「なんだ、これ?」
いつもどおりの帰宅時間、いつもどおりの帰り道、いつもどおりの寄り道・・・
全ていつもどおりの生活で今日も終わるはずだったのに、目の前には見慣れない看板が照明に照らされていた。
『祝! 開店 【もふもふ亭】 →路地裏すぐ右。』
「・・・胡散臭い。だが、面白そうな予感がするっ! よし、更に寄り道だ!」
そういうと気持ちを弾ませて意気揚々と路地裏へ歩を進める為に一歩踏み出した途端のこと。
パァァーーーッ・・・・・
「うぉっ!? な、なんだ? ま、まぶ・・・し・・・・・・・・い・・・・・・・・・・・・」
その男は眩しい位の光に突然包み込まれてしまった。
そしてその光が徐々に弱まってくる。
だがそこには男の手にあったはずのコンビニ袋だけが残されているのみであった。
かの男はと言うと・・・・
「・ぶ・・・・し・・いっ!? ・・・? あ、あれ?」
男は先ほど光に包まれる際に構えていたポーズのまま【こちら】に現れた。
そして男は恐る恐る目を開けるとそこには・・・
『『ようこそ♪ 【もふもふ亭】へ〜♪』』
どこかのキャバレーのようなエントランスだろう場所に立っていた男に対してズラッと並んだ色とりどりの獣系魔物娘達が腰を綺麗に折り一糸乱れぬ歓迎の言葉で男を迎えているところだった。
ネコマタ。
稲荷。
ミノタウロス。
ワーシープ。
グリズリー。
ワーラビット。
ユニコーン。
ワーキャット。
妖狐。
ケンタウロス。
ラージマウス。
ワーウルフ。
ホルスタウロス。
ナイトメア。
スフィンクス。
アヌビス。
バフォメット。
・・・パッと見で分かったのだけでも壮観だ。
そう呆けていると一人の狐っ娘、妖狐らしき人(?)がスススッと歩み寄ってきた。
「あのお客様? もしかして当店は初めてですか?」
「は、はぃ・・・そうです・・・」
「左様でしたか。では簡単にご説明させていただきますので。・・・どうぞソチラのソファへ腰を掛けてお待ちください。」
後から聞いた話、この妖狐の『梨花(りか)』さんがどうやらココのオーナーのようで・・・
暫く座ってまっているとお茶をのせたお盆を持っている黒い狐さんと先ほどのオーナーさんが歩いてきた。
「お待たせいたしました。では簡単に当店のシステムをご説明いたします。まず当店は風俗に近いですが本番は無しです。ここの趣旨は・・・
『耳、尻尾、髪、肉球を心行くまでモフモフし、シャブリ、舐めて頂くことで安心と満足を提供すること』
・・・です。でもどうしても催してしまった場合は『双方同意の上』でなら女の子のほうから案内していただけるかと。」
「はぁ・・・なるほど・・・」
「なお、無理に襲おうとした場合は『魔物的制裁』を加えた後にデビルバグの巣穴に強制転送いたしますので・・・あしからず♪」
そういう梨花の顔は真っ黒な笑みが出来ていた。
(今、向けられている笑顔が物凄く怖いですっ!)
「さて、これで説明は終わりますが・・・何か質問は?」
「いえ、特にないです。」
「左様ですか♪ では今日はどの娘にいたしましょうか?」
男は梨花の言葉のあと沈黙をしてしまう。
「あ、あのぅ・・・」
「ん?」
「わ、わたしなんて・・・そのぉ・・・い、いかがでしょうか?」
男が黙っていると不意に前から、正確には梨花の横から聞こえるか細い声が聞こえてくる。
どうやら梨花の隣の黒稲荷の娘が言ったみたいで、顔は俯いていたが1本だけの尻尾がゆったりと揺れていた。
「あら? 『若草(わかくさ)』から自分を押すなんて珍しいわね?・・・お客様、いかがでしょう? まだこの世界に入って日も浅いですが、気立ても礼儀もしっかりした娘なんですが?」
「あっ、じゃ、じゃあお願いします・・・」
「はいッ・・・・」
なんだか二人の間に桃色の空間が発生している気がする・・・
「うふふ♪ ではお客様? 今回は初回と言うことで料金はサービスしておきますね♪ それでは、コチラへ・・・」
その場の雰囲気に微笑んでいた梨花は笑顔を崩さぬままにスッと席を立つと音もなく歩き始める。
立ち上がって移動を開始した梨花の後ろから男と若草は釣られて移動する。
歩くたびにフリフリとゆれる9本の梨花の尻尾を見ていたら不意に梨花が立ち止まった。
「ではこの部屋をお使いください。・・・それでは、ごゆるりと♪」
クルリと振り返り目の前の和室らしき部屋の襖を手のひらでさす梨花は言うことだけ言うとペコリと頭を下げてススッと一人で廊下の奥へ消えていった。
・・・笑顔で。
「え、えっと・・・」
「えっと・・ご、ご指名ありがとうございます。き、今日は思う存分モフモフしていってください。」
立ったままの男の前にスッと回りこみゆっくりとした動作で襖を開けて中に入り、
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