『仕事よりも・・・』



それはいつもの朝。
コカトリスさんの悲鳴と走り出す地面の擦り音とセイレーンさんの朝の唄が聞こえてくる。

しかし・・・・

「・・・えっ? な、なんで・・・なんで枕が・・・・」




『僕の倍以上にでかいんだぁぁーーーー!!』




その日、彼の欠伸代わりの第一声がコレだった。
自分より大きくなった枕の上でアタフタしている彼の慌てようを上から見ている視線があった。
その様相はというと・・・

フェアリーのようなサイズと羽。
サハギンと似たような服。
オーガやアカオニの様なツノ。

・・・諸兄らはおわかりであろうか?

「きゃははっ! やっぱりカイのリアクションは面白いわぁ! ぷくくくっ・・・」
「っ!! なっ、お前かっ? ウィナぁぁっ!」
カイと呼ばれた青年は怒りを露にして腕を振り上げて感情を主張するも、その行動を見て更に笑いが止まらなくなるウィナと呼ばれた彼女。

「くっそぉぅ・・・この頃毎日じゃないかっ! いい加減やめてくれよっ! 毎回大変なんだぞっ」
「いいじゃな〜い♪ 滅多にできない体験をほぼ毎日出来るんだから♪」
「くっ、あぁ言えばこう言う・・・・っ」
カイは苦情を言うもサラリとイイ笑顔で流され、さらにはニヒルスマイルでもって皮肉を上乗せするウィナ。
カイは毎回の事ながらグゥの音も出ないのであった。

「だけどもう流石に職場へ遅刻するのは・・・」
「いいじゃない♪」
するとスゥーッ、とカイのもとへ降りてくるウィナ。
ポスッと小気味良い音をさせて着地した。

「ぅぅ、毎回起きたらウィナと同じサイズって・・・なんか変な気分。」
「きゃははっ♪ その顔いいっ!」
今度は面と向かって笑われた。

「んで、またヤんなきゃならないのか・・・」
「そんなに・・・嫌?」
ハァ、と一つ溜息をしてサラッと流しジトッとした目でウィナを見るカイ。
そのカイの表情を見てハッとなったウイナは笑いが止んで、今度は不安げな目でカイを見つめる。

「・・・嫌だったらそもそもしないよ。・・・今日こそは言わせてよ。」
「な、なにを?」
カイは首を左右にフルフルと振って目をしっかりと開けてウィナをジッと見つめる。
その迫力に一歩後ずさるウィナ。



「幼馴染じゃなくて・・・恋人にしてよ? ウィナ。」
「っ!! ・・・な、ななな、何言ってっ・・・」
顔が徐々に林檎の、否。それを通り越して夕日のように赤くなってしまったウィナ。

「だってウィナってさ、毎回言おうとする度に犯すんだから・・・こ、告白ぐらい・・・い、言わせろって・・・」
「・・・っ・・・・・っっ・・・!」
つられてカァーーッ、と赤くなるカイ。
そして二人とも俯いてしまった・・・

「・・・こ、恋人として・・・考えてやらなくも・・・ないよ?」
どもりながら視線を斜め下にずらして喋ったウィナはそのまま黙ってしまった。

「・・ぷっ。それって・・・イエスだろっ?」
そのウィナの表情を垣間見て噴出してクスクスと笑うカイ。

「っ! ば、ばか・・・・」
「じゃあ・・・初めての繋がりだね。恋人として。」
もうコレ以上ないくらい赤くなったウィナにさっきの意趣返しと言わんばかりのニヒルスマイルになるカイ。

「・・・調子のるなっ・・・ンッ・・・」
「ははっ・・・ンッ・・・」
そしてそれに耐えかねたウィナがキスという口封じをカイに敢行し、カイもそれに甘んじた。

・・・そして二人は幼馴染としてでなく恋人として新たに繋がっていったのであった。

・・・・・・・・・・

・・・・・

・・・

「・・・んで結局今日も仕事が・・・」
「・・・えへへ♪」
事後の余韻に浸るウィナとは対象的にカイは物凄く憂いのある表情をしていた。

「もう流石に部長とか、副部長がくるんじゃないかな・・・」
「大丈夫でしょ? ・・・それより♪」
抱きつく力を更に強めて下からキラキラ目線でカイに何かを訴えるウィナ。

「・・・はぁ、わかった。『また』付き合うよ・・・はぁ・・・」
「よぅし♪ そうこなくっちゃ♪」
その視線に根負けして一体何度目かわからない『お付き合い』にカイは溜息を持って、少し意気消沈しつつも顔は微かに笑っていた。

対してウィナも一番いい笑顔で答える。それだけで、どれだけ嬉しいかがわかるくらいにニッと笑う。

「・・・の前に戻してくれない? 」
「おっと、ゴメンゴメン♪」
やがてカイはもとの大きさに戻るとクローゼットから服を取り、着こんで外出の準備をする。
やがて準備が整い玄関近くまで行くとウィナが直ぐ近く、いやカイの肩の上にパタパタと飛んで来てチョコン座るウィナ。

「やっぱり昔から変わんないね。・・・うん。やっぱりこれが一番落ち着くや。・・・ね? ウィナ?」
「う、うるさいっ! ・・・・・・・ばかっ・・・」
「え
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