『万事塞翁が【魚】』




ここは親魔領の街『アトワー』・・・ここの海と間違えるくらい大きな湖に一人のシー・ビショップが泳いでいたが・・・




『餓死寸前でした・・・・』




(・・・あぁ・・・誰か・・・儀式をしてくれと・・・よんでい・・る・・・気が・・・す・・・)
そのシービショップ・・・【アルル】は薄れいく意識の中で自分達シー・ビショップを待ち望んでいるであろう夫婦達が呼んでいる幻聴を聞いて・・・意識が落ちた・・・



一方・・・



「じゃあ行って来る。」
「行って来ますね。【ギル】、また一人にさせちゃうけど・・・」
「もぅ・・・大丈夫だよ。父さん、母さん。」
アトワーの大港の船着場の一角に立派なマストを3本メインにつかった調査用大型帆船「アトワス・レイヤー号」の前で別れを惜しむ親子三人。
心配性の母は2ヶ月に数日しか戻ってこれない自分達夫婦に罪悪感を感じる・・・

「ほら母さん。顔が暗いよっ」
「あっはははっ、息子に心配されるとはな・・・くっくっくっ・・・」
「・・・ぐすっ・・・うん行って来ます。ジル。」
別れの際の悲しさから『毎回』涙を流す母を慰める息子。
・・・普通は逆なんだが・・・
それを見て笑う父。

・・・これがいつもの儀式みたいなものだった。
そして夫婦は帆船に乗り込み・・・

「出航ーーーーっ!!」
カーン、カーンと鐘が鳴り響き・・・帆船のメインマストに帆がたなびき、足場が回収される。続いて錨があがり・・・・少しずつ巨大ともいえる帆船が動き出す。

「ちゃんと食事は3食とってねーっ、それからそれから・・・・」
「母さーーんっ! 心配しすぎだよぉぉぉ!!」
「はっはっはぁっ!!」
・・・出航しても尚甲板からギルの心配をしてくる母に気恥ずかしさで紅くなりながら叫ぶギル。それを見て笑う父。

・・・今日も平和に出航する船であった・・・


・・・・・・・・・

・・・・・

・・・

見送りの後の帰り道・・・ギルは何気なく自宅近くの浜辺にいく。
そう・・・ただなんとなくである。

だが・・・

「はぁ・・・今日のご飯はなにn・・・・えっ・・・・人・・・じゃないっ?!」
浜辺に行くために岩場を少しだけ下って、いざ浜辺を見ると・・・

翠の鱗の白い服を着た人魚が打ち上げられていた。
その近くには・・・石版と白い帽子があった。

「・・・・ん〜・・・多分所持品から見て・・・シー・ビショップさん・・・かな?」
・・・そっと近づいて行き・・・顔をのぞくと・・・

「っ!! 何でこんなに痩せているのっ!?・・・・・・よし。息はある。このままじゃ本当に死んじゃう・・・・・・・・ん〜・・・」
手を彼女の口元に翳し・・・息のあることを確認するも弱弱しい・・・しばし悩み・・・

「仕方が無い・・・・・・・・・よいしょっ・・・」
ギルは周りに落ちている【彼女の所有物であろうもの】を集めて彼女を俯きから仰向けに体をずらし・・・彼女の腹上に固定する。
そして・・・脇下から手を突っ込み反対側の肩に手を添えて支え、もう一方の手はくの字に曲がった尾ひれのところを通して・・・しっかりと尾ひれを支える。

・・・いわゆるお姫様抱っこのスタイルである。

その状態でギルは自宅まで走った・・・

・・・・・・・・・

・・・・・

・・・

そして家に到着し乱暴にドアを開け放ち、すぐさま彼女を浴室へ運び入れ・・・
浴槽に浸ける。
空の浴槽に入って凭れ掛けた彼女をそのままにギルは海水を汲みに浜辺と自宅を往復する。

何度も・・・

何度も・・・

何度も・・・

・・・

そして浴室が潮の香りに満ち、彼女の胸下まで溜まった海水。
すぐさまギルは台所に向かい・・・火を起こす。
そして竈に深めのフライパンを置き水を多めに張り・・・
昼食用に炊いておいたすっかり冷えた冷や飯をフライパンに放り込む。

グツグツとならないように、ゆっくりと掻き回して・・・尚且つ火の加減を調整する・・・
やがて米が水分を吸い・・・トロトロとしてきたのでフライパンを火からどける。

勿論、火の後始末も忘れない。

そしてその出来たもの・・・【粥】にカツオブシをサラサラの粉になるまで刷り込んだものを粥に少量パラパラと乗せる。

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・・・なぜ大陸のこの街に【米】と【カツオブシ】があるのか?
それは昔ジパング出身の人がいてその人が【ご飯】と【魚の加工品や調理方法】を広めていき・・・
今ではアトワーの名産品にまでなった。
尚、他に名物として・・・【カツオブシ】の他に【ヅケ】や【スシ】などもある。

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「・・・ん、よし。」
・・味もよかったようだ。
それをある程度冷まし・・・器に移して・・・
彼女の元へ運んでいくギル。

「・・・ほら・・・あ
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