『微笑みの似合う無口な君へ・・・・』



(・・・・うんやっぱり今日もきたよ・・・)

「ねぇ・・・そうやってジィーーーーッとみられていると仕事が出来ないんですけど・・・」
「・・・・・・」

無言のまま彼女は『水中から』顔を半分出して右の茶色と左の琥珀色の瞳で『彼』・・・『アイト』を物静かに上目遣いでみていた・・・・

(・・・・くそぅ・・・可愛いけどさ・・・・コンチクショー・・・・)

アイトの仕事・・・・それは漁師だった。


ここは親魔領の街『アトワー』。
この街はその領内どころか他の地域には無いぐらいの水の加護がある。周りの山々から流れてくる栄養を多く含んでいるのに2Mの深い水底にある小石ひとつまでくっきり見える清流が5本が絶えず流れ込み出来た大きな・・・そう『余りの大きさに海と間違える』くらい大きな湖『アトワー湖』。
この湖・・・・淵から海まで1KMほどしか無いので時間帯によって海水が淡水と混ざり汽水湖になる。
そのときに紛れ込んだ魚をとるのがアイトの仕事・・・・なのだが・・・

「・・・・・・・・・・」
この娘によって営業妨害( ? )されている・・・・ここのところ毎日・・・・

「・・・・魚が獲りずらいんですけど・・・」
「・・・・」
するとお願いが通じたのか『チャプン・・・・・』と音をたてて彼女は水中深くへ潜っていった。

(・・・・なんかわるいことしちゃったかな ?)
ほんのちょっと罪悪感がでてきたアイトだったが・・・・


ザパーーーーーン!!!


いきなり水中から『何か』が飛び出してうまい具合にアイトの船に着地した。
・・・もっと細かく言うとアイトの船は中型の船なので大人6人余裕で乗れる仕様でかなり広いが、その『何か』はピンポイントでアイトの後ろに着地した。

「のわぁぁぁぁっ?!」
流石にビビリまくるアイトだが・・・・良くみると・・・?

「・・・・・・・」

・・・・・・ズイッ

彼女だった・・・・しかも両手で網を抱えていた。それをアイトの目の前に突き出し・・・・

バサァァァーーーッ・・・・・・・・・ビチビチビチビチビチ・・・・・・・・・

・・・・網を広げると大量の魚が出てきた・・・・しかもご丁寧にアイトが常日頃獲っている種類のみをアイトが生活に必要な最低限のレベルで・・・・

「えっ・・・あっ・・・・ありがとう・・・・」
驚きながらも感謝するアイトは・・・・・実は初めて彼女の全身をみたのだった。

(へぇ『サハギン』か・・・・様相は図鑑通りだけど・・・・透き通った銀の髪に白いウロコ? 左茶右琥珀色のオッドアイ・・・・なんというか・・・)

そこでふと本音が・・・・

「綺麗・・・・」
「・・・・!!」
その本音を聞いた彼女はしっとりと濡れた手で顔を覆い・・・赤くなっていた・・・・尻尾( ? )をフリフリしながら・・・・

(何このかわいい生き物・・・・・・♪)

心の中で激しく悶えるアイトでした。

「ねぇ・・・・アナタ・・・・名前は?」
「 !! 」
彼女が話しかけてきた。

(スズの音ように澄んだちょっと高めで落ち着いた感じの声・・・・きいてて気持ちいい・・・)

「僕は・・・・アイトっていうんだ。・・・・君は?」
「・・・・・私・・・シル・・・っていう・・・」
覆った手の隙間から琥珀色の瞳をチラッと覗かせて・・・・上目遣いでこっちをみてそういう『彼女』・・・『シル』。

(・・・僕・・・もうベタぼれ・・・だよ・・・・)
「・・・お願い・・・あるんだけど・・・・・」
ふやけ気味の顔でシルを見ていると、シルがお願いをしてきた。

「えっと・・・何か?」
「私・・・・・・・・・・・アイト見たときから・・・・・・・・・好きになっちゃったの・・・・」

(な、なんだってぇー!!?)
驚愕の事実とでも言わんばかりに心の中で驚くアイトであるが・・・・

「えっと・・・・じ、実は僕も・・・・」
なんとアイトも初めてシルと目があった時から好意を抱いていたのだ。

「・・・・・///」
「・・・・・///」
・・・・・気まずいけど・・・・心地よい沈黙がつづいたが・・・

「「・・・・えっと・・・・そのッ・・・・!?」」
見事にタイミング良くカブる二人・・・・

また暫くの沈黙の後・・・
「い、いきなりですいません・・・・ぼ、僕と・・・・お付き合いしてください・・・・///」
「・・・・・・う、うん・・・・・・///」

告白するアイトに暫しの沈黙の後肯定の返事を返すシル。

「でも・・・・まずは・・・・・魚・・・・」
「えっ?! あっ!? う、うん!! そうだねっ」
・・・・その直ぐ後。申し訳なさそうな顔をしてシルが意見を言うとアイトが『仕事中』ということを思い出し魚を集めて港に向って動き出した。・・・シルは乗ったままで・・・・


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