とあるクノイチの視点 〜後編〜 

昨晩「老魔術師の死についての謎を解き明かして見せる」と言っていたマモル様は、
僅か1日足らずで彼なりの答えを見つけてしまった。

マモル様は、老魔術師の雇っていた傭兵達と和解したついでに、
メンセマトで怪しい事が無いかを彼等に聞いて回っていた。

そして、彼等との何気ない会話と、現在の自分が「すまほ」という異世界の道具を持っているという『異常』に気が付いたらしい。

この時の私にはマモル様が何を言っているのか分からなかったが、
彼は皆の前で自分の仮説をきっちり説明してくれた。

彼の出した答えは
メンセマトの何処かに『命令をする事により、相手を思うがまま操れる力』を持った者が居る可能性が高い……という、とんでも無いものだった。

最初は皆信じようとしなかったが、
本来ならばメンセマトで取り上げられている筈の「すまほ」や、
領主が『命令』を行った前後の不自然な騎士達の様子。
そしてメンセマトが佐羽都街に戦線布告する口実となった「老魔導師の死」……。
といった根拠も複数用意した上でマモル様が行った説明は、
「そういった可能性も十分に有り得る」という程度に我々を納得させるには十分なものだった。

マモル様は自分なりの仮説を皆に話した後、
佐羽都街とメンセマトの戦いが始まるという皆の話を聞いている内に黙りこんで、
私が大声で叫ばねば周りの声が聞こえない程に何かを深く考え込んでしまった。

彼は恐らく、佐羽都街とメンセマトが戦わざるを得ないというのが気に食わないのだろう。
我々と「操られているだけ」という可能性が高い善良なメンセマトの騎士達が間違った理由で戦わねばならないのだから。

そして、それを本気で「どうにか出来ないか?」……と。

しかし、戦いとは残酷なものであり、仕方が無いのだ。
相手を倒さねば、此方が倒されてしまうのだから。
魔物である我々は相手を殺さないが、相手はそうでは無い。
故に「万が一」の事も覚悟しなければならないのだが……。

……そんな私の心配をよそに、
バフォメット様から、「仮説」を皆に話したマモル様へのお礼を兼ねて、
彼に異世界の黒い服が返される事になった。

彼に異世界の服を返しに来たのは……見覚えの有る狐憑きと女郎蜘蛛。
マモル様の「世間話」をしていたあの2人……服屋だったとは。

だが、あの2人は……この世界では殆ど服を持っていないマモル様に服を譲る代わりに、
異世界の服に関する情報を手に入れようと、断れないような取引を持ち掛けた。
まあ、彼にとって大きな不利も無く、互いに得をするようなものだったが。

しかし、そんな彼女達に対して、彼は何処か気の抜けたような感じで取引に応じてしまう。
……この時私は気が付いていなかったが、彼女達がマモル様に対して行った「取引」が彼を変えるキッカケとなっていたのだ。

改めて、再び異世界の服へと着替えるマモル様。
……私は彼が着替えているのを屋根裏からじっと見ているのだが。
先程までと同じく、愛しい人の様子を見守っているだけ。

ふふ……これは断じて覗きでは無い……覗きでは無いんです。

着替えが終わり、彼女達が異世界の服を採寸した後。
自分の部屋に再び入ったマモル様の様子が突如……変わった。

「…………」

目を閉じ……暫く何かを考え込む。
そのまま長い間、彼は思考の海に沈む。

「…………!」

やがてその目が開かれた時、マモル様の瞳には今までとは桁が違う程の強い意思が宿っていた。

「考えるだけじゃあ、ダメなんだな。
行動を、起こさなきゃ……!!」

誰に対してでも無くそう言って、彼は何処かへ歩き出す。

そして……彼の口が……歪に吊り上がっている。

私が、初めて目にした……彼の本当の笑み。
まぎれも無く、今のマモル様は今までの彼と決定的に何かが違う……!

以前のような「無関心故に自らを顧みない」といった感じでは無いが、
彼の瞳に宿る決意の炎は「熱さ」と共に「危うさ」が感じられた。

今のマモル様は
私の、魔物としての直感が危険だと告げていた。
彼は、何か危険な事をやろうとしている……恐らく、私達の為に。

そして、その『何か』とは……多分、メンセマトと佐羽都街の戦いを止める事では無いのだろうか?

先程、彼は我々の声が聞こえぬ程に「その事」で悩んでいた。
それに対して、何らかの切欠で答えが出たのなら……今の状況も十分考えられる。

だが「どうやって」というのが全く分からない。

彼が良かれと思って何かをしようとしているのが分かる……が。
それ以外の『危険な何か』が混じってグチャグチャになっている。
マモル様自身も、自らの感情を完全には理解出来ていない。
だから、私にも彼の考えが分からないのだ。

このまま彼を放って置くのは、良くない。
しかし、私が話せと言
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