「うぁぁぁ…さ゛、さ゛ふ゛い゛…」
その日の朝方、数名の仲間と共に厳しい冬山として有名な『とある山』の登山路を確認した私達は順調なペースでいけばお昼には山頂へと登りきるスケージュールを組んだ。
勿論、いざという時の非常食なども持っている。
山を舐めたら怖いというのは親魔物領であるわが町でも、というか何処へ行っても変わるものではないだろう。
「は゛、は゛や゛く゛…け゛さ゛ん゛…し゛な゛い゛と゛…」
そして我が町の数名の同好たちによる冬登山ツアー、そのルートは朝に確認したルートであり順調に登っていく。
緑と茶が交じる地面がいつの間にやら白くなり、吐く息すらも視認できるほどになった頃。
ふと後ろを振り返れば、それはそれは冷ややかに澄んだ空気のお蔭で遥か先の隣国の山々までくっきりと見えていた。
メンバーのうち登山にあまり慣れていないであろう妖狐やワーウルフは魔物というアドバンテージを持っていながらも慣れない足場に四苦八苦しているようで、幾度となく人間の男性(独身)に手を貸してもらって歩き進めている。
…心なしか顔が赤いが、きっと近いうちに結婚式に呼んでくれることだろう。
「ま゛、ま゛す゛い゛…い゛…い゛し゛き゛…か゛…」
でもって無事に頂上まで着けましたよ。
…頂上までは、ね。
人間女性と山の天気は変わりやすいって言うように下山途中、頂上から然程歩いていない時にそれはやってきたんですよ。
真っ黒な暗雲が私たちの頭上に立ち込めて雪を降らすのに一分もかかりませんでした。
しかし雪だけだったら良かったんですが、次第に強くなる風、まきあげられる新雪…見事なまでの吹雪に遭遇してしまいまして。
皆、あまりの風の強さに帽子と首かけをきつく締め、できるだけはぐれないように且つ早歩きによる強行策で下山を開始したんです。
まぁ、普段から腹を割って話せるツーカーな仲だったので自然と理解しあってのことだったのでしょうが…ここで起きました。
最悪のアクシデントというものが。
私、あまりの視界不良で足を滑らせて滑落してしまったんです…。
辺り一面が雪というクッションになっていたのでけがは殆どなく、ねん挫などもありません。
しかし、背負っていたはずのリュックを確認した時…大口を開けてすべてをどこかにぶちまけていた時には一瞬で死を覚悟しました。
それでも、やはりそれでも人間なので…死の恐怖を振り払うかのように防寒具をしっかりと閉め直して再びどこぞともなく歩き出したんですよ。
助かりたい一心で。
それ故にあちらこちらがカチカチになってしまい、しまいには冒頭のように濁音交じりの鼻水だらけで、そのまま私は力なく意識を手放して倒れてしまいました。
今思えばなんて馬鹿なことをしたんだろう、とは思いますがそのおかげで彼女に出会えたんです。
・・・・・・・・・
・・・・・
・・・
「…はっ!? あ、あれ?」
「んみゅぅ〜…んん? あ! おきたんですねぇ♪」
どこかの洞窟でした。
視界がぼやける中で真っ先に飛び込んできたのは真っ白な毛の塊、そう髪の毛でした。
雪のように真っ白で、所々に白い粉雪が未だ解けずに残っていまして…鼻をスンスンと鳴らせばとても甘いにおいが鼻腔を刺激します。
次に見えたものといえば…お恥ずかしながら、私の起床に気が付いて抱き着いていた体を離して私を見上げる彼女の胸元でした。
上から視線を見下ろせばぐにゅりと潰れていた…その…おっぱいがブルンッと勢いよく元のサイズに戻って…正直、眼福だと思ったんです。
あまりにも刺激的すぎた彼女の胸に恥ずかしさで顔をそむけたところ、モフモフの白い手足が私に巻き付いているのが見えました。
…すごく暖かいんですよ、この手足。
あと、ふわふわですし♪
「よかったぁ…」
「えっと…君が助けてくれたの?」
「はいッ♪ 凍傷寸前でしたので不安でしたが…お元気で何よりです♪」
どうやらどこかに寝かされていたようで、魔水晶の明かりを背に彼女は私に対して上体を起こしあげて微笑んでくれました。
心の底から心配してくれたのだろう、屈託のない笑顔がすごく眩しかったです。
そのまま彼女は私にまた抱き着いてきて額を私の胸へとグリグリするものだから…うん、可愛かったです。
というよりも一目惚れしました、はい。
昔から惚れっぽいと言われていましたが…恋は一瞬でした。
「そうか…ありがとう」
「ぇぁ!」
思わず彼女を抱きしめ返したんですが、何故か彼女がフリーズしてしまったんです。
そして急に顔が赤くなって私を見上げるその瞳は…爛々と輝いていました。
「…いいんですか? いいんですね!? 我慢できません♪」
「っぷ!?」
そのまま間髪入れずに彼女は私を再び寝床と思われる場所に押し倒し、口の中に温かいを通り越して熱いと感じる程
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