『ツンツン!! トラトラ!? ニャンニャンニャン♪』




「眩しい」
現代ジパング、そこはコチラの世界の現代と全く変わらない文明が息づく世界である。
車もあるし携帯音楽再生機、スマホ、テレビ、機械に限らず義務教育などもある。
ただし違うのは隣に魔物娘がいるという事だけだ。

「まさかの出席日数不足とは」
とある県立中学校前、夏の長期休暇に入ったばかりなので部活の生徒や図書室を利用する生徒ぐらいしかいないこの場所で虎柄の、いや虎がたたずんでいた。一人と言うべきか一匹と言うべきか。
まだまだ昇りたての太陽の光を一身に受けて人には無い肉球付きの大きな猫手で鋭い太陽光を遮る彼女はきちんと制服に身を包んでいるものの薄手のブラウスからは筋骨の筋がはっきりとわかる鍛えっぷりであった。勿論胸だって十分すぎるボリュームである。

「ダメだな、ここで愚痴をしてもなんともならないし」
しかし手をどけた彼女の顔、その目の下には真っ黒と言えるほどの隈がある。余程眠いのか種族上ただでさえ鋭い眼光がキッと吊り上っている。傍から見たらまさに虎に睨まれているように錯覚するほどにだ。

「でさぁ彼氏君の裏筋を……ひぃぃ!? 」
「わかるわか……ひっっ!? 」
「俺、夏の間に彼女へ……うっ!? 」
すれ違う者からもれなく畏怖の目、何も言ってもいないのに勝手にできる花道に彼女の心情は如何なものか。尻尾が少しだけボリューミーになってブンッブンッと不規則に風をきる音が出る程に揺れればまぁ、察するのは容易だろうが。

(〜〜っ! なんなのだ、ただ眠いだけなのにっ! 何、そんなに私が怖いかっ!?)

ほら。
そんなモーゼの十戒よろしく校門を通過し下駄箱のある昇降口まであと少し、門の前から不機嫌極まりない彼女に声をかけるものがいた。当たり前だが同じ中学校の制服を着ているがこちらは学ランの男子で、色白でひ弱そうなもやし系、イケメンと言うより女装したら絶対に女と思われるような顔立ち、小脇に鞄を抱えている。
迫りくる虎の前にさっと立ち、空いていた片手をあげて何の恐れもなしに彼女へフレンドリーに挨拶してきたではないか。

「や、おはよう。んー、眠いなぁ」
「あっ、君!? なんで学校に!? 」
「出席日数不足で、ね♪ まぁ登校時間ちょっと遅れたけど」
なんと偶然な。
寝癖を直していない彼はぐっと背伸びをし、間延びした声で彼女の質問をさらりと返す。そして笑顔を向ける彼に彼女は胸に何かが刺さる様な感覚に陥った。
幼稚園で隣の席になってからずっと、中学生になった今も家族ぐるみのお付き合いの仲である彼は見た目に反せず病気がちで度々こうして補習を受けることがざらにあるのを彼女は良く知っている。彼女はそんな彼を良い友達と思っているわけだが……?

「逆に珍しいね? 君が補習だなんて。修行のしすぎで日数が――― 」
「関係ないでしょ」
「いやまぁ、そうだけどって、あ、ちょ、ちょっと待ってよっ!? 」
(っっ! なによ、なんなのよっ! この胸のざわめき……もう! 腹が立つっ!! )
幼き頃より武闘家として鍛えてきた彼女は学校公認で深夜の警備のアルバイトをしているのだがそれが原因で授業中に船を漕ぐことが多数あり、いやこの頃は特に頻繁にありその積もり積もった結果がこれである。
幼馴染との会話もそこそこに逃げる様にして手早く上履きに履き替えた彼女は早々に目的の教室目掛けて歩き出し、それを慌てて彼が追いかけた。
何時もなら挨拶しあって肩を並べて歩くような仲なのに、今日に限っては何故か彼女が不機嫌になっているのだ。しかしある程度歩いた彼女は彼に気付かれないように横目でちらりとひとつ後ろを追いかけてくる彼を一見。

「はぁはぁ……ん、何? 」
「っ! な、何でもないっっ!! 」
(うぅ、はっ!? な、なんで私こんなにどぎまぎしてるの!? )
年頃の女子が夢見る「気が付いたら目が合うような、そんな淡い恋でした」とか「気が付いたら♂と♀が合うような、そんな激しい恋でした」とか武道に生きてきた彼女にとってほぼ無縁で興味が無かった。だがあえて表現するならまさに今の彼女がそうなのだろう。ちなみに前者である。
気にした彼が視線に気づいた途端にコレだ、真面に顔が見れないのだ。
彼から声を掛けられた彼女は途端に声を裏返して返事しまうのもその一つだろう。

「何、何々? 気になるんだけど? 」
「っ!?!? う、う、ううう、五月蠅いっ! 」

(―――あぁぁ! もう! なんなのよ、この気持ちっ!!  ウガァァァァ!!!―――)

考え事をしたせいで遅くなった彼女にいつの間にか肉薄した彼は背中越しに彼女へと声をかけるも、ピーンと背筋と耳と尻尾が伸び驚いた様子の彼女になぜか怒られてしまった。
というか睨まれた。
彼女は余程混乱しているようで自分のショートヘアをガリガリ掻いては壁に八つ
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