『母の日記』


ペラッ

私はその手に取った重厚な皮で表紙を飾られた本を捲ると一番最初に出てきた日付を見て吃驚した。

「え、・・・500年前・・・!?」
それだけではなくて更にはその日記の文を見て目を見開いてしまったの。

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****年○月○日

ついに探していたアイテムが見つかって嬉しさの余り日記を書くことにした。

【妖狐の鈴と髪紐】

大陸のある南街にてとうとうソレを見つけた私は行商をしていた妖狐の姉さんになんとかソレを譲ってくれと交渉をするとその妖狐さんは渋る様子も無くソレを人間である私に売ってくれた。

全く錆びの無い鏡のように磨かれた綺麗な音色をだす二つの夫婦鈴。
二組の翠色の組紐。

ただ妖狐の姉さんがそれらを渡すときに二、三注意をしていたが嬉しさの余り最初の「一日に2時間以上つけないように。」という注意だけしか聞こえなかった。あと何をいっていたのかしら・・・

暫く寝れそうにないので酒を飲もう・・・

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「・・・・う、うそっ・・・ママって最初から妖狐じゃなかったの?!」
掻い摘んで読んでみて分かったことはママが元々は人だったということ。
更に私は今に至るまでのママの軌跡を知りたくなったのでママには悪いけどもう少し読もうと思う。
このページから数ページは細々とした冒険がただ書き連なっているだけで別段魔法を使ったという表記は無かったのだけどちょうど10ページほど進んだところでその文は出てきた。



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****年×月○日

やっと数ヶ月ぶりに大きな仕事がギルドから舞い込んできた。
反魔物を謳う教会兵がわんさか来るんでそれの撃退の依頼。
私は短く切りそろえたばかりの髪に例の紐と夫婦鈴を、利き腕の右手にもう一本の組紐を巻いて自慢のブロンズヘアーを靡かせて戦場に駆けていき最も得意な魔法を唱えるとこのマジックアイテムの素晴らしさに目を見張った。

今まで数人にしか当てられなかった広域攻撃魔法がいつもの消費魔力容量で3倍近い威力がでた。
これには敵も見方も驚いた。
が、私も驚いた。

暫くは訓練して出力を制御できるようにしなくては・・・

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「・・・どうやらまだ髪がブロンズだったみたい・・・あとギルド? の隊員だった感じね・・」
正直意外ですよ、ママが魔法を使ったのなんて見たことないですし。
ましてや今のママの髪は綺麗な狐色で腰まで伸ばしてるもの。

いつギルドに入ったのか、いつから魔術師になったのか・・・今の性格のままの書き手は確実にずぼらなのであろう。
日記の日付がかなり飛び飛びになっているし。

やはりそのページ以降は毎日とまではいかなくとも、其れなりのペースで魔法の制御方法について日記が書かれている。
・・・結構参考になるわね。
あとでママにならおうかな?

・・・あ、このページ。
やけにインクが滲んでるけどどうしたんだろう?



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****年△×月○日

やっちゃった・・・

妖狐の姉さんに言われていた注意をものの見事に破っちゃった。
訓練して疲れたからベッドにそのまま寝てしまい結果的に私は5時間近くも・・・

そして何故妖狐の姉さんが私に、いえ、人間に注意したのか分かった。



取れないのよ。鈴も紐も、私の髪の一部になったように・・・



どうしよう・・・どうしよう・・・どうしよう・・・どうしyeuk,v@o;p.

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「・・・これって・・・呪いのアイテムなんじゃ・・・」
このページの最後のほうはもうミミズがのたくりまわったような筆あとでとてもじゃないけど読み取ることは出来なかった。
けどその心境はとても分かりやすかったわ。

しかしこのアイテム、呪いのアイテムだとすると・・・

そのページからは暫く日付だけ書いてある白紙だ。
あ、ここからまた日記を書いてる。



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***○年○月○日

・・・もう私は人間を諦めるしかないようだ。

何度も何度もこのアイテムを取ろうとしても失敗した。

髪はまるでその瞬間だけ鋼のように固くなり鋏を通さず。
火の魔法で焼ききろうとするも全て吸収されてしまった。
凄く嫌だったが・・・薬品で髪の毛ごと溶かそうとしたが垂らした薬品が空中でただの水に変化してしまう。
悔しさのあまり鈴を握った瞬間に全身に強烈な衝撃が走った。
まるで自分の心臓を握ったようだ。

・・・タスケテ・・・まだ魔物には・・・なりたくな・・い・・・

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「・・・・。」
私は無言のままその続きを読む。



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***○年×月○日

日がたつにつれて私の髪は段々と伸びていくわけだがあの日以来、髪が金・・・というより
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