とあるクノイチの視点 〜前編〜


注意※アオイさん視点ですので、時系列がかなりズレます!
     今回は、4話の終わりまでです。





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私の名は望月アオイ。

ジパングの、とある『クノイチの里』から佐羽都街に来ているクノイチであり、
クノイチならではの「忍術」を使って戦闘から諜報まで幅広い任務をこなせる戦力として、この街の長であるバフォメット様に雇われているのだ。

今まで様々な任務に携わって来た私だが、
我々クノイチにとっての最重要任務である『暗殺任務』が下る事は無かった。
任務以外では……「貴方の前にもきっといい人が現れる」と私に言いつつも仲睦まじく暮らす人間と魔物の夫妻を見て心から羨ましいと思いつつも、
この人だ! と思えるような人に出会えずに暮らして来ました。

けど『その時』は唐突に訪れた。
それは、いつ戦争が始まっても可怪しく無い程に険悪な関係の隣街……反魔物領「メンセマト」での任務が切欠でした。

三年前に起こった戦争によりメンセマトは佐羽都街に敗れたが、
今度は対策として異世界から「勇者」を召喚する儀式を行おうとしているらしく、
それを阻止するというのが今回の任務である。

役目を果たす為、早速私はメンセマトに潜入した。
しかし、勇者が召喚される予定の場所は此方の予想を超えた厳重な警備だった。

魔物の変装を見破る為の聖なる加護が込められた道具を持っている騎士達が沢山居て、
とても近付けるような状態では無かった。
その様子を遠目から観察するのがやっと……という状態である。

メンセマトの長である領主か、勇者召喚を行う役目の老魔道士を「クノイチ流の暗殺」で籠絡してしまうのが一番手っ取り早いのだろうが、彼等は召喚の儀が行われる場所と同様に厳重な身辺警護がなされていて手が出せなかった。

バフォメット様には状況を逐次報告していたが、
無理は絶対にするなとの事だった。
……メンセマトに勇者が召喚されるよりも、お主を失う方が何千倍もの痛手だ……と。

ただ、そんな状況でも私は何もしなかった訳では無い。
隙を見て……老魔導師が使っていた杖を魔界銀製の偽物へすり替えたり、
異世界人を召喚する為の魔術が書かれた本の内容を書き換えたりと、
私は、私に出来る事をやったのだ。

――しかし、結局、異世界の人間はこの世界に召喚されてしまった。

ただ、私がやった事が全くの無駄にはならなかったのか、
召喚された人間はメンセマト側にとって戦力となる人間では無く、唯の異世界人だった。
その人の名前は「クロダマモル」と言うらしい。
だが、私が勇者召喚の儀を阻止出来なかった事には変わり無い。

初めての任務失敗。
私の背に嫌な汗が流れた。

しかし、もっと困っているであろう人がまだメンセマトに居る。
それは、この世界に召喚されてしまった「クロダマモル」である。

彼は勇者として召喚されたのに、何の力も持っていない只の異世界人である可能性が高い。
故に、彼がこれから先メンセマトで良い扱いを受けるとは思えない。

さらに、彼を召喚する魔術を使用した老魔導師が「クロダマモル」の命を狙っている事も分かった。
この時の私に、老魔導師が彼を狙っている理由が全く理解出来ていなかったのだが。

私は、とりあえず異世界の人間を佐羽都街で保護する事に決めた。
「クロダマモル」に近付く為に……彼を害そうとしている老魔導師に化ければ、
彼の息の掛かった人間をも遠ざけられる為、一石二鳥である。

では、再び行動を開始しましょうか……!





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「見つけた……!」

その人の見た目は「ジパング」の人間と変わらぬ黒髪黒目の青年ではあるが。
黒い袴に、白い肌着を着て……その上から下履きと同じ色の上着を羽織っている。
首から垂れた赤い鉢巻きのようなもの、黒色の革で作られた靴や腰帯……。
どう考えても、この世界の服では無い。

……あの人が『クロダマモル』か……!

メンセマト内の警備は先程とは一変してガラガラになっていた。
勇者が召喚される筈だったのに、
ただの人間が召喚されてしまった事で士気が大幅に低下しているが故だろう。
だから、件の異世界人と思わしき男性が厠へ向かって牢を抜けた隙を簡単に狙う事が出来た。

「がっ……!」

老人に変装していた私の急襲により、異世界人を警護していた男はあっさりと倒れた。

今、我々と敵対している教団の騎士に対してそうしたのは仕方が無いとして……だ。
彼の隣に居た教団の騎士はとりあえず魔界銀の杖で殴って気絶させておいたが、
異世界人もそうするわけにはいかないと感じていた。

今、私から見て彼は非常に混
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