(たくっ! しくったぜ・・・
暗くなってきたから急いだのが裏目にでたか。
くそう、盗賊が暗闇で怪我するとか笑えねぇな、おい。
はぁ・・・いてっ! 足まで挫いたか・・・万事休すだな・・・)
夜の蚊帳が降りた暗いくらい崖の下にて彼は悪態をついていた。
正し腕や足は動けないので心の中で。
彼は盗賊だ。しかし一つの信念を貫き通している。
『悪い金持ちや悪い国からしかとらねぇし、誰もころさねぇ!』
いわゆる義賊であった。
そんな彼のもとには何十人という手下がいるが誰一人として彼の意に反するようなことはしなかった。
そんな義侠心のあり方から平民や奴隷、子供や大人から悪役のヒーローのような存在になっていた。
だがその彼は今崖下にいる。
なぜ?
それは数時間前、盗みに入った屋敷にてドジをした部下を救出するため殿をして体や足をふらつかせ、なんとかここまで逃げてきたのだが・・・足場が悪い通いなれたはずの道も夜の暗がりのせいで視界が極端に狭くなり、結果的に足を滑らして倒れてしまった。
崖の方に。
そしてそのまま崖下に落ちた。今の状況はというと・・・・全身打撲及び複雑骨折。
命があっただけでもラッキーなくらいだ。
だが動けないことに変わりない。
「・・・あぁ、腹減っ・・た・・な・・・」
まるで遺言のように呟いた彼は静かにまぶたを閉じ意識を失った。
その近くから何かを引きずる音が聞こえるが今彼は気絶しているので聞こえるはずが無く、やがてその引き摺り音は彼のすぐ横で止まった。
・・・・・・・・
・・・・・
・・・
「・・・ん? ここは?」
彼は意識が戻り自分の周りが暖かいと感じてその違和感を確かめるために目を開けた。
まず見えるのは木造建築の天井。
ついで首を右に動かすと日が差し込む窓があった。窓の外も見えた。
どうやら森の中みたいだ・・・
そしてその反対側を向くと?
「起きたみたいね。」
「っ!? おわっ!?」
ほぼゼロ距離に美人な人の顔が視界いっぱいに入ってきて驚きのあまり変な声がでた。
「ちょっと! 行き成りソレはひどくないかしら?!」
「うぇっ!? す、すまんっ! 行き成り顔が近くに・・・ってアンタ・・・メデューサか?」
「そうですけど? なに? 文句でもあるの?!」
そういうと彼女の頭の上の蛇たちは『キシャーーーッ』と威嚇してきた。
「あ、いや、魔物だからじゃなくてだな、行き成り美人の顔がアップでこられたらだな・・・」
「・・・び、美人?! も、持ち上げてんじゃないわよ! ふ、ふん!」
少し顔を赤くしたメデューサはツンっ、と顔を背けた。
しかしながら髪の蛇たちは先ほどまでの威嚇していた態度とは逆に好意的な視線を送っていた。
「・・・あー・・・えっと・・・」
と、彼が言いよどんでいるとどこかからドアが開く音がしてコチラの部屋に上半身を覗かせていた。
「あ、タロト姉さん。その人起きたんだ。・・・もう、した?」
「サ、サットっ!? ば、バカ言ってんじゃないわよ!!?」
「うふふ〜♪ だよね〜♪ 4日も付きっ切りで寝る間も惜しんで看病してたもんね〜・・・ふふ♪」
その妹(?) らしき人のサットからチャチャを入れられて動揺しているタロトと呼ばれたメデューサの髪の蛇は一様に恥ずかしそうだった。・・・なぜ?!
「あー・・・その看病してくれてありがとうな?」
「べ、べつに・・・た、唯単に目の前で人が死なれるのは後味悪いからよ・・・」
「嘘つかないの、タロト姉さん。必死な形相で家に彼を担いできt」
「だ、だだ、だまれぇぇぇぇ!!!!!!??」
(あぁ・・・髪の蛇たちがすっごい身を捩じらせてる・・・)
「あ〜やっぱり姉さん弄ると面白いわ♪ あ、テス姉さんが食事の用意できたって。早くしないと怖いよ〜、じゃ♪」
「えっ!? ちょ、ちょっと! サットォ! あんたのせいでどれだけ経っているのか分かっているのっ!? あ゛ぁぁ!! もうっ!!!!」
「・・・凄い家族だな・・・」
その後まだ包帯をマミーのようにぐるぐる巻いた彼を器用に尻尾で巻いて移動するタロトだった。
そしてリビングらしき部屋について彼はまたびっくりした。
「むぅ? おそかったのぅ? タロト?」
「サットのせいよっ!!!」
「いや〜ん♪ テス姉さ〜ん、タロト姉さんがイジメルぅ。」
この姉妹・・・全員ラミア種だった。
「・・・あー・・・そのぉ・・・」
「うん? おお、お主目が覚めたか! では・・・自己紹介からかの? 」
「そだねー。」
彼に気付いたテスと言われた人が彼に向かって自己紹介をしようとしているその横で気ダルそうにテーブルの上の料理をソッとつまみ食い寸前のサットがいた。
「これ!」
ぴしっ! とテスが尻尾にてサットの手を叩く
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