今が何時かと言えば、俺……黒田マモルと、ジパングのクノイチである望月アオイと想いが通じ合った次の日の昼前である。
佐羽都街とメンセマトのゴタゴタが片付くまで正式な「結納」とはいかないだろうが、
俺達は紆余曲折の末に男女の関係となったのだ。
そんな俺がどうして未だに寝ているかというと……。
「うぎ、ぐぎぎ……!!」
「ただの人間があれだけ無理をすれば身体を痛めるのは当然です。
無理をなさらないで下さい、マモル」
「うう、済みません……!」
そう。
何が一番キツいかって言えば、腰が痛い。
佐羽都街の皆の役に立ちたいと思い、
俺は「アオイさん」を味方につけるべく説得しようとしたが。
その結果、彼女を泣かせるという大失態を犯してしまった。
自分の失態を取り戻すべく、限界を超えてアオイさんとの交わりを重ねた挙句、
理性が完全に飛んだ後もフィーバーした結果、身体のそのツケが回って来たのである。
反魔物領の隣町との来るべき戦いを回避する為に色々と裏工作をしたいんだけども、
今日1日は殆ど動く事が出来なさそうだ。
……ちくしょう。
と言いたい所だが。
何だかんだで俺の思いを惚れた女性に伝えられたのは良かったかな。
と、まあ。
そんな贅沢で呑気な事を考えていると、
「マモル殿はいるかの?」
俺と「アオイさん」の居る部屋にバフォメットさんが入って来た。
只でさえ、こっちは彼女の名前をさん付けせずに呼ぶのに慣れていないのだ。
本当に2人きりで無い時は、心の中でも彼女を「アオイさん」と呼ぶ事にしよう。
でないと、表に出てきてしまいそうだ。
そして、アオイさんも俺と2人きりの時に見せてくれた、
優しさに溢れた美貌から、何時ものクールで凛とした表情に変わった。
「何か俺に御用でしょうか?」
「…………」
俺を探して此処に来たバフォメットさんだが、彼女は何も言わず俺をじっと見ている。
彼女と俺は何度も会っている筈なのに、
バフォメットさんが俺を見る眼は初めて見る怪しい人間を見定めているかのようだ。
「あ、あの……?」
「まさか、アオイが籠絡『される』とはの」
困惑する俺を見ながら、バフォメットさんが独り言のように呟く。
「!」
彼女が零した言葉に、俺は驚いてしまう。
昨日、俺とアオイさんに何があったのかをバフォメットさんは知っているのか?
「そんな怪訝な表情をせんでも、お主等の雰囲気で何があったかは分かるわい。
その件については、儂も良かったと思う。2人とも、おめでとうなのじゃ!」
俺とアオイさんに向けられるバフォメットさんの天真爛漫な笑顔。
しかし、それは直ぐに消えてさっきまでの真剣な表情に戻ってしまう。
……?
どういう事だ?
イマイチ話の流れが掴めないぞ?
「私があらかじめバフォメット樣に相談しておいたんですよ」
何が何だか全く分からない俺に、アオイさんが状況の説明をしれくれた。
――アオイさんによると、
俺が何らかの無茶をしようとしている事を知った彼女は、
その事をあらかじめ佐羽都街の主要人物全員に伝えたらしい。
勿論、その中にはアオイさんに協力していた白蛇さんも含まれているのだろう。
そして「万が一、私がマモル樣を止められなかった場合、代わりに彼を止めてくれ」と頼んで置いたらしいのだ。
しかし「アオイさんが俺を止められなかった」のでは無く、
「俺がアオイさんを説得して協力者にしてしまった」という俺以外の誰もが予想していない結果になってしまった。
……アオイさんが俺の「無茶」に同意している以上、アオイさんが俺の説得を自分の代わりに皆へ頼んで置いた事が無駄になってしまったのだ。
今朝になってから、俺が起きる前にアオイさんは事の顛末を皆に伝えた。
そうしないと、無駄に誰かが俺を説得しに来る事となってしまうからだ。
アオイさんから報告を受けた佐羽都街の皆は、大いにその事を祝福してくれたのだが。
その中で唯一、バフォメットさんは俺がアオイさんを説得してしまったという事に対して……本当に大丈夫かと心配してくれたらしい。
だからこそ、今、彼女はこうして俺を尋ねてくれているのだ。
「そうだったんですか……わざわざ、ありがとうございます」
「いやいや。こちらこそ無粋な真似をして済まないのじゃ。
ようやく結ばれた2人の邪魔などしたくは無いのじゃが、どうしても確認したい事があっての」
「はい、何でしょうか?」
「マモル殿、貴殿は一体何者なのじゃ?」
「……はい?」
……いやいやいや。
いきなり、お前は何者だと言われても。
まあ、強いて答えを言うのなら……!
「自分は唯の異世界人だ……とでも言いそうじゃな」
バフォメットさんに考えを言い当てられて、自分の身体が不自然に動いてしまう。
ぎくっ、
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