『計画が・・・』

その日・・・ある男がフラレタ・・・
喫茶店での出来事だった・・・

「アナタのとこの猫に散々な目にあったから・・・もう逢いたくないわっ!」
「えっ?! ちょ、ちょっと・・・・」
・・・彼にほぼ関係ない理由で・・・
いや、関係はあるのだろうが直接的な理由でない。

彼のうちにには猫が一匹居る。

主人にべた惚れの猫が・・・
その猫は主人である男の前では文字通り猫を被っている。
主人が女を部屋に連れ込んできたとき男がいるうちは大人しいが、主人が居なくなったとたんに暴れ牛・・・もとい・・・暴れ猫になる。

ゆえに冒頭のように別れ話にもつれること幾星霜・・・・・

「はぁ・・・帰ろう・・・」
・・・その背中は影が差していた・・・・
席を立ち彼女だった人の分も払い・・・帰路につく。

空はもう暗くなり寒空のした彼は早足で家に向かう。

・・・その後ろの影が「ズズズ・・・」と動くと・・・

「・・・見つけました・・・ヤマトさん・・・」
それは今し方別れた彼女に瓜二つの人物だった。
・・・そして再び彼女は影に沈み・・・・姿を消した・・・




・・・・・・・そんなこと等知らぬヤマトは住処のマンションの6階の一室に着き重苦しい気持ちでドアの鍵を開ける。
ガチャリと開けたドアの先では・・・

「ニィッ♪」

・・・愛すべき愛猫ミナがチョコンと玄関先に座ってお帰りとでも言いたそうな感じで鳴いた。

「あぁ〜ただいまぁ〜ミナ♪」
・・・デレデレだった。
そしてヒョイッと猫を抱き上げて背中をさすり頬擦りする。

「みぃ〜〜♪」
・・・猫もデレデレだった。
ゴロゴロと喉を鳴らし物凄く嬉しそうである。

一時のモフモフタイムを味わったヤマトは名残惜しそうにミナをおろして台所へ向かう。
そして服を脱ぎ薄着になり腕をまくって・・・

「失恋したときは・・・菓子作りで気を紛らわすっ!」
・・・実はヤマト君、とある大人気洋菓子店のパティシエでもあった。腕前は・・・彼が居ないと売り上げが1割減るといわれている。
余談だが得意なのはパイ皮のカスタードシユークリームだ。

そんな彼は薄力粉、卵、砂糖、そしてバター。
・・・どうやら焼き物をしようとしているようだ・・・

「まずは練るっ! バターを練るっ! クリーム状になるまでッ! 僕はッ! 練るのをッ! やめないッ!!」
「にゃぁっ!」
・・・意味不明な呪文とも取れる言葉を吐きつつヤマトは調理を始めた・・・
・・・途中ミナの合いの手を混ぜながら・・・

「そして次に・・・Mr.シュg・・・ゲフン・・・砂糖と卵をバターに加えて・・・まぜるぅぅ」
「にゃぅぅぅ♪」
・・・いま「とある方」が見えた気が・・・気のせいだな・・・

「そしてコイツ・・・薄力粉の出番だぜぃ♪」
「うにゃ〜♪」
・・・あれ? 猫って二本足で立てたんだ・・ヘェー・・・
まぁヤマトには見えてないみたいだが・・・

「さっきのに混ぜ混ぜ混ぜ・・・・・上手に塊できました〜♪」
「にゃう♪」
・・・モン●ンの肉焼きの音が流れた方。大丈夫だ。それが正解だww

「そしてこの塊を冷蔵庫にいれ30分待つ。・・・・其の間に風呂にいってこよう・・・」
「・・・」
ヤマトはスタスタと自室に向かっていってしまった・・・
残されたミナは・・・

「・・・にひひひ・・・今回も失恋成功やな・・・・にひひひ・・・・」
チョイっと背を引いて2本立ちすると両前足(?)で口を隠し悪人顔している。
・・・あれ? 普通猫は喋らない・・・はず・・・

「計画通りっ・・・・・そして今夜は記念すべき出逢って1年目・・・にひひひ・・・」
・・・キラがいる・・・

「今日・・・今日が勝負や・・・」
・・・少し憂いを帯びた表情を・・・したと思ったら・・・

「ご主人のドーテーはウチがいただくっ!!」
・・・酷く興奮していた。

・・・そうこうしていると・・・

「ふぅ・・・ちょうど30分たったな・・・」
ヤマトが戻ってきた。
ミナはすまして座っている・・・いつのまにか・・・

「よし、冷蔵庫から生地を出して・・・ノシ棒で伸ばして・・・今回は四角いのでいいから包丁で切って・・・これでよし。・・・あとはオーブンを170度にして・・・3分待つッ」
「にゃぅっ♪」
・・・・もう何もいえねぇ・・・

「3分・・・それはッ・・・・余熱時間ッ・・・・そしてッ・・生地を・・イレルッ」
「にゃう・・・・にゃう・・・・」
・・・ざわ・・・ざわ・・・とでも言いたいのか?

「そして・・・・15分だ。15分焼き上げれば・・・白い皿の上に沈めてやるっ・・・」
「にゃっにゃ〜ん♪」
・・・力石?



チーーーン!



「綺麗なプレーンクッキーができましたぁ♪」
「にゃんにゃん♪」
・・・・見るからに香ばしい匂いが漂う・・・

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