「よいしょっ、アニーっ! これはどうすればいい?」
「えっと・・・それはそっちに蒔いてくれないか? アリー。」
とある広大な畑の一角に一組の夫婦の姿があった。
しかし夫は人であったが・・・
「あ、アリーっ! 翼に土ついてるよっ!?」
「えっ!? あっ! ほんとだ・・・・」
パッパッと背中から生えている一対の白鳥の様な白い翼についた土汚れを軽く羽ばたかせて取り除くアリーと呼ばれた妻は天使だった。
「ふぅー・・・・今日はここまでかしら? アニー。」
「うん、そうしよう・・・・ふぅー・・・」
溜息を一つ吐いて片づけをはじめる。農具を背に背負い、今まで蒔いていたものを纏め始めて、二人は両手じゃ抱えきれないその種野菜を二人の間にシーツを張った上に乗せて移動する。
終始笑顔なのは言うまでもない。
そして和気藹々としたホンワカとした空気で家路に着いた。
そして二人はまず納屋へ移動して今までシーツに乗せていた種野菜をしまう。
次に背中の農具を下ろしてしまう。
「うぅぅ〜ん、疲れたぁ〜・・・」
と腕を伸ばして爪先立ちになるアリーの表情は悩めかしく眉尻を下げて眼鏡が少し傾き口がへの字に・・・
アニーはこれを見て胸がキュンとなったが・・・
「さ、さぁ! 晩御飯の準備をしようかっ」
「・・・? どうしたのアニー? 」
「な、なんでもないっ!」
と言うなりそそくさとキッチンへ向かってしまったアニー。
アリーは訳がわからず首を傾げるだけだった・・・
ついでに眼鏡も傾けて・・・
そして少し間を空けてアニーに続くアリーは室内にもかかわらずパタパタと飛んで移動を始めた。
「・・・あ、ここ埃が溜まってる。・・・あとで掃除しよう。」
実益を兼ねて。
そして台所へと移動すると美味しそうな匂いがアリーの鼻へ入ってくる。
そしてまだ距離があったアニーとの間をパタパタと再び翼で移動をするアリー。
「・・・あ、カンテラのオイルが残り少ないなぁ・・・あっちの蝋燭も・・・」
実益を兼ねてっ!!
「〜♪ あ、アリーあと少しでできるよ〜?」
コトコトと何かを煮込んでいるなべの前にアリーの接近に気付いてクルッと振り向いたベージュ色のエプロンを着用したアニーがいた。
「美味しそう・・・今日は?」
「ふふっ♪ 今日はアリーが戻ってきて一ヶ月の記念にアリーの好きなクリームシチューにしたよっ♪」
「わぁ♪ ありがとう! 」
今日の献立を聞いたアリーはまるで太陽のような笑顔になる。
そして何事も無く夕飯を食べ終わる二人だったが・・・
「・・・ねぇアニー。今日で私が来て一月経つのよね?」
「え? ・・・うんそうだね。」
食後のお茶を飲んでいると行き成りフッと暗い顔になりポソリと話しかけてくる。
その雰囲気に気付き真剣な顔で応えるアニー。
「・・・でも、ね?・・・まだ一回も・・・してないじゃない?」
段々と紅潮していき俯いてしまうアリー。
その内容を察してアニーも赤くなってしまう。
「・・・ねぇアニー・・・私って魅力ないのかな・・・」
だがソレもつかの間。顔から赤みが消えて今度は沈んだ表情に。
「そんなこと無いよっ! 」
ガタッ、と椅子を押しのけ立ち上がり普段は出さないような大声を出してアリーの発言を否定するアニー。
そしてズカズカと彼女の後ろに歩いていき・・・
ふわりっ
優しく、ゆっくりと・・・でも力強く抱きしめる。
「・・・実を言うとね、怖かったんだ。君と繋がることで、何か・・・何かが壊れるかもしれないと思うと。」
「アニー・・・」
ギュッと更に強く抱きしめるアニー。
ソレはまるで女の子が悪夢にうなされて人形を抱くように・・・
アリーはその彼の独白を黙って静かに聞いていた。
「アリーは天使だ。でももし・・・もしだよ? 性欲の虜になったら・・・堕天してしまうんじゃないか?」
「・・・」
アニーは未だにアリーを抱きしめたままだった。
そしてアリーもただ静かに聴いている・・・
微笑を携えて。
「だから・・・僕の手で君を貶めるようなことは・・・できないよっ」
「・・・アニー。」
彼の優しい言葉が紡ぎ終えるとアリーはアニーの両手をそっと抱え込むようにゆっくりと握る。
「・・・私ね、最初は怖かった、ううん・・・今でも怖いの。アニーと繋がることで堕天してしまうんじゃないかって。」
「・・・アリー・・」
今度はアリーが独白を始めた。
その抱いたアニーの両手をぎゅっと、愛おしく抱いて・・・
「アニーのおかげで私は愛を知ったの。アニーのおかげで恋をしたの。・・・そしてアニーのおかげで幸せなの。」
「・・・」
ピトッ、と抱いたアニーの腕に自身の頬を当てるアリー。
そしてアニーはただ黙って彼女の言葉を待っている。
「でもね・・・私、我侭なのかな? 今も
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