『僕はいつかワイバーンに乗るっ!! そして竜騎士になるんだぁ!!』
…そういう夢見た時期が少なからず誰か氏らにもあるはずだ。
勿論、僕も。
元々教会の勢力が強い地域に住んでいた為に魔物を駆逐云々は耳にタコができるほど聞いたが、子供ながらに何故かこの『竜騎士』というものにひときわ憧れていたわけだ。
何故、と聞かれてもはっきりと答えることはできない。
…というよりも本人も忘れた。
「…はぁ」
そしてなぜ僕が溜息を吐くかというと…いたって簡単。
世間の荒波というものにもれなく飲まれ、教会騎士団入団時のワクワクはどこへやら。
都市部で警備隊まがいの仕事をさせられればポカをやらかし、門兵の時には持ち込み禁止のモノを通してしまい、挙句の果てには書類整理をすると逆に収集がつかなくなる始末。
…僕は自他ともに認められたおっちょこちょいらしい。
故にそんな落ちこぼれを都市部にいさせるほど上層部は甘くなく、今や親魔物領との睨み合いを続ける国境…しかも俗にいう【激戦区】という場所に飛ばされるのも無理はない。
「…しかし…これが本当に激戦区か?」
溜息に続いて漏らす愚痴、これにも訳がある。
激戦区、と言ったらアナタ達はどういう風景を思い浮かべますか?
剣戟が激しくぶつかり合って命のやり取りをするとか、巨大な魔法陣の発動合戦とか…多分そんなものを思い浮かんだはずだ。
…しかし、ここの激戦区の意味合いはちょっと違う。
「…毎日定時に宣戦、一度も剣を交えず睨み合い…正午過ぎれば和気藹々と昼食をとり…午後の日没まで会話を楽しむとか…どこが激戦区だよっっ!!」
「隊長うるさいです。今ちょうど本がいいとこなんですから静かにしててください」
「…はい」
何処でどう情報が間違ったのか聞こえた話とは真逆、寧ろほぼ親魔物領だろこれ? みたいな状況です、はい。
このことを上層部にチクろうとした日にゃあ…怒気を含んだ部下たちの【赤い目】が爛々と輝いて僕のことを3日間監禁しやがりまして、はい。
…はい、コレどうみても刑部狸とかリリムとかの情報操作ですね。
本当にアリガトウゴザイマシタ。
と、粗方今の僕がどういう現状かというものを理解していただいたところで部下の【元人間】男衆らの待機場所、詰め所を後にして街中を散歩することにしよう。
…べ、別に居場所が無いってわけじゃないからな!!
…言ってて尚気落ちしたよ…トホホ…
「あれ? 今日は早いのね?」
「…追い出された」
「あ、そ、そうなの…ドンマイっ♪」
歩いていながら周りを観察すればワーキャット、アヌビス、サキュバス、アルプ、マンティス…全く違和感なく【反魔物領】のこの町に魔物娘はなじんでいた。
…ぶっちゃけると、この状況だからこそ僕は今まで思っていた【魔物は悪】という考えが霧散したわけだ。
故に今、僕に話しかけた女性が既婚のワーウルフさんであっても動じることはなくなったのだよ、ワトソン君。
…ワトソンってのは僕の部下で、僕以外で唯一の独身【だった】男である。
…だった、ってなんだだって?
…察してください、お願いしますっ!
「あ、そういえばワトソンがアナタを見かけたら呼んでくれって言ってたわよ?」
「夫が妻に仕事をさせるのははなはだしいが…わかった、ありがとう」
「だって私の方が鼻がきくもの♪ 旦那の休暇増やしてねぇ♪」
なんというか…ちょっと妬ましい気持ちを抱えたまま彼女に言われたポイントまで行くことにした。
…んで目的の場所に着いたんだが、なんだこの状況?
「大丈夫、何もしないから…だから早くおりてきてくれぇ…」
「ふん! いやだよっ! また同じこと聞いて私を誘惑してくるんでしょ!? 知ってるんだからっっ!!」
「…はぁ?」
木の上にいる声からして少女と、ワトソンというヒョロっこい男がその少女に懇願するように降りて来いという声。
…わからんっ!!
僕の溜息が聞こえたのか木の上に向かって叫んでいたワトソンがこっちに顔を向けると、生意気にも手招きしてきた。
状況が呑み込めていない僕は仕方なくワトソンのとこへ足を運べば…あぁ、なるほど。
木の上にいたのは確かに人に例えれば15〜16位の少女だ。
ただし、その両腕は翡翠色したドラゴンの羽根のように被膜が張ってあるものとなり、足や尻尾はドラゴンそのもの。
耳だってそうだ。
髪の毛はライトブラウンの肩口のショートカットという活発さがにじみ出るようなもので、瞳は
トパーズのような黄色。
ただ…幾分風格が丸いので人を見下すようなしゃべり方ではなく、ただ単に怯えて威嚇しているだけのよう。
…あれ? この娘の種族…どっかでみたような…
「隊長、この娘ワイバーンですよ」
「ぇ!? マジで!? ワイバーン!?」
「あ、わ、私のことか!? そ、そうだ! 確かに
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