「うん。いい天気だな。・・・うっし! 」
パァァン!
・・・井戸にて顔を洗い、気合を入れるように両手で両の頬を叩いた男、名を『マキ』という。
この宿町の郊外にて樵として生活しているものである。
また、副業として傘を作ったりもしているが・・・これが中々好評で・・・
寧ろ傘作りの方が本業と成りかけていた・・・・
・・・っと、そうこうしている間にマキは納屋から一振りの大斧を持ち出して腰に荒縄を巻いて・・・・
どうやら山に出かけるようだ・・・
「ふぅ・・・たまにはコッチの仕事に行かないとな・・・」
・・・どうやら彼の中ではもう傘作りが本業になったようだ・・・
「・・・っとそういえば・・・・最近森が騒がしいが・・・・戦でもちかいのかな・・・?」
・・・最近森が騒がしくなった。・・・・まるで・・・
おそろしい何かが降りてきて、それを恐怖しているように・・・・
「・・・よしっ、昼飯もって・・・んじゃ行ってきますっ! 」
・・・まさかこれが『最後の挨拶になるなんて』彼は思うまい・・・・
・・・・・・・・・
・・・・・
・・・
・・・そしてココは森の中。
ザクザクと足元を踏み鳴らし、彼は形の良い木を見つけ・・・・
カコーン・・・カコーン・・・・
「よっ、はっ、ほっ・・・・・」
・・・木を斧で打ち始めた。
・・・暫くすると・・・
「いよっ、はっ、ほっ・・・・・お! きたきた・・・・」
カコーン・・・・ギ・・ギギ・・・ギギギギ・・・・ギィーーッ・・・・ドサァァァン!
・・・巨木が倒れた。
「うっし! 今日はこいつをバラして終了だなっ。」
・・・そしてマキは大木を小さくまとめ出した・・・・
ガサッ・・・・ガサガサッ・・・・
「・・・ん? 」
・・・作業をしていると近くの背の高い草むらが揺れ始めた・・・
(なにかいる・・・)
すぐさまマキは斧を握り直し・・・不測の事態に備え・・・慎重に草むらを注視する・・・
・・・すると・・・
ガサガサッ・・・・・・ファサッ・・・
「・・・ん? 人間か!? 今日はついているな♪」
・・・マキ的にいうなら・・・
『・・・今日は厄日だ・・・・』
なぜなら・・・
目の前に魔物が出たから。
ただ魔物でも・・・ネコマタや稲荷、ジョロウグモならいい・・・
だが現れたのは・・・
巷で新たに確認されたと言う『牛鬼(ウシオニ)』であった・・・・
「・・・うん。中々力がありそうで・・・・ふふっ気に入ったっ! アンタをつれて帰ってヤr」
「い、いやだ。断るっ。」
・・・タダでさえ情報が足りていないのに何も分からず連れて行かれるのは嫌だ。と判断したマキはとにかく抵抗することにした。
・・・纏っている雰囲気からして穏やかでないのは確かだし・・・
「ほほう? いっちょ前に抵抗かい? ・・・ははっ、面白い。アタシにはその程度の武器じゃ傷すらまともに付けられんよ? 」
「う、うるせぇっ! や、やって見なけりゃわかんないだろうっ?!」
・・・彼女の気に当てられたのか、膝が笑い始めたマキ・・・それほどに彼女から放たれる邪気は凄みを帯びていた・・・
「・・・・はははっ! いいねっ! ・・・そうだ・・・ならアンタ、アタシを一度切ってみなよ?・・・そこに倒れている木と同じようにスパッっと、さ?」
「・・・っ」
(正気か・・・こいつ?!)
・・・あからさまに『どうぞ?』と両手を広げてニヤつきながら余裕を出しているウシオニに・・・
「な、なら・・・しんでも・・しらねぇぞぉぉぉ!!」
ブゥゥン!
大斧をコレでもかと大きく振り上げ・・・
スバァン!
・・・振り降ろした。
感じる手ごたえで「あぁ・・・きっちまった・・・」と後悔の念がしょうじるも・・・
顔を上げると・・・
信じられないものが・・・
確かに彼女には・・・大きく裂傷が左肩から腹部にかけて・・・人で言う致命傷がついていた・・・
・・・だが・・・
・・・シューッ・・・・コポッ・・・コポコポッ・・・
・・・・なんと傷がどんどん塞がって行く!!
傷口から白い煙が上がり・・・細胞が泡を立てて再生していた・・・
・・・勿論彼女は一歩も・・・むしろ全く動いていない。大陸には治癒を促す術があるというが・・・それでもソレを行使するには呪文なるものを唱えなければならないが・・・
彼女はニヤついた顔はそのままで・・・何も一言も発していなかった・・・
「っぁああ〜。中々イイ斬撃だったな。・・・だが、アタシら『ウシオニ』の回復力には適わなかったがね・・・・」
・・・・ソレを聞いたマキは心の中が『あるもの』で埋め尽くされた。
それは・・・
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