俺……相田幸太はとことん生きる事に疲れてしまった。
理由は、会社の激務で疲れたからである。
俺の努めている会社はいわゆる「ブラック企業」という訳では無い。
福利厚生などは一通り揃っていて、給料も悪くは無い。
しかし会社の特徴として、社員の間では行き過ぎた「実力至上主義」が横行している。
有能な人間はとことん優遇され、無能な人間はどこまでも冷遇される。
それだけならまだ良かった。
俺は仕事に対して情熱を持っていたが、社員としての実力がそれに付いて来なかった。
それ故に、有能な人間の足を引っ張ってしまう事が何度かあった。
だが、その結果として俺への「イジメ」が発生した。
俺は仕事を干され……何一つまともな事をさせて貰えず、
誰にでも出来る「雑用」しかやらせて貰えなくなったのだ。
そして、毎日のサービス残業の強要。
有能な同期が、上司の目の前で、俺に対して舌打ちをしようと誰もソイツを咎めない。
その上、周りの人間からは事あるたびに無能や給料泥棒と呼ばれた。
要は、俺が会社の中で「見せしめ」として扱われていたのだ。
相田のようになりたく無いのなら、会社に対して利益を出せる社員になれ……と。
そして何よりもタチが悪い事に、上司は狡猾だった。
言動の1つ1つが、ギリギリで「パワハラ」扱いされないように計算し尽くされていた。
上司は、分かっているのだろう。
自分達が、俺に対して訴えられかねない事をしているという事。
そして、俺が「まともな手段」で誰かに助けを求めた所でどうにも出来ない、と。
だから俺は「まともでは無い手段」で会社に対する復讐を行う事にした。
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俺は、車でとある山道を訪れた。
カードレール越しには、崖が広がっている。
俺がここから飛び降りれば、自殺は容易だろう。
車の中には、俺の「遺書」が入っている。
遺書の内容は、俺が今まで会社で受けた「イジメ」を事細かに記したもの。
自分で纏めてみて、ノート7冊分もの内容になるとは思っていなかった。
俺は知り合いの何人かに「生きる事に疲れた」といったような事をそれとなく伝えてある。
それにより俺が行方不明となれば、警察は俺の自殺を疑うハズ。
そして、俺の車から「遺書」が見つかれば警察の捜査が会社に入るだろう。
警察の捜査によって、俺に対して「イジメ」を行った連中が捕まるか、クビになるか。
そうなれば俺にとっては幸いだし、仮にそうならなかったとしても、会社の評判はガタ落ちだろう。
勿論、これは俺の計画が上手くいった場合の話である。
むしろ、そうならない確率のほうが遙かに高い。
だが、俺に躊躇は無い。
俺の家族は既に事故や病気で全員他界している。
失うものなど、何も無い。
そう思って、
俺が靴を脱ぎ、ガードレールに足を掛けた途端……。
「ちょっと待ってよ、お兄さん」
突然、後方から光が怪しげな発せられ、俺はそれに反応して振り返る。
「あたしと、少しお話しない?」
するとそこには、奇妙な少女が佇んでいた。
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「……という訳だ」
「ふうん、成程ねぇ」
俺は奇妙な少女に「なぜ自殺をしようとしたか」を聞かれ、
今まで自分に起こった事を掻い摘んで話した。
少女は、俺が今からやろうとしている事を「脆弱な人間のやる事だ」と嗤うと思ったが、そんな事は無く、むしろ俺の話を最後まで真剣に聞いてくれた。
俺はそんな少女の事が気に入って、随分と饒舌になってしまった。
「……それにしても」
「ん?」
「物怖じしないんだね、お兄さん」
「そうか?」
少女の見た目は俺から見れば奇妙としか言いようが無かった。
人ならざる青肌の体。
黒い目球に、赤い瞳。
蝙蝠のような翼と、先端が尖った尻尾。
「悪魔」という言葉を体現したかのような少女。
少女の年齢は、見た感じ15歳前後か?
だが、おかしいのはここから。
少女の格好がほとんど裸に近いものであり、
そしてそんな少女が、わざわざ俺の自殺を止めたという事。
そもそも、どうしてコイツはこんな山道に居るのだろうか?
彼女は自分で自分の事を「デビル」だと言っていた。
良く分からないが、彼女曰く……俺達普通の人間が気付いていないだけで、
この世界には彼女と似たような「魔物娘」と呼ばれる人ならざる者がこの世界には沢山居るらしい。
本当に、奇妙だ。
「まあ、少し見た感じが変わってるなって思ったけど。
君が俺の、話し相手になってくれたのはむしろありがたい位さ」
だが、それでも俺が物怖じする理由とはならない。
俺の会社にいる「人
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