『ロリバーンちゃんかわいいっっ!!』




「え゛!? お、俺は無理っすよ?! 」
「大丈夫、大丈夫♪」
「いやいやいや!? 自分学生っ! しかも受験控えた受験生っすよ!?!?」
とある町の催し物の一端で毎年行われる子供会のハロウィンパーティー。
その街角の中でひときわ目立つ建物、公民館と思われる建物内から如何にも嫌そうな声を張り上げる男の声が聞こえる。
この町で今年運悪く付き添いの役を回されたとその男、顔立ち幼く背が高い容姿で翼ご老人方が言う青臭さが抜けていない感じであった。
雑多な言葉のやり取りから察するに、受験を控える高校3年のようだ。
そんな状様な時期にいるという彼を誰一人としてリタイアすることを許さず「一日だけでいいから」と後押しする周りの数組の大人たちはみな笑顔なんだが…妙にすまなそうな顔をしている。
しかし彼とて受験と言いう立派な拒絶材料があるからこそねばったわけだが…結局貫録の違いで彼が根負けしたことで報酬もないお守り役になったのは言うまでもない。


そして…


「はぁ…ゴリ押しされたよコンチクショウ…」
イベント当日、その日はいつになく空気が冷え込んで肌が少々ズキリと痛む気温であった。
しかしそんなことなど関係ない元気印の子供たち数十人は我先にと満天の星空の元、各々決められたルートで家々を回って何の滞りもなくお菓子を手提げのマイ袋へと溜めこんでいく。
それを見ていた男は果たして自分が必要なのか、と頭を抱えて首を細かく左右に振り落胆の溜息を吐いた。
白く靄になったと息が消える頃、不意に彼の視界に一人の女の子が見えた。

「…はぐれたのか?」
毎年必ず迷子が出るこういう行事になれていない為彼はけだるそうにしながらも己に課せられた使命を果たすべく目深のフードをかぶる女の子へと近づいて行った。
周りで騒ぐ子供など誰一人としていないのに…その娘はただ一人でいるという不自然さに気付くことなく彼は近づいていく。
…凡そ彼の腰を超えるくらいの身長で、どうやらそこそこ背が高いようだ。

やがて足元に彼女の傍、一歩半残して近づいて彼はしゃがみこんで…

「ぁー…どうした? 迷子か?」
「…えへへ…とりっく おあ とりーと!」
「へぁ!? ぇ、あぇ!?」
目線を合わせて彼女に出来る限り優しく語りかける様に言葉を選んだ彼だけれども、言葉の節々からはいかにも面倒くさいという気持ちと態度が隠しきれていなかった。
そんな彼に対して女の子はニコッ、と一度微笑むとお決まりのその台詞を吐いて大きく手を…否、大きく翼を広げて彼を驚かせてしまったのである。
驚きのあまり腰を抜かして尻もちをついた彼を見てか、彼女は人にしては大きすぎる被膜付きの翼をはためかせてケラケラと可愛い声で笑い出した。
はためかせた拍子にローブが肌蹴て…彼は改めて彼女の体を裸電球の街頭が照る路地にて確認をすることができた。
大きな両手の翼、被膜付の耳、太くて逞しい尻尾、鋭く尖った鉤爪の手足…

「え、き、きみ…」
「えぅ? …あ! そうです! 私はワイバーンですよぉ♪なにかタノシソウなコトをしていたのでさんかしちゃいましたぁ♪」
魔物娘が社会に浸透して幾星霜、そんな世の中だからこそレストランでウェイトレスをしている妖狐、制服を極めこんで職務にあたる婦警リザードマン、スーツに身を固めて何かの書類を持ち運んでいるメガネの似合うアヌビスなどありふれている魔物娘だけれどもワイバーン等のドラゴン種というのはレア中のレアでめったに会えない種族…らしい。
それが今目の前にいるんだから彼としては二重の意味で驚きである。

「ところで…ここはどこですか?」
「・・・・・・・・は?」
「あ、ですから…ここはどこですか?」
彼女からの何気ない質問に素っ頓狂な声を出して聞き返してしまう彼。
…しかしそれは致し方ないことだろう。
小首を傾げながら聞き返す彼に彼女も同じように小首を傾げて問い返して…

「え、ぁー…ここはジパングの」
「え?! ジパング!? …あぁ…」
「ど、どうした?! いきなり地面にへたりこんで…どうしたんだっ!?」
彼の言葉を遮って大声を上げた彼女はおよよっ、と膝からがくりと地面につっぷしてしまいそのままシクシクとすすり泣きだしてしまったではないか。

「うぅ…ど、どう゛じよ゛う゛…がえ゛り゛がだ…わ゛がん゛な゛い゛よ゛ぉ゛…」
「え…あぁ…あ、納得した」
「うぇぐ…ヒッグ…」
聞けば彼女、綺麗な星々に誘われて夜空を高く高く舞って…いつから飛び始めたかわからない遊覧飛行を楽しんでいたらいつの間にかこんなところに来てしまったというのだ。
すすり泣きはやがて本泣きになり周りの目を気にしない彼女はわんわん声を上げて泣き始めてしまったので、彼にとってはトンだとばっちりである。
そんな彼が腕時計をちらりと見やると当にイベントは
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まろやか投稿小説ぐれーと Ver2.33