さて突然だが・・・エキドナの住処、というと洞窟を思い出しそうだがココ『オラクル家』は文字通りの家である。しかも豪邸。場所も親魔物領の町の中心部である。
その中心部のさらに中心にあるのがテンダーの母であるエキドナの超大豪邸である。
その敷地の広さ、優に東京ドーム10個分である。
今現在は数人の家族のみとなっているが元々は100人を越える大家族が暮らしていた。
その名残か、どんな娘が生まれても不自由ないように少し部屋や廊下が広めの作りになっている。
中庭に目を向ければまだ幼いアルラウネとマンドラゴラの少女が仲良く並んで日光浴をしていたり、そのアルラウネの娘から蜜を貰っているハニービーやジャイアントアントがいた。
廊下を挟んで反対側のプールでは育ちかけのマーメイドやスキュラ、サハギンの娘達が遊んでいる。ちなみにプールごとに海水、淡水どちらも完備しているし、海水のプール同士は透明で大人のマーメイドが入って行き来しても余裕な太さのパイプで繋がっている。
また別の場所では簡易ながらも闘技場みたいな施設があり、そこでは小さなリザ娘とサラ娘、果てはウシオニやオーガが己の力を高めあう為に戦っていた。
勿論刃引きした武器等で。
さらに別の場所では机や椅子が並べられていてポツポツと隙間を空けて数人の子供が何やら真剣に書き込んでいた。
ゴブリン、ドワーフ、サイクロプス、アヌビス・・・
魔物娘の中でも比較的頭の良い種族の集まりのようだ。
そんな豪邸の一室の図書室らしき部屋から出るとテンダーは自室に向けて長い廊下歩き出した。
ご自慢のモフモフしている手に本を数冊抱えてテクテクと無言で眠そうに歩いていく・・・
あと数メートル先の曲がり角を曲がれば自室というところで誰かに道をふさがれた。
・・・母親そっくりだが髪の色が藤色ではなくて黒い。さらには髪をバッサリ肩口で切りそろえている。
そんなエキドナが腕を組んでトグロを巻いて待っていた。
「のぅ、テンダーよ。お前が旅に出るのは本当かえ?」
「あらら、ララノア姉さんって耳が早いのね。」
【ララノア】と呼ばれた黒髪のエキドナは姉妹の長女でありこの豪邸の実質的な所有者でもあった。
そしてその姉が眉尻を下げていかにも悲しい表情をしながらテンダーへと話しかけた。
それを困った表情で返すテンダー。
「・・・ふむ。本当のようじゃのう。・・・まったく、本ばかり読んでいたせいじゃろ?少しはワシみたく妹たちの世話をすればよいものを・・・」
「あら? わたしだって教えてたわよ? ・・・数学と魔術を。」
「阿呆、おぬしの言う数学はもはや学者レベルではないか。さらには魔術といってもお主は基本的に複合じゃろうがっ。一体この屋敷でソレを使えるのが何人いると・・・・はぁぁ・選別じゃ。・・・・・・・・持ってゆけ。」
はぁ〜、と首を左右に振りながら一つ溜息を吐いたララノアは蛇の下半身・・・尻尾の先で巻いてあった何かをテンダーの前にズイッと差し出した。
・・・なにかの本のようだが?
「わわっ!?・・・あれれ? 本?・・・っ?! こ、これはっ!? わたしが欲しくて止まなかった『魔道真書・第9巻〜大魔法編〜』!?!?!?」
「ふふふ〜♪ワシの取って置きじゃ♪」
「ありがとうっ! ララノア姉さんっ♪」
行き成りコッチにシュッと伸びた尻尾に驚くも本を受け取りタイトルを見た瞬間の目の輝き方はキラキラという表現では足りなかった。
そのテンダーの嬉しさの余り耳がピコピコと上下している様子をみていたララノアが自慢げに胸を張りニッと笑った。・・・尻尾はゆったりと左右にゆれている。
そして礼を言うと同時にテンダーはそのモフい手足をいっぱいに使ってララノアの体に抱きついた。
(っ!!・・・ぉぉ・・・なんという・・・・バッフォィっ!!)
・・・モフモフの手足による背中へのさわさわ感と共に固い角とフカフカの髪と耳による芸術的な不文律っ!
・・・さらに追加攻撃といわんばかりに頭をグリグリと腹にこすり付けてくるっ!
そして上目遣いっ!
・・・恍惚とした表情で上を向くララノアの鼻からは真っ赤な感情が流れていた。
ララノアと別れたテンダーは自室へと戻り、机に備えられた羽ペン入れにインクを注ぎ引き出しから数十枚の便箋と封筒と蜜蝋、焼き鏝と蝋燭を出した。
「ふふ〜♪ 姉さんや妹達・・・今どうなっているのかしら♪」
そこには何かに期待してワクワクしながら手紙を書く片眼鏡のバフォがいた。
彼女の旅はこれから始まるのであった・・・
【続】
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