歓迎会の次の日の朝議にて・・・・
この場は今大混乱がおきていた。
その始まりは帝王が入場するとき本来いるはずの・・・数十年連れ添った筈の『季夫人』ではなく・・・昨日入宮をはたし、初の夜枷を命ぜられたばかりの『葛篭姫』がいたのだから・・・
その位置に、帝王の右横に・・・・
「帝王さまっ! どうして第一王后の季夫人様ではなく葛篭姫さまが隣にいるのですかっ!」
「そうですっ! なぜ長年付き添った季夫人様ではないのですかっ!」
「帝王様っ、目をお覚ましくださいませっ」
・・・臣下側や後宮側のあちらこちらから飛び交う声、声、声・・・・・
対して今まで自分がその場所にいた季夫人はというと・・・
帝王の左横から一歩引いた場所・・・『第二王后』の立ち位置にて・・・
「・・・なぜ、どうして・・・・きっと・・・きっとあの娘が・・・・何かしたんだわ・・・」
唇を固く閉じて・・・唇を切ったのだろうか、血を滲ませながらそう呟く彼女からは怨嗟の念が血と共に滲み出ていた。
その中、重臣の一人が・・・『言ってはならないことを』言ってしまった・・・
「帝王さまっ! 何故そのような『辺国の姫なんぞ』に『栄誉ある第一王后の座』をわたすのですかっ! 」
と、国を蔑むだけに留まらずさらには『卑しい身分』と同意の言葉を発して葛篭姫を大衆の面前で辱めた。
「っ・・・」
「!! これ、葛篭よ泣くでない。・・・」
その暴言を聞き涙する葛篭にいち早く気付き手を肩に置き、下から覗き込むようにして労わるような言葉を発す帝王。
それを見て・・・
「(ふふっ・・・いい気味ね・・・あぁ・・・憎らしい・・・)」
黒い感情が出る季夫人であった。
そこからモノの数秒待たすして・・・・信じられない光景が・・・
帝王は無表情になり先ほどの暴言を放った重臣の前までほとんど一足飛びで近づき・・・
そして・・・腰に差した『剣』を・・・・
風が追いつかぬほどの速さで振りぬいた・・・・・
「くひっ・・・?」
己が死んだとも知れず、変な声を上げ・・・自分の首から大量の血飛沫がでているのを最後にみた重臣は息を引き取った。
・・・・・一気に静まり返る場内・・・・聞こえるのは・・・恐怖で歯を鳴らす音、誰かが漏らしてしまったのだろう雨の降り始めのような音、泡を吹き数人倒れこむ音・・・・
そして・・・
「「「きゃ、きゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」」」
・・・・時間差で女官達の甲高い悲鳴。
「・・・おい」
「は、はいぃぃ」
そんなことは意に介さず帝王は剣先を死んだ重臣の近くにいた臣下に向けて・・・
「この国の・・・頂点は誰だ?」
無表情に・・・感情など知らぬような表情でその臣下に問いた。
「貴方様・・・史厳帝王ですぅぅ」
生きた心地がしないのであろう、顔面蒼白になりながら機嫌を損ねないように答えた。
「・・・じゃあ・・・・お前」
「はっはいぃぃぃぃ」
それを聞きやはり無表情のまま別の臣下に問い始めた。
「この国の後宮は・・・・誰のためにある?」
「あ、ああ、貴方様、史厳帝王の為でございますぅぅぅっ」
こちらもやはり白くなりながら答えた・・・
「そうだ。つまり・・・」
別な臣下に剣先を向けると同時に・・・
「後宮のモノ達を蔑ろにするという事は・・・どういうことだぁ!! 答えろっ!! 」
大きな怒声で質問を殺気と共にぶつけた。
「ひっ、て、帝王さまを、ぶ、侮辱するのと、い、一緒ですっ」
・・・可愛そうに・・・一番当たりたくない時に当たってしまった年若い臣下の股下は酷く濡れていた・・・それでも先ほどの二の舞になりたくないが為に必死に答えた。
「そうだっ! そのとおりだ!」
と発言すると甲高い音と共に剣を鞘に仕舞った帝王が自身の席・・・玉座へ外套をたなびかせて歩き・・・・
玉座の前で反転し、こう宣言した。
「これより葛篭姫及びそれ以外の後宮に対する悪評、罵声、罵倒を禁ずるっ・・・・もし・・・そのことがワシの耳に入ってきた場合・・・」
静まり返る場内に楔を差すように・・・・
「その発言者の一族郎党・・・・ワシへの謀反有りとして『皆殺し』じゃ・・・・」
ゆっくりと・・・皆に言い聞かせるように・・・しかし何処までも冷たく言い放った。
これにて大混乱から始まり大恐慌後、静寂に包まれた朝議は・・・・身も凍るような宣誓と共に・・・閉議した・・・・
その中・・・焔の・・・葛篭姫の口元は・・・・『微笑んでいた』・・・・
・・・・・・・・・
・・・・・
・・・
ここは後宮の一室。件の朝議の後である。その部屋には・・・
季夫人が佇んでいた・・・・
日の差す窓の前に立ち外を・・・青空を眺めながら・・・
「・・・おかしい・・・明らかに・・・」
何かを呟く季夫人。すると・
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