『異世界から呼ばれたら不幸ということではない・・・はず』


ここは熱帯地方に生殖している木々が生い茂る密林、その中でも昼ですら薄暗いと感じてしまうほどの密集度があるその最奥にて剣戟の甲高い音と共に慌しく走る男女の声がこだましていた。

「くっ・・・なんだコイツっ!?」
「話が違うじゃないっ! 」
息荒く何かに追われるように逃げる二人のハンターがほとんどポロ雑巾のようになってしまった装備で必死の形相で明るい場所へ、森の出口へ向かい走っていくと遥か後方の木が撓りをあげた。やがてどんな強風でも決して折れることは無いであろう木々があられもない方向へ撓ったかと思うとナニカがそこから次の木々へと飛び移っていく。
まるで身軽な猿のように飛び移る。
しかしハンター達はソレを見る余裕なんて微塵もない。

徐々に近づくその風きり音の低い音たるや、如何なる巨大な生物か想像にたやすかった。。

木漏れ日にすら映らせぬ影が徐々に、徐々に前方を走るハンター達へと木々を飛び移り、やがて一本の大樹の根元に砂埃と青々とした木の葉を巻き上げて止まったその影は暗がりの中から森の出口の方に振り向く顔は紅い残光を残しギロリと黄金色の双眸がハンター達を見据え腹の底から低い唸り声で威嚇をしているようである。

「ハァハァ・・・・ち、ちくしょう・・・はえぇっ・・・ギルドは楽な仕事だって言ったのにっ!!」
「そ、その上大きさも金冠サイズとか・・・あ、ありえないわっっ!!」
後ろからの言いようの無いプレッシャーの中二人のハンターは生きた心地がしない心境でも助かりたい一心で出口へと向かい文字通り草の根別けて走っていくそのさまは果たしてその追跡者にはどう見えるのだろうか。

出口がすぐ間近に迫った時、後ろから咆哮が聞こえて二人は更に速度を上げてより必死に逃げていった。
はたして二人は無事にベースキャンプにたどり着いたが顔面蒼白の上うわごとの様に何度も何度も呟きながら彼方此方から血が止まらない体と膝を抱えて蹲っていたそうな・・・


『迅竜・・・ナルガ・クルガ・・・・っ』


対して先ほどの森では未だに大樹の根元から2人が逃げたほうへ睨みを利かせる影一つ。
彼女・・・ナルガ・クルガはこの頃人間が頻繁に自身のテリトリーへ入るのを日ごろから疎ましく思っていた。
今日のこの日も森の日当たりの良い木陰で休んでいるところへの強襲である。
そんなことをされれば誰でも怒るもので、普段からの苛立ちがこの瞬間に爆発しいつも以上にハンターを痛めつけたナルガは暫し目を瞑ったかと思うと普段のトパーズのような金目に戻り再び森の奥へと戻っていくその体からは未だに警戒色が薄れていない。

(・・・なんで私のテリトリーに入ってくるのかしら?)

先ほどとは違って木々を縫うように移動せずにゆっくりと地面を歩きながら移動する彼女は徐々にリラックスしていきふとそんなことを思い、戦闘態勢では見せない顔で悩んでいるようでもある。

(私だって・・・何もしなければ何もしないのに・・・どうしてニンゲンってこうも無意味に攻めてくるのかしら?)

終いには目を瞑ってうんうんと悩めかしい声をくぐもらせながら住処の洞窟へとたどり着いてしまった彼女は先ほどの戦闘で多少なり受けてしまったキズを治すため静かに眠りについたのであった。

・・・彼女が眠りについて暫く後、地面が月光のようにポゥッと光だし点だったその光が目を見張るほどの脅威の速度で線になり、地面に奇妙で複雑な紋章を書きはじめたが彼女は今や夢の中。
音無く書かれていくその紋章は次第に大きく書かれていき終いには彼女の周りを大きく囲む様な大きさへとなり最後の模様として一部を欠いていた一番外の円をつないで数瞬の間の後、その紋章がカッと眩く光った。


・・・そして、その紋章の書いてあった後地には岩が大きく抉られた状態で残っており彼女は何処にもいなかった。


・・・・・・・・・

・・・・・

・・・


ここは図鑑世界の大陸の南辺境にある親魔領のとあるサバト支部の地下室。
ちょんと頭にとんがり帽子を被った如何にも魔女という感じの少女はなにやら床にチョークで大きな円を書いていた。
その模様・・・まさに先の彼女の下に描き出されたものと同一の紋様だった。

「・・・ふふふ・・・これで・・・これでやっと・・・私にもおにいちゃんが・・・・フフフ・・・」
ドス黒い笑みで塗られた顔からはとても体格年齢にあったようなものではなかったというのは置いておき、いよいよ完成したのか円の端と端を繋ごうとしたとき・・・


鉄で出来た重々しい扉が大きな音で開かれて光と共にその部屋を開け放った!


「アスコット! それは禁忌としたはずじゃ! すぐにやめt・・・」
「フフ・・トルネオ様っ! もう遅いですッ!!」
扉を蹴り開けて怒りと焦りの表情をしたバフォメットが魔女の元へ勢
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