フルフルが別世界へ旅立って2年後のこと。
最寄のギルドから密林を経由して洞窟を越えてたどり着くは天高く聳える岩山と緑の草原地帯。
アプトノスの親子がのっそりとした足取りで水のみ場に水を飲みにきておりマッタリとした時間が過ぎている中、岩山から女性の甲高い悲鳴が当たりに響き渡りかの場所に集まっていた小動物たちはそれに驚き散り散りになっていった。
「いやぁぁーーー!! 来ないでぇぇぇぇぇ!!!」
涙やら鼻水やらで顔をグシャグシャにした女ハンターが一人、踝丈の草が一面に広がる草原を眼下に見下ろす事ができる足場の不安定な岩山を必死に走っている。
ただし彼女の後ろにオマケが2つほど憑いているが。
「もぅ!! な、なんでキノコの回収でぇぇ・・・((ギャァァーーー!!))っ!? ひぃぃ!!!?」
どうやら今回はキノコの回収がメインだったようだ。
確かに必死になって走っている彼女の手の中にはキノコが確りと握られているのできっとクエ自体は達成したようだが後ろの2つのソレを見るからに決して手放しで喜べるものではない。
その2つは己らの怒りをあらわすかの様に大きく叫びそれに恐怖感が更に増した女ハンターはその足運びを更に速くしてその2つから距離をとろうとするもその2つはそれを許さない。
もっと詳しく言うなら後ろの空中にいる2つのうちひとつの『桜色』のほうが今まさに口の中に灼熱の炎を溜めているところということと、対してもうひとつの『蒼色』は急降下して後ろから女ハンターを強襲するために足の鋭く尖った爪を前へと突き出しているということだ。
「いゃゃぁぁ・・・っへ?・・・・・・・・あ゛あ゛ぁぁーーー・・・・・」
逃げることだけ考えていた為に視野狭窄に陥っていた彼女は岩だらけの足場が不安定な先が見えない上り坂の頂上まで上る勢いそのままで速度を殺さずに走り抜けようと一歩を踏み出す。
しかし、その一歩は決して出してはならない一歩である。
その結果、彼女は前のめりになる形で崖から落ちていってしまったからだ。
追撃体勢をとっていたその2つも彼女の姿が崖下に消えていくのを見て追撃を中断するして空中で停滞しつつ追撃中断の意思を互いに確認しあって今来た道を戻っていった。
(ったく・・・なんで母さんの留守中にきやがるんだよ・・・)
(まぁまぁ『リオレウス』兄さん、そんなに気を立てないで?)
(つってもな『リオレイア』。・・・・)
【桜火竜】と【蒼火竜】の二匹はどうやら兄妹のようで竜にしか分からない発音で飛びながら会話をつつ帰路についていたのだが、蒼火竜がやるせない気持ちを桜火竜に対して愚痴を零していると突然目の前に閃光玉以上の強い発光が飛んでいた二匹の前で起こり目を瞑る暇もなく展開された光に二匹の体が完全に包まれ次の瞬間。
二匹を包んだ光が刹那に光の残滓を雪のように降らして飛行していた二匹共々消えてしまった・・・
・・・・・・・・・
・・・・・
・・・
ここは毎度お馴染み大陸南部のサバトのある街。
その街から離れた前回フルフルを誤召喚した洞窟の岩山の中腹付近。
そこは周りを50m以上の岩壁に囲まれた空の見える竪穴の空間。
その空間に不釣合いな紅い帽子を被った目から光が消えた魔女、アスコットが大きめの魔法陣を書いている。
「ハァハァ・・・今度こそおにぃちゃんを・・・でも失敗して竜を呼ぶと・・・トルネオ様から直々にオシオキが・・・ハァハァ・・・ぅぅ・・・し、失敗してもいいよね♪」
前回のフルフルであるシィアズィーを召還した後バフォメットであるトルネオに性的オシオキを半年以上食らっていたアスコットは半ば同性愛に目覚めかけているのは余談。
そんなアスコットは内股になって太もも同士を擦り合わせながら地面を杖で削るようにして書いた魔法陣の最後の線を繋げ終わると息を荒げて何かに期待するかのように魔法陣によって発生した光の集合体を凝視していた。
が。
「・・・あれ?? 何か魔法陣の角度がおかしい気が・・・???」
いつもの如く魔法陣が横に寝た状態で召還が始まるのではなく今回はなんと魔法陣の円が地面に対して垂直になっていた。
やがて何か大きなものが2つ魔法陣の光の中から現れる。
だがその2つの影は中々の速度で飛んでおりその2つの影の飛行予定線の先には物凄く固そうな岩壁になっており、影達はあまりの急さに回避が間に合わず2つ共に頭から思い切りその岩壁に突っ込んでしまったのである。
「(ガツン!!)ギャィ!?・・・ギャン!・・・・・・・(ドサッ」
「(カツン!!ギュィ!?・・・ギャン!・・・・・・・(バタン」
勿論其れなりの速度で飛んでいた2つの影達は自重と速度の乗った不意打ちで自滅してしまい2つ共に頭が綺麗に当たった瞬間、短い悲鳴と同時にどちらも時間が止
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