『アマツマガツチの場合』


ここはハンター世界の岩山頂上。
通常の天気ならば遠くに溶岩塊を噴出している元気な火山とか、黄色一色の中に点在するオアシスのある砂漠、時折白いものが舞い上がって見えるのは地吹雪であろう如何にも生物に優しくない光景を見せてくれる雪山、緑一色でうっそうと生い茂る木々が日の光を通さないおかげで暗い印象を受ける密林…と大変多くの大自然を望むことができる絶景スポットである。

…の、だが……







ヒュォォォォォォォォォ!!!!!! …ピッシャァァァァァンンン!!!







今現在、この岩山の頂上の天気はというと非常に激しい暴風雨(雷付き)であった。
それというのも、今この山にとある【竜】がいるせいなのであるが…おや?

山の天辺から何か影が走っていくぞ?
…どうやらよく見れば男女の二人組のようだ?

ふむ…普通ならば下山するなり、避難するなりするような天気の中を必死な形相で走り下る人らが見えたので、そちらに近づいてみよう。

「ひぃぃっ! ひぃはぁ…ぁぁ!!」
「つ、ついてなぃ! 私達…ッ…いっつも…ッッッ!!」
狩りに行く、というにはあまりにも軽装な装備であり…まるで【釣りにでも】行くような服装の男女は涙を止めどなく流しつつ、岩の窪みに綺麗にできた道をただ只管に走って何かから逃げているようだ。

「い、いゃ…なんで…ぇ…ガノトトスに…打ち上げら…れたあと…ッ…」
「こ、コイツ…に…張り付か…れ…て…ッッッ…ここまで…つれ…てこられ…もぅ…もぅッ!!!」
流石ハンターというべきか、常日頃から鍛えている脚力が今すごく役に立っているのがよくわかる。
彼らが走りながらグチグチと漏らす愚痴をまとめてみると…

・ガノトトスにヤラレた!
・落ちた水面からいきなり空に吸い上げられた!
・気が付いたら【ヤツ】の玩具状態だった!
・逃亡っ!(←今ココ

…らしい。毎度のことながら彼らの不遇ぶりには目を見張るものがある。


「「もぅいやだよ!!! …って言ってる傍からヤツがきたぁぁぁぁぁ!?!?!?」」
お、シンクロしました。
今、彼らがシンクロしました。
そのおかげか先ほどから話題に上がっていた【ヤツ】が後ろからおってきたようで…
彼らにつられて後ろへと振り向けば空中に漂う巨大な影…額から後方へのびる立派な2本角、まさしく龍と呼ぶにふさわしい細身の蛇体、文字通り風を纏うお蔭で薄いベールのような体毛がふわりふわりと揺れ動き、そして何より目立つのは…その白さ。
純白というには少し汚れており、でも銀糸よりも輝くその体毛は曇天の空に浮かんでいるにも関わらずきらりと輝かしい光を放っている。

この竜、アマツマガツチと言う。
そして【嵐龍(らんりゅう)】ともいう。
…ただしまだ幼体なためか、それらの平均的なサイズからすれば幾分か小さい。


lt;
lt; …コォォーーーンンン!!! 
gt;
gt;

しかし、それでも竜。
人が相手するには十分すぎるほどの大きさであり、ハンターにとっても決して楽ではないのもまた事実。
しかも纏う風に速度を乗せ、更に加速してハンターたちを追い立てだして…傍目から見ると遊んでいる様にも見えなくもない。
必死に逃げるハンターめがけてライフルの弾のように自身をツイストさせて、一気に距離を詰め…そしてその回転した白い弾丸は崖の岩肌ごとえぐり取ってハンターたちを見事に岩山から宙に放り出した。

「いやぁぁぁ………ァァ……」
「のぉぉぉぉ………ォォ……」
そのまま空中を漂うことなどない…いや、できないハンターたちは重力にしたがって下が見えないほどの高さから真っ逆さまに落とし込まれ着水。
…今回も運よく下が川だったようで、今回も事なきをえたようである。
…でもその川はここいらで最も急流ということで有名で、一説では海までノンストップとか。




lt;
lt;コォォォーー!!(かかかっ! 面白いのぉ!)
gt;
gt;
そんなハンターたちの落下する様を見てはいかにも上機嫌で声を高らかにして吠える白い龍は、心躍るというものを表現するような動きを以て頂上へと戻るために首を向きなおして上昇を始めた。

しかし、その瞬間。


lt;
lt;クォォ!? (ぬぁ!? )
gt;
gt;
小さな鳴き声を上げた龍。
なぜならばそのすぐ前方にて強烈な発光があったからだ。
龍はあまりの眩しさ目を閉じてしまったが…


その発光が収まる頃には辺り一面が雲一つない快晴となり、いままで吹いていた暴風はただのそよ風に変わって…龍もろともなくなっていた…



・・・・・・・・・

・・・・・

・・・



「うむ、偶には休暇を散歩に使うのもいいものだ」
「あぁ、そう思う。この頃ラガは務めすぎていたからな」
青々とした葉が生い茂るいつも森の中を
[3]次へ
ページ移動[1 2 3 4 5 6 7]
[7]TOP [9]目次
[0]投票 [*]感想[#]メール登録
まろやか投稿小説ぐれーと Ver2.33