夏休み前の学校にて僕は自身の勇気を振り絞って今まで思いを寄せていた女の子に告白した。
人気のない放課後に学校の校舎の屋上に来てもらった。
ガチャッ・・・
ドアが開けられた。その先には・・・自分が今まで思いを募っていて、今日告白しようとする相手がいた。
その娘の名前は『和泉野 明日香(いずみの あすか)』さん。
自分の学園のマドンナ的存在の彼女であった。
「なぁにぃ〜? 昌ちゃん? ここに呼び出して?」
・・・そして幼馴染でもある。
「あ、あのさ・・・オレお前のこと好きだ。」
「・・・ふぇっ!? い、いきなりどうしたの!?」
予想外の言葉だったらしい。
明日香のチャームポイントであり種族的特長でもある麦畑に棚引く麦のような色のフサフサな、それでいて空気を多く含んでいるためかふんわりとしている二本の尻尾を不規則にブンブン振っている。
しかも耳もピクンピクン、と忙しなく上下と時折左右に起伏する。
・・・相当動揺しているようだった。
「だ、だから・・・」
「う、うん・・・」
気恥ずかしさの余りお互い赤くなり顔を伏せてしまう。
そのまま言葉を発しない時間がまるで数時間流れた気がする(実際は1分もたっていなかった・・・)中で青年『伊上 昌(いがみ しょう)』は意を決して一世一代の告白をするっ!
「お、幼馴染じゃなくて・・・異性として付き合ってくださいっっっ!!」
「・・・・・・・」
昌がギュッ、もと目を閉じて叫びにも近い声量で発した言葉は暫くの沈黙の後・・・彼女明日香に届いた。そして彼女は意外な行動にでた。
・・・・ぎゅっ
「・・・へっ?」
「・・・もっと・・・もっと早く言ってよ・・・・遅いよぉ・・・・ばかぁ・・・」
昌は明日香にギュッと抱きつかれていた。
そしてその抱きついた本人は少し涙目になっていた。
「あ、あのぅ・・・明日香?」
「その言葉・・・グスッ・・・どれだけ待っていたと・・・ヒグッ・・・思っているのよ・・グジュッ・・昌くんのばかぁ・・・・」
しまいには更に力強く抱きつかれて挙句に泣かれてしまう。
明日香のその行動に昌はハッとしてアタフタするも状況は改善されない。
すると・・・
「グスッ・・・妖狐で・・・うぅん・・・私でいいの?」
「っ! 明日香じゃなきゃダメだっ!」
「っ!!・・・うれしぃ! やっぱり昌ちゃんを好きになってよかったっ!!」
一度抱きつきを解いて昌の肩に両手を張った状態で離れた明日香が不安げに聞いてきた答えを昌は力強く肯定する。
そして明日香は歓喜の余り再び涙し抱きつく。それに応えようとフルフル震えながら明日香の肩に手を回し、自身の胸に抱きこんだ昌。
こうして校内一のバカップルが誕生したのである。
そしてそんなバカップルの夏休み、しかも夏祭りというと・・・・
「明日香、やっぱりお前はきれいだよなっ!」
「うぅん! 昌君のほうが断然いいよぉ! 凄くあってるもん♪」
今日は夏祭り。人は祭りと聞くとテンションが上がる様だが、この二人は日ごろからテンションが高いためどうなるかと言うと二人して部屋の一室で浴衣を見せ合っているのだ。
・・・まだ日が出ている最中から。
「やっぱり綺麗過ぎるよぉ、明日香ぁ〜遅いちゃいたいよっ!!」
「・・・しょ、昌ちゃんになら・・・いいよ?」
「っ!・・・本気にしていい・・・のかな?」
そういうと距離のあった二人の間を昌がゆっくりと詰めていく。
対して明日香は尻尾がユラリユラリとゆっくり揺らめいている。
・・・期待の眼差しで・・・
「っ! 明日香っ! ・・・んっ!」
「んんっ! ・・チュルッ・・・チュッ・・・チュパッ・・・ツプッ・・・ぱぁあっ・・・激しいよぉ♪」
ガマンしきれなくなった二人は互いの頬に両手をあて一気に距離を詰めて互いの唇をなぶりあった。
そして暫くお互いの荒い息と水音だけが響いていた。
「っぱぁ・・・・ハァハア・・・明日香・・・」
「っぱぁ・・・ハァハァ・・・うん。いいy」
そして本番になる・・・その瞬間を狙ったかのように・・・
ザーーーーーッ・・・!!
「ちょっと明日香っ! 一体いつまd・・・・あっ・・・・」
「あっ」
「あっ」
襖を開けたのは明日香の母である『伽耶(かや)』さんだった。
『・・・・・・・・・・。』
物凄い気まずい空気が支配するその時間を割いたのはやはり年の功であった。
「ぁぁ・・・んんっ! こんなところで乳繰り合ってないで、早く祭りに行ってきなさい。もう夜だよ?」
「ぁ・・・は、はい。で、では・・・」
「ぁ・・・い、行ってきます・・・」
少し赤い顔の母に対して耳まで真っ赤な二人はそそくさと家を後にするのであった。
カラン、コロンと下駄が響くアスファルトを歩く二人の
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