『とある杜氏と下戸な鬼』



「今日は臨時収入があったから・・・豪華におでんを食う♪」
そんな鼻歌を歌いながら自宅に帰るどう見てもみすぼらしい格好の青年。
無精ひげを生やし、髪がぼさぼさ。
オマケに着ている服が所々破けている。

「〜〜〜♪・・・ん? 誰かいんのか?」
そんな彼がビン底眼鏡を掛け直した時、視界の中の暗がりなところで横になっている人影を発見する。
近づいて様子を見ることにした彼は近づくたびにその人・・・彼女が人でないことに気付いていった。
ただ現代のジパングには魔物娘なんてありきたりだ。
郵便局員のハーピー、警備会社のリザードマン、看護士のメデューサなど。

ただその横になっている彼女のその寝ている場所が問題だった。

「・・・どうして俺んちの前なんだ・・・」
そう彼の家の軒先に倒れているのであった。
その容姿をみるとまず皮膚が青い。
その上からスラックスの黒ズボンと女性用にクビレのある白いYシャツをきている。
体のラインがくっきりしていて・・・妙にエロい。

そして銀髪を腰まで伸ばしている。
正面に回れば黒縁の薄レンズ眼鏡と頭に角が2本。
しかも具合が悪いのかしかめっ面で「う〜ん、う〜ん・・・」と唸っている。
かなりの美人だ。

「・・・どうみてもアオオニです。本当にありがとうございました。」
はぁ、と溜息をついていると不意に足元から弱弱しい声が聞こえてきた。

「うぅぅ、す、すいません・・・水を一杯いただけないですか・・・」

彼は急ぎコップに水を注ぎ彼女の元へと持っていった。
多少楽になったみたいで体を起こして崩した座り方になった彼女に彼は彼女のことを心配して早く帰るように言うものの彼女はこういった。

「助けていただておきながら何もしないで帰るなんてオニの名が廃りますっ!」
と言うことで暫くココにいることになった。

そして今、ボロボロの一軒屋の居間にコタツ机をはさんで向かい合うように座る二人はおでんを突きながら話を交し合っていた。

「なるほど・・・鬼仲間と飲みすぎて自宅に帰る前に倒れてしまったと・・・あ、ちくわウマー。」
「はぃ・・・まさしくその通りですね。・・・あ、昆布いいですか?」
「どうぞ。まぁ、人間の方ではよくある話ですが、まさか鬼でこう・・下戸? がいるとは・・・あ、つくねいい感じですよ?」
彼女は「あぁどうも、いただきます。・・・」と言いつつ控えめに箸をとっていく。
彼はそういえばと思い彼女にこの重要な話題を切り出した。

「そういえばまだ名前を言ってなかったね・・・俺は明(あきら)って言うものだ。杜氏(とうじ)っていうものを目指しているが売れない為に貧乏している。」
「明ね、わかったわ。・・・私は棗(なつめ)。酒が弱いのに酒の蔵元をやっているわ。でも杜氏さんが何故かすぐやめちゃって・・・今経営の危機に瀕しているのよ。」
このとき互いの心の中で何かがはまった気がしたのはきっと気のせいではないだろう。

「なぁ、そこの杜氏・・・今、空いているか?」
「えぇ、ちょうど昨日やめてしまって・・・その腹いせに鬼仲間とヤケ酒飲んでたのよ。・・・明の作る酒ってどんなのがあるの?」
「ちょっと待ってて・・・あ、その前におでんをしまっておいてくれないか?」
よいしょっ、と席を立つ明を背に「それぐらいなら。」と言って片付けを始めた棗。
やがて奥に消えた明が再び居間に戻ってくる頃にはテーブルのみの片付いた状態であった。

戻ってきた明の腕の中には3つの一升瓶と6つの紙コップがあった。
そしてそれらを彼女の目の前に置いて瓶の中身をそれぞれ紙コップ二つずつにあけていく。

「っしょっと・・・まず、これ。この酒はウチの師匠の酒。そんでコレは俺が去年作ったヤツ。そんでコイツが今日まさしく仕上がったヤツ。」
「・・・うん、香りは師匠さんのヤツが濃くて他は同じね。味が違うのかしら?」
「ちょっとだけ飲んでみてくれよ。まずは師匠のから・・・」
そう言うと紙コップに少しだけ注がれた酒に口をつけていく2人。
最初は師匠さんのを、次に旧作を、そして最後に新作を。
二人は暫く黙っていたが不意に棗が揺れた、と思ったら明は押し倒されていた。

「・・・えっ? な、棗・・・一体?」
「・・ぬふふ♪ おいしい〜・・・でももっとおいしいモノが飲みたくてぇ〜・・・」
酔っているのか完全に目が据わっている棗にアタフタする明にお構いなくどんどん服を脱いでいく棗は自分が下着だけになると今度は明の下着を脱がしに掛かった。

「えっ!? ま、まって!! そ、そういうのは好きな人と・・・」
「んふ? 私・・・明に一目ぼれしちゃったんだもん・・・ね? 問題ないでしょ?」
「え・・・・・・い、いきなり言われても・・・そ、その俺もお前はタイプだけど・・・」
行き成りの告白にしどろもどろに
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