいませんか?」

「……分かりました」

アオイさんに促されて、俺は推測の内容を話し始める。
彼女の記憶が操作されたかもしれないと考えた理由はいくつもある。
そして、それらを簡単に纏めてしまえば……こうだ。

「俺の目から見て今のメンセマトは異常です。
俺が知らなかった事でも、叩けば叩く程にホコリが出てくるような状態です。
にも関わらず『メンセマトが異常だ』って事を最初に言い出したのが、
アオイさんじゃ無くて、この俺だって事がどうしても腑に落ちないんですよ」

「「あっ……!!」」

アオイさんが虚を突かれたような表情となり、
バフォメットさんが隣に居るクノイチと似たような表情のまま彼女を凝視する。

2人共、今のざっくりとした理由だけで俺の言わんとしている事に辿り着いたようだ。

前まで佐羽都街の皆と話していた事の中でも……、
メンセマトの騎士達は3年前に魔物娘の詳細を知った筈なのに皆それを忘れている事、
領主の「命令」を受けた人間は操り人形のようになってしまう可能性が高い事……位は、
俺に会う前にアオイさんが既に発見していても可怪しくない筈だ。

これだけならば、偶然……アオイさんがそういった状況に遭遇しなかっただけかもしれない。

しかし、
ついさっきバフォメットさん話した「異常」を始めとするアレもコレも全部……、
メンセマトに関する具体的な情報を言い出したのは、アオイさんでは無い誰かだ。

つまり、アオイさんは、
メンセマトに関する数多くの「間違い」を『何一つ自分から言い出していない』のだ。

いくら普段は無口なアオイさんでも、俺や皆がメンセマト関連の話をしている時に、
何か自分の知っている情報が有るならば話してくれるだろう。
……アオイさんがそうしなかったという事は、
彼女がそういった矛盾を何一つ発見出来ていない事となる。

――けど、それはどう考えても不自然なのだ。
任務で俺よりもメンセマトに長く潜入しているアオイさんが、
俺があそこに1日足らず居ただけで発見出来た異常を全然見つけられなかったとは考えにくい。
観察眼や動体視力だって、俺よりも彼女の方が上である筈だろう。

ところが「アオイさんがメンセマトの矛盾に関する何らかの手掛かりを掴んだにも関わらず、何者かにその記憶を消されてしまった」と考えると筋が通ってしまう。
だから、俺はその可能性が真実か思い違いかを確かめねばならないのだ。

「そういう訳ですんで、
アオイさんは此方の問いに対して正直に応える事だけを心掛けて頂ければ結構です。
……質問を始めても宜しいですか?」

だから、俺は今……アオイさんにこの推理が合っているかどうかを確かめるべく質問を重ねようとしている。

「……分かりました。
私は、マモル樣の問いに全て正直……にっ!?」

「「!?」」

アオイさんが、突然頭を押さえた。

「……!?
どうしたんじゃ、アオイよ!?」

「アオイさん、何処か痛むんですか!?」

突然様子が変になったアオイさんを心配した俺とバフォメットさんだったが、
彼女は穏やかな表情で「心配は要らない」と言わんばかりにゆっくりと頷いた。

「一瞬だけ、頭の中に不快感を覚えただけですので、心配は無用です」

「不快感って、本当に大丈夫何ですか……!?」

「また何か変な感じがあったらすぐ言うのじゃぞ?」

アオイさんの表情からして彼女は痛みは感じていないようだったが、一体何だったのだろうか?
原因が分からないってのが余計に心配
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